「拝啓天皇陛下様」 | こだわりの館blog版

「拝啓天皇陛下様」

松竹
渥美清 DVD-BOX

特集【日本映画を語ろう!】

【スターで魅せる映画たち】。
大映作品の次は松竹へ移りましょう。
松竹といえば、やっぱり「男はつらいよ」。
「男はつらいよ」と言えば、言わずと知れた“寅さん”こと渥美清
演じた役も、そして実生活での生き様までも、まさにスターの輝きを持つ渥美清の、
本日は1963年作品、まだ“寅さん”誕生前の渥美清の代表作「拝啓天皇陛下様」であります。

1963年劇場公開作品
監督:野村芳太郎
出演:渥美清、長門裕之、左幸子、中村メイ子、高千穂ひづる、他

  山田正助(渥美清)は、もの心もつかぬうち親に死別し、
  世の冷たい風に晒されながら田舎から出てきたフーテンもの。
  彼が巡り巡って、三度三度のオマンマにありつけ、
  何がしかの俸給までもらえると入ったのが【軍隊】。
  二年兵たちのきついイジメに会おうとも、
  厳しい世の中を純真無垢に渡り歩いてきた彼には、全く天国に思えた。
  やがて太平洋戦争が始まり、彼は度々勇躍して戦地にむかう。
  そして終戦。
  まわりは平和が戻ったと大喜びだが、
  山正にはただ住みにくい娑婆が待っているだけだった…。

「拝啓天皇陛下様」は、渥美清が「男はつらいよ」の“寅さん”で、
そのイメージを決定的にする前の彼の代表作と言われている作品。
確かに、“寅さん”の強烈なイメージが出来る前の、純真極まる“山田正助”役
彼の役者としてのキャラクターにピタリとはまって、まさにハマリ役。
純真無垢で、そこはかとなくユーモアが漂うその役は、辛辣なストーリーながらも、
この作品を一服のファンタジーにまで昇華させていたのではないでしょうか。
この作品の後に、決定的な当たり役である“寅さん”こと車寅次郎役がオファーされたのも
なんとなくわかります。
ですからこの作品は、本来なら渥美清の役者としてのイメージの原点なのかもしれません。

しかし、私のような渥美清といえば「男はつらいよ」という世代にとっては、
「男はつらいよ」の始まる前の渥美清を今日見ても、
どうしてもこの作品の渥美清は“寅さん”のイメージから抜けきらないんですね。
“山田正助”が戦地に赴き、そして戦後をしたたかに生き抜いても
「そのうちテキヤ稼業につくんじゃないか」と思ったり
劇中で“山田正助”が未亡人に淡い恋心を抱いても
「そのうち失恋するんだろうな」と思ったり(案の定見事にフラれます)
ですからこの作品を渥美清の【単独の1作品】とは結局見ることは出来ませんでした。
作品と私の間に「男はつらいよ」のフィルターがかかっているかのようで…。

渥美清は、実生活では、“寅さん”で決定的についてしまったイメージを極端に嫌い、
“寅さん”とは180度違う生き方をしたのは有名な話。
無愛想に人と接するのを極端にさけた私生活。
その自らの“死”すらも公表しなかった徹底的な世捨て人的な生き方は、
噂では聞いていたものの、やっぱり訃報とともに明るみに出たニュースの数々には、
当時衝撃を受けました。
スターという【名声】をつかんだために起こった悲劇なのか、
はたまた、あれよあれよという間に【スター】になってしまった人間が
とらざるを得なかった手段なのか、
もう本人は雲の上の方なので知る由もありませんが、
没後10年近く経ち、未だに旧作を見ても渥美清イコール“寅さん”のイメージは
まだまだ抜け切れません。
今後も、いや永久に、このイメージは続いていくのでしょうね。

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