「ジョゼと虎と魚たち」 | こだわりの館blog版

「ジョゼと虎と魚たち」

祝!TV初放送(2/19WOWOWにて)
2003年私の邦画ベスト1
DVD録画チェックでちょっと見るはずが、
結局放送分を最後まで見てしまいました。
傑作が放つオーラには勝てません。
どれぐらいの人が当日この作品を見てくれたのであろう…

2003年劇場公開作品
監督:犬童一心 原作:田辺聖子
出演:妻夫木聡、池脇千鶴、新井浩文、上野樹里、江口徳子、他

登場人物たちの本当に純真な恋心が、ファンタジーとして見事にスクリーンに光り輝いている傑作であります。
その光は時が経っても力を失わず、今回久々に見ても初見と同じくらいの感動をこの作品は与えてくれました。
オープニングの恒夫(妻夫木聡)のジョゼとのポートレイトによる回想からスーッとタイトルへ移り、くるりの優しい音楽に包まれて始まるオープニングからして出色であります。
その後も普通の大学生恒夫と世間と隔絶されてきた変わった子ジョゼとの偶然の出会いから小さな恋のはじまり、そしてあっけない終焉が
一つ一つのシーンが嫌味がなく展開され、登場人物たちの気持ちが手に取るように見る者に伝わってきます。

どうしてこれほど見る者を引き付けるのか。
それは演出とキャストの勝利なのではないでしょうか。

監督の犬童一心は同じ関西の田辺聖子の原作という絶好の素材をえて
その原作のテイストをうまく活かして
関西弁のやわらかな台詞回しを多用することで
東京が舞台ではちょっとエゲつなく(これは関西弁か!)
なってしまうストーリーを
一服のファンタジーへとうまく昇華させております。
もっとも妻夫木は標準語でしたが、
その分キャラクターのよさで勝負しております。

そしてそのキャストの好演も特筆もの。
若手俳優だけでこれだけのアンサンブルを作ってしまうのですから
すごいもんです。
妻夫木聡はその年の主演男優賞をとったのも納得の好演。
彼のすごいところは普通の大学生を、ごく普通に演じて等身大のキャラクターとして見る者を納得させてしまうところ。
気合入った演技ばかりの男優が多い中で、この自然体の演技は実は一番難しいのではないでしょうか。
それを彼は「ウォーターボーイズ」といい「69」といい、
実に易々とこなしてしまうのが改めて「スゴイ!」と思います。
ジョゼ役の池脇千鶴は一世一代の適役。
彼女の純真なキャラクターがあったからこそ、辛辣な台詞を吐くジョゼを魅力ある役に昇華できたといっても過言ではありません。
しかしあまりにもジョゼ役が当たりすぎて
その後の活躍がないのは何とも皮肉。
彼女はもっと多岐に渡る演技ができると思うのですがね。
彼女を活かせる次の監督の出現を切に望みます。
あとこの作品では話題になりませんでしたが
翌年「スウィングガールズ」でブレイクする上野樹里がジョゼと恒夫を取り合う女子大生役で出演しており、
「スウィングガールズ」と比べて“イモ姉ちゃん”っぽさが(失礼な!)
何とも等身大のキャラクターでよかったです。

彼女のシーンではとても印象的だったのをひとつ…
ジョゼとの恋のつばぜり合いに破れ、傷心の1年後。
彼女は恋に破れ就職もせずキャンペーンガールのバイトで
タバコの試供品を配っているところで社会人の恒夫とばったり再会。
その何ともバツの悪い表情のうまさ。
キャンペーンガールのまた何ともダサイ衣裳が、
今の彼女の境遇の空しさを見事に表していて
あのシーンは本当名シーンでありました。

最後にこの作品を私が大好きなのはラストシーンのよさ。

※以下はネタバレにずけずけと踏み込みます

恒夫とジョゼの一つの恋は半年後、
恒夫の心離れからあっさり終焉します。
ジョゼも恒夫を追いかけません。あっけなく2人は別れてしまいます。
恒夫は前の恋人(上野樹里)と復縁、
ジョゼの家から出た恒夫と彼女は落ち合いますが
歩く道すがらで恒夫は突然号泣します。
理由も無く、その場にうずくまってしまうほどに…

あまりにも切ない終焉であります。
でも現実の厳しさはこんなものです。
メデタシ、メデタシじゃあ逆にウソ臭い。
あっけない終焉に、そんな自分がどうしても許せない恒夫の号泣。
この作品が見る者を素直に納得させてしまう
等身大のピュアな映画になりえたのも
このラストの切なさがあったからこそ、
と私は今回も確信しております。

人気blogランキング に登録してます☆
ここをクリック していただけるとうれしいです!☆




タイトル: ジョゼと虎と魚たち