「セルラー」
3/5 シネプレックス新座にてこれはおもしろい!
2週間限定公開なんてもったいない公開をするよなぁ、ヘラルド映画さん!
監督:デヴィッド・R・エリス
原案:ラリー・コーエン
出演:キム・ベイシンガー、クリス・エヴァンス、ウィリアム・H・メイシー、ジェイソン・ステイサム、ノア・エメリッヒ、他
展開がシンプルで無駄がありません。
記憶を元に、ちょっとシナリオ採録してみると
まずはオープニング。
(母ジェシカ・マーティンが息子リッキーをスクールバスに乗せる
ため送り出している)
リッキー「お母さん。僕が高校生になっても先生やってるの?」
ジェシカ「どうして?」
リッキー「だって高校行ってもお母さんと顔を合わせるなんて」
ジェシカ「リッキーといつでもハグできるからいいじゃない」
(リッキー、バスに乗る。ジェシカ自宅に戻る。
家では家政婦がちょうど出勤した様子)
ジェシカ「(家政婦に)おはよう」
家政婦「おはようございます。留守電が1件入ってるようですよ」
ジェシカ「そう」
(と、突然裏口のドアのガラスが激しく壊れ男たちが3人入ってくる…)
導入部はたったこれだけである。時間にして数分だろうか。
裏口のドアのガラスが激しく割れたのをきっかけに一気に本題である。
ジェシカは男たちに強引に連れ去られ、人里はなれた民家の屋根裏に閉じ込められる。
そこへ先ほどの男が屋根裏へハンマーを持って乱入。ジェシカ、もう殺されるのかと思いきや、男が襲ったのは屋根裏にあった固定電話。
電話はバラバラに壊される。
どうも男たちの目当てはジェシカではないらしい。
いったい何故。彼らの目的は?
緊迫した場面から一転して舞台は若者でごった返すサンタモニカ。
軽薄なナンパ男ライアンが連れと今日もナンパの真っ最中。
一度ふられた女の子をみつけ再度猛アタック。なんとか関係を繋ぎとめ、ちょっと車に忘れ物を取りに行った時、携帯電話が鳴る。
何気なく電話に出るライアン。
電話口からは、どことなく色っぽい女の声。
その声にライアンのナンパ心が再び動くが、
予想に反しその後の女の口からは助けを乞う切迫した訴え。
なんと電話口の声はジェシカ。
ジェシカは壊された電話の配線を再度組みたてて何とか復旧させ、無作為に電話をかけ、助けを求めたのだ…
おっと!
もうこれ以上書くと大きなお世話になりますから触れませんが、
ここでお膳立ては全て終了。
物語はノンストップで【助けを乞う女】と【巻き込まれた軽薄な男】の2人の電話でのやりとりのみで進行して行きます。
この作品が素晴らしいのは、
お膳立てに無駄がないのはもちろんですが、
台詞のひとつひとつにしっかりとキーワードを持たせているところ。
ちょっと触れたここまでのシーンだけでも
【ジェシカが高校教師】【留守電】【ナンパ師】
【ライアン振られた子に猛アタック】【携帯電話】と
これらの要素が、全て後々のメインストーリーとなり複線となり、次々とストーリーにからんでくるのです。
目も耳も一気に作品に集中させられる、この展開のうまさ!
その後も2人の電話でのやり取りが展開する内に
ウィアム・H・メイシー扮する定年間近の巡査部長やら
事件のカギを握るジェシカの夫やら
マザコンの弁護士やら、が次々と【事件に巻き込まれて】いくのですが
これらの登場人物ひとりひとりも
全て劇の重要人物になっているのですから
無駄のない演出も見事ですが、脚本が良く練られてるなァと思います。
脚本はクリス・モーガンなる人物ですが、
原案が傑作「フォーン・ブース」の脚本家ラリー・コーエン。
このラリー・コーエンの力が本作では大でしょう。
「フォーン・ブース」での“電話BOX”という【動きがとれない世界】から
一転して“携帯電話”という【動き回れる世界】へ。
それぞれの世界を上手く取り入れたそのアイデアは
ストーリーテリングの面目躍如。
「フォーン・ブース」も本作「セルラー」も見事なもんです。
きっと「フォーン・ブース」終了後の雑談から仲間うちでワイワイ言いながら「セルラー」の案を作っていったのでしょう。
このおもしろさで上映時間1時間35分、この短さ。。
「アレキサンダー」3時間。「オペラ座の怪人」2時間半。
「オーシャンズ12」2時間。
長時間で大作さをアピールするのが当たり前の昨今。
ちょっと見て楽しむには盛って来い、後腐れのない小品。
本当好きですよ、この作品。
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タイトル: フォーン・ブース