ヨニが言うあの人が
チャンミンを指している事は
聞かなくてもわかってる

きっと、テミンがいるから
言葉を濁しているのだろう

「とにかく、その話は
テミンが寝てから
2人だけでしよう

もう直ぐ、チャンミンも帰ってくる…」

そう、言いかけた時
ヨニが

「チャンミンさんなら
さっきから
貴方の後ろにいるわ…」

そう言って視線を
俺の後ろに向けた

振り返ると
玄関先に
真っ青な顔色をした
チャンミンが呆然と立っていた

「今の話を聞いていたのか?」

チャンミンは
俺の問いかけには答えず
少しづつ後ずさって
そのまま、外に向かって駆け出した

慌てて、後を追おうとすると
ヨニに腕を掴まれた

「待って!貴方はわかってるの?
あの人は男の人なのよ⁉︎」

「そんな事、言われなくても
わかってる!

ヨニ!わざとだよな」

「えっ?」

「今の話…わざと聞かせただろう?」

俺はそう叫ぶと
ヨニの腕を振り払った


息を切らしながら
チャンミンの後を追った

すでに家の周りには
その姿がない

チャンミンが向かう場所は
あそこしかないと思い
自宅へと向かった

本当は、そこを解約して
一緒に住もうと思っていたのに

こんな事になるとは
思ってもみなかった

ヨニが…俺と…?

テミンの事を考えて
一時は考えた事もあったけど
チャンミンと出会った今は
そんな思いは微塵もない

だけど…
チャンミンは
どんな気持ちで
ヨニの話を聞いていたのか

俺は不安で
胸がいっぱいになりながら
タクシーを拾い
チャンミンのマンションへと急いだ

車を降りて
チャンミンの部屋の窓を仰ぎ見たが
灯りはついていなかった

預かっていた合鍵で
マンションの中に入った

暗闇の中
月灯りで照らされて
ぼんやりと
ソファに座っているチャンミンが
頭を抱えている姿が見えた

「チャンミン…」

俺は、声をかけたが
チャンミンは、身動き1つしない

じっと
同じ姿勢のまま
俯向くチャンミン

俺は…
どんな風に言えばいいのか
しばらくの間迷っていた

「ヨニの話は…気にするな」

そんな言葉しか思い浮かばない…

チャンミンは肩をピクリと
動かしたけど
そのまま顔を上げようとしない

俺はじっとしていられずに
そばに近づいて
その姿勢のままの
チャンミンの背中を
そっと抱きしめた