志村けん一座旗揚げ公演「志村魂」 | こだわりの館blog版

志村けん一座旗揚げ公演「志村魂」

志村魂

4/9 東京芸術劇場中劇場 にて


絶品!志村けんの「一姫二太郎三かぼちゃ」


作・演出:ラサール石井
脚本:朝長浩之、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、妹尾匡夫
出演:志村けん、ダチョウ倶楽部、池田成志、山口もえ、多岐川裕美、地井武男、他


私が大学生の頃だったから、もう十ウン年前でしょうか、
フジテレビで「志村けんのだいじょうぶだぁ」がまだ放送されてまして
その舞台版が吉祥寺の前進座劇場で約1ヶ月間公演されたんですね。
当時、志村けんのコントの大ファンだった私は「見たい!」と即時に思ったのですが、
なんか子供が多そうだなという予感もあって
行きたかったのですが、結局は行きませんでした。
「まあ成功すれば来年もやるだろう」という呑気な予測もあって行かなかったのですが、
結果、この舞台版「だいじょうぶだぁ~」の公演はこれ1回限り
幻の公演となってしまっておりました。


そうするうちに時は経って、
もうこの舞台版「だいじょうぶだぁ~」も忘れ気味になっている頃
この「志村けん一座旗揚げ」の吉報を聞き、
十ウン年ぶりに幻の公演を思い出したわけです。
今回の公演…もう即時にチケット買いましたね。
何せ十ウン年ぶりに想いが叶ったのですから!


公演は途中、志村けんのかくし芸的な【津軽三味線】をはさんでの3部構成。
第1部はご存知「志村けんのバカ殿」
第2部が「ショートコントライブ」という
志村けんの十八番演目が続きます。
まぁ観客も(子供連れが結構多かったです。この公演も!)
オープニングのダチョウ倶楽部の“つかみ”から
もうノリにノッてまして、もぅコンサートライブのノリ。
広い東京芸術劇場中劇場内がワーワー、キャーキャー。
今でも衰えない志村けんのカリスマ性が充分発揮された2本でありました。


しかしその大盛り上がりの会場が静まりかえって、しかもしんみりしたのが、
第3部の「一姫二太郎三かぼちゃ」でありました。
これが本当に素晴らしく面白かった。
志村けんの新境地ともいえる舞台でありましたし、
志村けんが立派な【喜劇役者】であることをも証明した1幕でもあります。

「一姫二太郎三かぼちゃ」はご存知、故藤山寛美の松竹新喜劇での代表作。
藤山寛美を知らない人世代が増えつつある今日、これは相当昔の作品であります。
それを今日舞台にかけるなんて随分時代遅れのことするなと見る前は思いましたけど
これが実に志村けんというキャラクターにピタリと当てはまっているんですね。


考えてみますに志村けんのコント自体、
お世辞にも今の時流にあっている雰囲気ってないんですよね。
この志村けんのコントの持つ【レトロさ】と藤山寛美の松竹新喜劇が、
一見“水と油”と思わせながら、実は根っこのところでは同じだったといったところでしょうか。
とは言ってもこの幕での志村けん、
決して藤山寛美のコピーを演じようとは毛頭にも思ってないようです。
志村けんは本当に途中まではいつもの“志村けん”のまんま
そのままメイクすれば立派な“バカ殿”になれるくらいのちょっと頭の弱いキャラクターを、
これでもかと仕草をデフォルメして観客を笑わせます。


そして注目はラスト近く。
いつものコントだったらこのままドタバタで笑わして終わりというところで、
志村けんのキャラクターは一気に【突きぬけ】ます
しかもシリアスな演技で「観客を泣かそう」などという“力み”など微塵もなく
あくまでもいつもの【志村けん】のまま。
彼はそのままのキャラクターで、観客をしんみりさせてホロリとさせるのです。
「“バカ殿”が観客を泣かせられるのか」という、
今までは不可能だと思っていた事を、何の“力み”もなく飄々とこなしてしまう…
この力量は本当に素晴らしいと思いましたね。


志村けんは、今更ですが頭の良い人だと思います。
「一姫二太郎三かぼちゃ」でも飄々と観客をホロリとさせてますけど
実際のところは、観客の呼吸や雰囲気を志村けんが充分に読み取って
笑わせて、そしてホロリとさせているのであります。
つまりは全て志村けんの計算ずく、自由に観客を操っている証拠でありましょう。
もうここまでくると立派な藤山寛美ばりの【喜劇役者】の誕生であります。


人気者の志村けんでありますから、長期間拘束される舞台公演は
そう頻繁には行えないことでしょう。
しかし今回の公演を見て志村けんの【喜劇役者】ぶりをみると
本当にテレビだけのフィールドで志村けんを収めるのは
本当にもったいないと思いましたね。
どうか、志村けん様。
「森繁になれ」とは言いませんから、今後も【喜劇役者】ぶりを拝見できるよう
たまには舞台に立ち続けていただけないものでしょうか…ねぇ。


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