ウシくんへ
7月4日。毎朝、「おはようございます」って挨拶してやってくる君の声が聞こえない。
そっか、虹の橋を渡ったんだね。そっちはどうですか?
君が南風荘にやってくるようになったのは5年前だったかな?
君はオカマさんだったから、ちゃんとしたお家の子だったんだよね。
ノッソリとしてるからウシくんって名付けたけど、とにかくしつこかったね。
メグさまに追い払われても毎日やってきて、そのうちメグさまが根負けしちゃったものね。
それに、とにかく君は人間が大好き。
暑い夏の日もピッタリと私のそばにくっついてジッと私の顔を見つめていたね。
お客様が来たときも必ずそばにいて会話の中に入ってたね。
「接待部長だね」って私の従姉が笑ってた。
でも、君もいいトシになっていたんだ。
歯が1本2本と抜けていって、今年の春頃から急に痩せてきちゃった。
そして
7月1日
私の晩御飯のおかず、サバの塩焼きをおねだりする君。
「こんな塩辛いのはネコは食べちゃダメ」って言ってもしつこくおねだり。
「じゃ、少しだけだよ」って一口だけ。その一口を食べたら満足したようにお外に夕涼みへ。
7月2日
前日まで食べていた大好きな猫缶も食べず、お水も飲まない。
洗濯機の上で眠っている君。
7月3日
車庫のコンクリの上で眠っている君。ここは風の通り道。夏の間の君のお気に入りの場所。
風に包まれて眠っている君の頭を撫でたら「もうお別れなんだ」と涙が溢れてきた。
そしたら君は目を開けて私の顔をジッと見つめて立ち上がり、床下に入っていった。
生きている君の姿を見たのはこれが最後。
7月4日
「おはようございます」って挨拶する君の声が今朝は聞こえない。
お隣さんが仕事に出かけるために車を出す。
車が停まっていた場所に横たわっている君を見つける。もう冷たくなっている。
そう、ここで最後の時を迎えたの。
亡骸を抱き上げる。車に轢かれなくてよかった。
今まで南風荘は君の別宅の一つなんだろうと思っていた。でも違ったんだね。
ここは君のお家だったんだね。
ネコは家族に亡骸を見せないっていうものね。
私たちに死顔を見せたくなくて、お隣で最後の時を迎えたんだね。
私たちを家族と思ってくれていたんだね。ありがとう。
ウシくん、今度こっちに産まれてきたら、また南風荘にいらっしゃい。
君が大好きだったカツオの猫缶とフカフカのお布団、そして君のお部屋を用意して待ってます。
2007年10月18日撮影