放射能に関する正しい知識のパンフレットについて | 未来へ いわて

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「放射線被曝から子どもを守る会・いわて」のメンバーは、いわての子ども達を守るため活動しています。ひとりでも多く、同じ思いの方とつながりたいと願っています。

岩手県のHPに、「原発事故の影響に関する情報については、多様な媒体を通じて数多くの情報が飛び交っていることなどから、多くの県民の皆様が不安を感じている状況にあります。
 このため、県では、放射能についての正確な知識と情報を提供することを目的として、放射能の基礎知識や放射線被ばくと健康影響等に関するパンフレットを作成いたしました。」>>こちらよりDLできます。内容の確認までに。

とありましたので、不安な県民としては早速「正確な知識と情報」を得ようと思い、パンフレットをDLしてみたところますます不安を感じてしまいました。

まずは「多くの県民が不安を感じている状況」は県政にとって不都合であるのだろうかという事。(武田先生も、「岩手県の危険性を指摘するとあまりにもしつこく文句を言われるため、岩手県の危険性についてはしばらく記述を止めます」 とまで言っています。それほどまでして、岩手県の危険性の情報は潰して行きたいのでしょうか?)
その為にも不安を解消する必要がある事。
不安を解消するためのものなので、不安になるような事は一切書くべきではないという事。
これはそういう前提の基に作成されたパンフレットなのだろうという感想でした。

それならば第一にこれを「正しい知識のパンフレット」と自称してしまって良いものなのか疑問に感じてしまいます。
内容は明らかな間違いなどは当然ありません。
しかし、「間違いが無い=正しい」なのかどうかを考えると現状では過不足が無いものを「正しい知識」と言うべきだと思うのです。

原発由来の放射性物質が問題であるのに地球起源核種や医療行為の被曝を引き合いに出されて鵜呑みにできるはずがありません。
以前、岡山先生の講演会でも述べられた事 ですが、学習するという事は、まずは批判的に検討する事が必要であり、本当にそうか、と疑い、検証する事が真実を見極めるには重要になると思います。与えられた物を鵜呑みにし、重大な危険を見落としてしまっては本末転倒です。

私たちは、地域の皆さんに放射線被曝の危険性を知っていただきたく活動していますが、それよりも、安全だと訴えたい方々の方が懸命になって勉強会を開催したりパンフレットを発行したりしています。
そんなに必死になり守りたいものは「子どもの健康」でないとしたら何なのでしょうね。
子どもたちはどんな時も大人を信じています。

以下、パンフレット「放射線について 正しく理解するために」より抜粋。(※抜粋部分=赤字)

【放射線の防護】
「また、放射性物質は、自然界に永遠に残るものではなく、時間とともに少なくなります~
→原発事故由来の放射性物質は、事故で漏れはしたたけれどずっとそこに残るわけじゃないのでご安心下さい!という事でしょうか。
半 減期についても説明されていますが、半分になるのが30年なら全部なくなるのは60年!・・・というわけではなく完全になくなるまでには数百年かかるのだ そうです。私たちの孫の孫の・・・永遠ではないかもしれませんが気の遠くなる話ですね。少なくとも今の大人達が生きている間はずっと存在し続けます。プル トニウムに至っては半減期は2万4千年と言われています。
またセシウムは土壌粒子と結合しやすく長い間地表から流されない性質を持っています。そ ういう事からも除染は早急に行うべきでした。しかし、未だなされていないばかりか、高い数値が計測されても公表しない事もあるようです。それもこれも地域 住民を安心させたい一心、という事でしょうかね。


自然放射線による線量
「私たちは、普段から放射線を浴びています。たとえば、食物や大気には、普段から放射性物質(カリウム40やラドンなど)が含まれています。そのほかにも宇宙や大気から放射線を受けています。これらを”自然放射線”と呼びます。」

体内、食物中の放射性物質 
人 間はだれでも体内に数種類の放射性物質をもっていますが、代表的なものはカリウム40です。人体はほぼ一定割合(約0.2%)のカリウムを含んでいます が、大部分は放射線を出さないカリウムで、放射線を出すカリウム40はこのうち0.012%程度含まれます。このように食物摂取により体内に取り込まれた 放射性物質からの放射線の量は.1年間に約0.29ミリSv程度になっています。

→私たちはこれまでもずっと自然放射線を浴び続けて来たのですから全っ然大丈夫です!という内容。
セ シウム137は体内ではカリウムに似た挙動をするそうです。カリウム40は半減期12.7億年なので放射線は弱く1グラムあたり26万bq。対してセシウ ム137は3兆2000万bqと約115万倍も放射線が強い物質なのだそうです。これだけでも、地球起源の放射性物質と原発由来の放射性物質の害は同じで はない事が言えると思います。しかも例によってストロンチウムやプルトニウムには触れていません。
放射線の強さ=細胞を攻撃する強さという事ですが、その強さは放射性物質によりまちまちで、中でもα線を出す核種は恐ろしいと言われています。しかし現状ではヨウ素とセシウムしか検査されていない状況です。

日常生活と放射線 
例えば胃のエックス線検査を1回受けると0.6ミリSv、CTスキャンを1回受けると6.9ミリSv被曝することになります。また、東京からNYの航空機旅行では往復で0.2ミリSv被曝する事になります。」

→医療行為と原発事故での被曝は一緒に考えてしまって良いのでしょうか?味噌糞一緒とはこういうのを言うのではと思ってしまいます。X線が0.6ミリSvと聞いて、普段の空間線量と比較し、確かに「まだまだ行イケル!!」と一瞬思ってしまいそうです。
こちらも是非読んでみて下さい。ものすごく納得できます。「医療行為と放射線 違うものの比較(武田邦彦先生)」


【内部被ばく線量の評価】
500bq/kgのセシウム137が検出された飲食物1Kgを食べた場合、人体への影響は次のとおり計算されます。
500×1.3×10-5=0.0065mSv→胸のX線検診(直接撮影)の10分の1程度

→そしてまたまたX線との比較です。
このような計算式で表されても、大多数はよく意味が分からないのではないでしょうか。そして「よく分からないけど大丈夫って事らしい」と完結してしまうのではないでしょうか。
10 分の1程度なら食べられるのでしょうか?単純計算で10回食べたらX線1回分。ですが、そもそも体内に留まった場合はどうやって積算被曝量を計算するので しょう。むしろそちらの計算式の方が知りたいです。体内での半減期はどれくらいなのか、どのくらい食べればどのくらい排出されどのくらい残ってしまうの か。。。物事の一片だけ取り上げられても「じゃあ大丈夫だね!!」と安心は出来ませんし、逆に「まさか県ではそこまでしか考えていないの。。。?」と不安 が増してしまいます。
500Bq/kgの米を食べると年間にだいたい30000bqを食べることになるようです。当然これは米だけの被曝量で、飲料水や他の食べ物は含まれていません。
飲食以外にも、呼吸による内部被ばくもあります。その間当然、外部被ばくもを受け続けています。


【人工放射性物質】
※ヨウ素:経口摂取されたヨウ素は消化管から吸収され、血中をとおり30%は甲状腺に蓄積し後は排泄されます。
※セシウム:体内に残存する際、特定の臓器に蓄積する性質(親和性)はありません。

放射線と健康影響 
【被ばく線量とがんの増加率】
原爆被害者の調査ではおよそ100ミリSv以上の線量では、線量とともにがん死亡が増加することが確認されていますが、およそ100ミリシーベルトまでの線量では放射線によりがん死亡が増える事を示す明確な証拠はありません。

→100ミリSv以下でがんにならないと示す明確な証拠がないのが不安な理由なのです。
事故から半年以上が経過し未だ収束の目処もたっておらず、科学や医学が初めて直面する事態に陥っています。確認されている事例だけを元に考えるのは危険すぎるのではないでしょうか。
そして例によってヨウ素とセシウムだけです。特にプルトニウム等α線を出す核種は検出が非常に難しいそうなのですが、どのような特性を持つかぐらいは書いてくれてもいいのではと思います。
先日福島第一原発から245km離れた横浜でストロンチウムが検出されたという情報がありました。
ストロンチウムはカルシウムと化学的な性質が似ていて骨に蓄積されます。ストロンチウム90が半減するのに要する期間は29年です。体内に侵入すると長期間に渡ってβ線を放出し続け、骨のガンや白血病の原因となります。
セ シウムは体内に入ると血液の流れに乗って腸や肝臓にベータ線とガンマ線を放射し、カリウムと置き換わって筋肉に蓄積したのち、腎臓を経て体外に排出されま す。セシウム137は、体内に取り込まれてから体外に排出されるまでの100日から200日にわたってベータ線とガンマ線を放射し体内被曝の原因となるた め、危険性が指摘されています。

そして低線量被曝による健康被害がやはり心配です。以下のリンクも是非読んでみていただきたいと思います。
チェルノブイリへのかけはし「低線量被ばく」
粘膜及び性器、排尿器官のトラブル
鼻血問題

チェルノブイリ20年の真実 事故による放射線影響
- 日本原子力学会
 【PDF】


そして最後にQ&Aが掲載されています。

Q 日常生活でどんなことに注意すればいいですか?
A 本県では、被曝の防止が必要な状況ではありませんが、気になるようであれば、次の項目を実施いただくことで、より安心いただけます。
①外出時は通常の服装で問題ないが、気になるようであれば、マスクをする
②屋外での活動後には、手や顔を荒い、うがいをする。
③土や砂を口に入れないように注意する。
④土や砂が口に入った場合には、よくうがいをする。
⑤帰宅時の靴の泥を出来るだけ落とす。

①~⑤までの対策は適切ですが、前半部はどういう事なのでしょう。
防止が必要でないならなぜ県内では除染作業が行なわれ、食品からは暫定基準値以上のセシウムが検出され、雑草堆肥や焼却灰から基準値以上のセシウムが検出され、子どもの尿からセシウムが検出されているのでしょう。
「被曝の防止が必要な状況ではありません」何度読んでも理解に苦しむのは私だけかと思ったら、やはり他にもいるようです。そりゃあそうです。twitterでも「何コレ!?」という反応が多く、このパンフレットの内容である意味一番話題をさらった一文です。

こちら のブログ記事も読んでみて下さい。

Q 市場に流通している食品は安全ですか?
A 市場で販売されている食品は、それぞれの特質もふまえながら個別に検査が行なわれています。食品衛生法に基づく暫定規制値を超える食品は出荷制限などにより流通させないことになっています。

→食品衛生法そのものには放射能についての記述は一切なく、現在の暫定基準値は食品をできるだけ流通させるために事故直後に大急ぎで設定したものであり、健康を害する恐れがないように設定したものではないため、安心はできないのではないでしょうか。
食品中の放射性物質に関する当面の所見  (PDF)23.4.4  薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会(厚生労働省)によると
「なお、食品安全委員会は、今回の検討について、「緊急的なとりまとめを行ったものであり、今後、諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評価を行う必要があること」、「発がん性のリスクについての詳細な検討は行えていない等、さまざまな検討課題が残っていること、特にウラン並びにプルトニウムなどについては、曝露状況等も把握した上での評価、遺伝毒性発がん物質としての詳細な評価、あるいは各核種の体内動態等に関する検討も必要である。」などを指摘している。」
とあり、この暫定基準値に関してはきちんと健康影響評価が行われていないという事です。つまり、安全と言い切れる数値ではないという事になります。

そしてすべての食品を検査してから出荷している訳ではないため、流通している食品は安全であるとは言い切れません。実際に、岩手県を出てからの検査で放射性物質が検出された例が多々あります。
ここでは、「流通している食品は安全か」という問に対しあくまでも「基準値越えは流通させない事になっている」という事実のみを答え、「安全です」と言い切っていないところからも分かります。
不安になる事は書かないのが原則とはいえ事実以外を書く訳にもいかずにこういう記述になったのでしょうか。

※食品の検査や基準値については以前にもこのブログで詳しく触れていますので、>>こちら も是非お読み下さい。

津波被害からの沿岸の復興、放射能汚染、この緊急事態に、県が無駄な事に税金を使うなど有り得ませんからこのパンフレット発行にあたっても何か大人の事情が あるのでしょうか。いずれ批判ばかりしても始まりませんので、今度は本当におすすめのパンフレットを紹介したいと思います
第一弾に続いてこちらもとても参考になります。

被ばく予防リーフレット第二弾『低線量内部被ばくから子どもを守るために』完成のお知らせ

getterrovo

チェルノブイリハート、北上上映会 のお知らせ
真実から目をそらさないで。チェルノブイリの子どもたちがどうなったのか、今の日本の大人たちが観るべき映画です。
「穴の開いた心臓。生まれつき重度の疾患を持って生まれる子ども。ベラルーシでは現在も、新生児の85%が何らかの障害を持っている」


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