私たちは“仮想現実の世界”に生きている!

9)現代における仮想の世界⑱:世の中の真の姿を見極める①

 

 本稿では、これまで本稿『フェイクニュース』や『プロパガンダ』、『歴史上の虚構』、特に第二次世界大戦の勝者による歴史の書き換え、そして、『国の借金1000兆円』『緊縮財政をしなければ財政破綻する』などの現代の虚構の世界を見てまいりましたが、私たちは、実は世の中の本当の姿はほとんど見えていない、むしろ誰かの作り上げた“虚構の世界”を“本当の世界”だと信じ込んで、その中で生きているということになります。

 

 では、私たちは世の中の本当の姿を見ることはできるのでしょうか?できるとすれば、どうすれば見えるのでしょうか?

 

 私たちが世の中を正しく見ることができない理由の一つは、松下幸之助によれば、自分の利害や感情などの私心にとらわれているためでした。そして、それらの“私心へのとらわれ”から解放されて、広く視界を広げるためには、“とらわれない素直な心”が必要であることを松下幸之助は強調しました。これは、いわば自分自身の側の原因に対して、手を打つというものです。

 

 ただ、それだけでは、この複雑な世の中の実相を把握することは難しい面があります。特に、情報を発信する側が一般大衆を一定の方向に誘導しようという明白な意図を以て、大衆を洗脳すべく戦略的に動いているからです。

 

 それは、1913年にイギリスロンドンのウェリントンハウスに誕生したタヴィストック人間関係研究所(The Tavistock Institute of Human Relations)から始まり、プロパガンダの作成と宣伝を手掛ける組織として活動を開始しました。ウェリントンハウス自体の目的は、ドイツとの開戦に断固反対するイギリス大衆を翻意させるプロパガンダ攻勢を仕掛けることにあったと言われています。そのスタッフの一人であるエドワード・バーネイズは、心理学と他の社会科学を利用した世論形成の手法(『同意の工学設計』)を開発して、大衆が自分の自発的な意見であると思い込むように世論を操ったとされており、「集団真理のメカニズムや動機を解明できれば、彼らに気づかれずに意のままに大衆をコントロールし、組織化できる」と述べています。

 

 最近の例は、イラク戦争です。ご承知のように、この戦争は、当時のブッシュ(ジュニア)大統領を始めアメリカの政府高官が、『イラクに大量破壊兵器がある!』『イラクのフセインはアルカイダを支援している!』と繰り返し述べて、それを理由に“先制攻撃”したのでした。しかも、それらがいずれもウソだとわかった後にも、ブッシュ大統領は何ごともなかったかのように権力の座に居座っていました。このことこそ、このタヴィストック研究所の『長期的浸透』と『心を操る条件付け』の強力な力が米国民を絡めとっていることを示しています。(『タヴィストック洗脳研究所』ジョン・コールマン博士 成甲書房)

 

 つまり、現代社会においてもなお、このような大衆の意見をコントロールしようとする“プロパガンダ”は、アメリカに限らず、中国やロシア、その他世界の様々な国において実際に行われているということを私たちは知る必要があります。ご承知の通り、今香港では、少なくとも2047年までは(同年には現時点で共産党一党独裁国家である中国に呑み込まれることは確定していますが)一国二制度の下“高度の自治”が認められていることから、“民主主義”を勝ち取ろうと、学生から一般市民までが団結して、必死にデモを続けています。それでは、翻って“民主主義”が既に確立されているはずの先進諸国(日本を含む)では、重要な問題について一般大衆の意見が十分に反映され、民主主義が適切に機能していると言えるでしょうか?

 

 残念ながら、日本でもアメリカや中国、ロシア等でも、“大衆の意見”という前に、重要な情報が隠され、特定の“支配者層”の意図的な情報のみがその支配するマスコミを通じて一方的に垂れ流され、大衆の受けとる“情報”とその結果有するに至る“意見”とが明らかに操作されているのが現状ではないでしょうか?

 

 そうだとすれば、先進国における“民主主義”は、既に香港にとっての“模範”となりうるものではなく、それらは“幻想”に過ぎないと言っても過言ではないでしょう。その結果、民主主義の下、曲がりなりにも自分たちが選挙で選んだ政党や政治家が行っていることだから、やむをえないということになっているのではないでしょうか?

 

 今回の日本の消費税の10%への引き上げなどはまさにその典型例と言えましょう。

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ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、  「7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、困難に直面してそれを克服してきただけでなく、むしろより大きく発展させてきました。この『禍転じて福となす』経営の考え方について解説します。