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体脂肪率4.4%の公認会計士 國村 年のブログ

香川県高松市で会計事務所(税理士・会計士)をやっている公認会計士・税理士です。●棚卸●事業承継●M&A・組織再編●贈与・相続のコンサルティングをしています。会計・税務に関することなら、お気軽にお問い合わせください。

TBSは、先日のnews23で、後継者不足に悩む納豆会社にM&Aを仕掛け、資金を吸い取る、悪質な買い手企業の実態を伝えました。

神戸国際大の中村智彦教授(中小企業経営論)は、その手口を「吸血型M&A」だと批判しました。

その背景には日本の経済構造の大きな転換がありました。

 

中村教授に話を聞いています。
―現在、中小企業のM&Aはバブルともいえる状況にある。M&A助言会社のレコフによると、2022年の企業M&Aは過去最多の4,304件、事業承継型のM&Aは2023年に過去最大の約1兆8,400億円(買収金額等)を記録した。この背景には何があるのか。

「要因は2つある。1つは、2020年に菅政権が『日本の経済成長の阻害要因は、中小企業の生産性の低さだ』として、M&Aを積極的に支援する『国策』を次々に打ち出したこと。もう1つは、コロナ禍が沈静化した後、補助金が打ち切られ、資金繰りに苦しむ企業が続出したことだ」

―中小企業の生産性の低さとは。

「歴史は戦前に遡る。政府は中小企業を『社会的弱者』とみなした一方、『過小過多(規模が小さく、数が多すぎる)』であることを問題視していた。国家総動員体制下では、様々な業種の企業が合併を強いられた。1963年の中小企業基本法には、『中小企業は救済すべきもの』という問題意識が反映された。1999年には自助努力を支援する方向に改正されたが、生産性の向上は進まなかった」

―中小企業庁によると企業全体に占める中小企業の割合は99.7%(約337万社 2021年)。東京商工リサーチによると2023年に廃業などに踏み切った企業は約5万件で、代表者の平均年齢は72歳。中小企業庁によると、廃業の理由として28.4%が後継者不在を挙げている。

「後継者問題を抱えている経営者は、高度経済成長期の1970年代に、地方から東京や大阪など大都市に出てきた後に独立・創業して、苦労してきた人たちだ。彼らが60代や70代になった時に『さあどうしようか、後継者がいない』と悩んでいる」

 

―後継者がいない理由は。

 

 「一般的に、苦労してきた親の事業を継ぎたくない、という心理がある。私が見聞きしたケースだと、代替わりを迎えた創業者の子供達は、就職氷河期を経験してやむを得ず家業に入らざるを得なかった世代が多くを占める。二代目、三代目が『後を継ぐか?』と聞かれた時に、『自分はこれがやりたかったんだろうか』と悩んで、事業承継を断る」

 

 ―創業者の心理は。 

 

「『それでも従業員の生活を守らないといけない。事業を存続させたい』という気持ちがある。黒字であればなおさらだ。そのタイミングで、M&A仲介会社から積極的な営業をかけられたり、ダイレクトメールが来たりする。そうすると、『渡りに船だ』とばかりにM&Aに踏み切ることになる」

 

 ■「吸血型M&A」…「ルシアン問題」が浮かび上がらせたもの

 

 ―ルシアン社の手口は。 

 

「ルシアン社の場合は、仲介会社を通じて中小企業を買収し、まともに経営に取り組むどころか、契約を守らずに、株式の譲渡金を払わなかったり、負債を創業者に押しつけたり、あげくの果てに倒産に至ったケースもある。吸い取ったカネで、他の企業を買収し、更に巨額のカネを吸い取ろうとする。昆虫の「タガメ」が、活きのいい魚から血や栄養を吸い取る。標的がボロボロになったら次の魚を狙う。そんな比喩が一番当てはまる。まさに吸血型M&Aだ」

 

 ―吸血型ですね。関係者によると、ルシアン社が買収した企業は37社にのぼる。 

 

「芝居のようなやり口だ。台本を書いて、それぞれが役者として振る舞う。素人の手口とは思えない。関係者から、ルシアン社以外の企業も問題を起こしているケースをいくつも聞いている。ルシアン問題は氷山の一角に過ぎない。私の肌感覚では1割から2割のM&Aはまともに行われていないと思う」

 

 ―M&A仲介会社はルシアン社の問題を把握していたのか。 

 

「個別のケースは分からない。しかし、把握しているのであれば当然伝えるのが誠実なビジネスのやり方だろう。仮に知らなかった場合でも、『知りませんでした』『免責条項があるから責任は負いません』では済まされない。買収された企業には従業員の生活、地域での歴史、積み上げてきた信頼がある。健全な中小企業を詐欺的な行為で失うことは地域の経済の衰退を加速させる危険性を孕んでいる」

 

―中小企業の経営者は適切な判断ができるのか。

「いかにも優秀そうな、仲介会社のコンサルタントが東京から地方に乗り込んでくる。M&Aを経験したことのない経営者の前で、立て板に水のプレゼンをする。そこで紹介された会社に、よもや騙されるとは思わない。経営者には、『早く売却したい』という切羽詰まった事情がある。それが被害の拡大に拍車をかける」

―仲介業者への規制はないのか。

「不動産や金融には、それぞれの業界を規制する『業法』がある。しかし、M&A仲介業にはそれがない。専門的な資格制度もないので、誰でも『コンサルタント』を名乗ることができる。法規制の議論をすることが時期尚早だとは思わない。業界団体や第三者機関が仲介会社の格付けをすることも効果的だ」

―中小企業と長年取引をしている銀行の役割は。

「M&Aによる業績改善を見込んで融資を行う。買収側はその貸付金までも吸い取る。結果として、銀行は貸し倒れの被害に遭うが、あまり知られたくないので、実は明るみに出ていないトラブルが多数あるとみている。一方で、地方の金融機関は、地域の実情を知悉している。既に買い手企業に関する信用情報を掴んでいることもある。経営者は仲介会社の情報だけではなく、彼らに積極的に相談し、頼るべきだ」

 

吸血型M&Aって、スゴく表現がうまいなぁと思いました。

僕自身は15年以上前からM&A関連業務に関わっていますが、最近、増加しているM&A儲かるということで金融機関をはじめ、様々なところがM&A関連業務に参入し、また、マッチングサイトに登録している専門家でもM&Aをやったことがないのではないかと思われる専門家が結構多いのと、経済産業省に登録しているところでもM&Aをやったことがないのではないかと思われる登録機関が結構多い(そもそも税理士法人では法律上できないのではないかと思っていますが。)ことから、遅かれ早かれこのようなことは起こるのではないかと思っていましたが、やはり出てきましたね。

こういう事件をきっかけにでも、規制などをしていかないと、せっかくM&Aというものが世の中に認知されはじめた(毛嫌いされなくなった。)のに、後戻りしてしまうのではないかと危惧しています。

 

まさに吸血型M&Aについて、あなたはどう思われましたか?