「ゾンビ」
- ハピネット・ピクチャーズ
- ドーン・オブ・ザ・デッド~ゾンビ:ディレクターズ・カット・エディション~
【真夏の夜のホラー特集】「ホラーといえばこの監督」。
本日はやはりこの特集で何度も名前があがってますから、
この人、この作品を取上げておかないといけないでしょう。
と、いう訳でジョージ・A・ロメロ「ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)」。
真夏の夜のホラー特集・第14弾
1979年劇場公開作品
監督:ジョージ・A・ロメロ
出演:デヴィッド・エムゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス、トム・サヴィーニ、他
20世紀末、アメリカ。
大爆発を起こした惑星から発せられた特殊な光線により、
死者が甦り、生者に襲いかかり、大パニック状態が起きていた。
パニック収拾にあたっていたSWAT部隊のロジャー(スコット・H・ラインガー)と
ピーター(ケン・フォーレ)は遂に事態が収拾しきれなくなり、
テレビ局で働いている友人ステファン(デイヴィッド・エンゲ)と
その恋人フラン(ゲイレン・ロス)と共にヘリコプターで、その町から逃れる。
日々増殖していくゾンビたち。
彼らはひとまず、巨大なショッピングセンターの最上階の小部屋に陣取り、
武器と食料を確保したのだが…。
私はこの「ゾンビ」、1979年の公開当時劇場で見ました。
日比谷の今はシャンテになってしまったところに
昔は「有楽座」という大きな映画館がありまして、そこで見たのです。
「有楽座」はつい最近「ニュー東宝シネマ」が改装を機に「有楽座」に変わりましたが、
当時の「有楽座」は東宝洋画系劇場のまさにメイン館。
席数も軽く1,000以上はありましたし、今で言うならマリオンの「日劇」みたいなもんです。
そのメイン館で「ゾンビ」をロードショーしてたのです!
空いてましたけどね…。
当時、私もまだ子供だったものですから勿論一人では行けません。
親に「見に行きたい!」と強く希望を出しました。
親(父でしたが)も子供が見に行きたいのが「ゾンビ」とはさぞかし困った事と思います。
それでも私は相当強く「見に行きたい!」を主張したのでしょう。
遂に親も根負け、有楽座まで見に行った訳です。
今回10年ぶりぐらいにこの作品を見て、
今公開していたら【R-15】指定ぐらいつきそうなドギツイ映画「ゾンビ」を公開当時、
よく親が子供に見せることをOKしたなと思いますし、
親自身もよく同行して見に行ったものだと改めて思い、心底親に同情してしまいました。
…当時の親の年齢に近くなってきている身の上としましては!
でも、子供の目から見ても「ゾンビ」は面白かったです。
気持ち悪いシーンは多々ありましたが、もともとホラー映画好きな子供でしたし、
なんかゾロゾロ歩いている【ゾンビ】を遊園地のアトラクションのように見ていたのでしょう。
しかもラストではステファンに降りかかる不幸に対しても悲しい気持ちになった事を覚えています。
きっとこの頃から芸術の分かる子供だったのでしょう(ウソ!)。
その後「ゾンビ」はTV放映で2度ほど、ビデオが発売されたときに1度見ています。
そして今回約10年ぶりくらいに4度目の鑑賞となったのですが、
この「ゾンビ」、見れば見るほど面白くなってくる不思議な作品であります。
ホラー映画の中では上映時間も長く2時間弱あります。
普通の映画でも2時間ちかくなると長く感じるのに、
ましてやホラー映画で2時間近くなんてどう考えても間延びしそうな印象を受けるのですが
「ゾンビ」の場合は長さを全く感じません。
何故なんでしょう?
私が考えますにこの「ゾンビ」はジョージ・A・ロメロが【ゾンビ】というキーワードを使って
【人間が持つ欲】を表現していると思うのですね。
例えばショッピングセンターに入った4人はゾンビを締め出し、
誰もいないショッピングセンターで好き勝手な生活を送り始めます。
もう生存者も少なく切羽詰った状況であるにもかかわらず彼らははしゃぎまくります。
欲しかった電化製品を奪い部屋に持ち込み、食料庫からは好きな食品を好きなだけ奪ってこられる。
このシーンに人間の持つ【食欲】と【物欲】を見る者は満たしているのではないでしょうか。
だから切羽詰った状況であるにもかかわらず、
見る者はこのシーンを「うらやましいな」と思いながら見るんですね。
またショッピングセンターに立てこもる4人に対し、暴走族が殴りこみに来ます。
彼らはそこでゾンビたちに対し、殺戮の限りを尽くします。
残酷な描写の連続ではありますが、どこかで「もっとやれ!」的な気持ちにもなるのは、
これらのシーンが人間が潜在的に持つ【暴力的な欲】を描いているからではないでしょうか。
人間が潜在的に持つあらゆる【欲】を、
ジョージ・A・ロメロは「ゾンビ」で2時間たっぷりに徹底的に映像化しています。
リメイクの「ドーン・オブ・ザ・デッド」
はここの描き方が中途半端なため
作品全体が消化不良を起こしてしまっているのです。
しかもジョージ・A・ロメロ自身もこの作品以降、
相変わらず【ゾンビ】をキーワードにした作品を撮りつつも、
展開されるのは文明批判であったりして、かなり固いキーワードを持ち込んだため失敗しています。
「ゾンビ」が製作されてからもう30年近く、この作品が不思議な輝きを持っているポイントは
人間が自然と持つ【欲】を描いている、まさにここにあるのではないでしょうか。
■「ゾンビ」は現在2バージョンがあります。
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- ハピネット・ピクチャーズ
- ゾンビ ― ドーン・オブ・ザ・デッド
こちらはダリオ・アルジェント監修版。
これを私は有楽座で見たんですね。
■過去の【真夏の夜のホラー特集】記事はこちら
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