※注 会話がかなり多いです。
     読みにくかったら申し訳ありません。













食後、うとうとし始めた子供たちを寝かしつけるために、キョーコが子供部屋へと行っている間に、今回来日した経緯をリックとティナが話してくれた。

『クーおじ様から連絡があったの。奥さん・・・キョーコが私に会いたいって言ってるって。』
『キョーコが君に?』
『クオンのしたことは許されることじゃないのかも知れない。恋人を死なせた人間に会いたくないのもわかる。でも、1度でいいからクオンに会って欲しいって。』
『・・・・・・・・・』
『じゃないとクオンは一生自分を責め続ける。それでは、前に進めないから。・・・勝手なことを言っているのは承知しているけど、クオンに謝るチャンスを与えて欲しいって。』

キョーコ。
まさか君がそんなことをしていただなんて。

『俺たちはその時初めて、お前が日本で俳優をしているって知ったんだ。誰に聞いても消息がわからなかったからな。・・・あの夜から2年ほど経ってからだと思う。クーとジュリに会いに行ったんだ。でも、居場所は教えてもらえなくて、ただ、クオンを信じて待っててくれって言われたんだよ。』
『きっと、俺のことを思ってのことだと思う・・・』
『ああ、そうだな。あの2人は本当にお前のことを愛してたんだ。だから、どんどん傷ついていくお前を見て、どんなに歯がゆかったか。』

あの時、俺は残される両親の気持ちをまったく考えずに家を出た。
ひどく残酷なことをしたと、子供を持った今ならわかる。
でも、そんな俺を2人は信じて待っていてくれた。
俺が苦難を乗り越えるのを見守っていてくれた。
本当に感謝しかない。

『だからさ、クーから連絡をもらったときにはビックリしたんだ。しかも、クオン本人ではなく奥さんから連絡があった聞いてな。』
『本当よ!まさか、あのクオンが結婚しているだなんてね!来るもの拒まず去るもの追わず、それを地で行くような子だったのにね!!』
『確かにそうだね。・・・でも、キョーコは特別だから。』
『うん。なんとなくわかるわ。・・・・私、1ヶ月前だったかしら?キョーコと電話で話したの。本当に色々と長い時間をかけて。その時、思ったのよ。許すとか許さないとかじゃなくて、ただ純粋に会ってみたいって思ったわ。』
『ティナ?』
「キョーコみたいな人に愛されているあなたとなら、会ってちゃんと話ができるって思った。』
『ティナ、ありがとう。』
『お礼なんかいいのよ。私も嬉しかったんだから。・・・キョーコね。あなたにどうしてもプレゼントしたかったんですって。』
『プレゼント?何を?』
『お前が本当の意味で過去を乗り越えるきっかけを・・・』

俺の眼に再び涙があふれてくる。
俺はなんて幸せなんだろう。
優しい両親の元に生まれ、優しい友人たちに出会い、優しい女性(ひと)に出会った。
そして、その優しい人たちから惜しみのない愛情を与えられ生きているんだろう。
俺の人生はこんなにも優しさに包まれている・・・
辛く苦しいこともあった。
でも、それを補って余りある素晴らしい愛情が、俺の人生には満ち溢れていた。

『2人ともやーーっと眠ったわ。・・・・あら?久遠さん?どうしたんですか?!』

子供部屋から戻ってきたキョーコ。
俺がボロボロと泣いているのを見て、目を真ん丸にしている。

『キョーコ、君はやっぱり天使だ。』
『へ?な、何言ってるんですか?!』
『君は俺には勿体なくらいの妻だ。』
『んもう!恥ずかしいですってば!・・・でも、ありがとうございます。あなたの誕生日なのに私がプレゼントをもらった気分です。・・・えっと、久遠さんも私には勿体ないくらいの旦那様ですよ?』
『はいはい。のろけるのはそのくらいにしてくれるかな?』
『そうよ!2人だけの世界に浸らないで頂戴!!』
『はうううう~すみません・・・。えっと・・・じゃあ、もう少しおつまみ作ってきますね?』

キョーコは顔を真っ赤にしながら、再びダイニングを後にした。

『本当にいい奥さん。』
『そうだな。』
『・・・・・勝手なことをって思うかもしれないけれど、あの夜があったから俺はキョーコに出会えた。君とティナには悪いけど、あのことがなければ、俺は日本で俳優をしようだなんて思わなかった・・・』
『きっと、そうね。』
『キョーコも決して平坦な道を歩いてきたんじゃない。俺もね。でも、その険しい道が俺たちを引き合わせ、一緒に生きていく道へと導いてくれたんだと思う。』
『ああ。』
『今だから言えるんだ。両親やキョーコ、リック、ティナ・・・君たちにも。”生まれてきてよかった”って。”たくさんの愛、優しさをありがとう”って。』
『『クオン・・・』』
「久遠さん・・・」

振り返るとキッチンから戻ってきたキョーコがいて、キョーコの大きな瞳にはいっぱいの涙が湛えられていた。

「ありがとう、キョーコ。生まれてきてくれて。俺に出会ってくれて。ありのままの俺を愛してくれて。・・・そして、これからもよろしくね。」
「はい・・・」

キョーコが持ってきたトレー受け取り、再び思い出話に花を咲かせた。
でも、いくら話しても話し足らなくて、今日はお開きということになった。

『久遠さん、いい機会なのでお話したいことがあるんですが・・・もし、よろしければ、リックさんとティナさんにも聞いていただけたら・・・』

テーブルを片付け始めた俺たちに、キョーコがおずおずと話しかけてきた。

『私のお仕事のことなんですけど。』
『ああ。キョーコも女優さんだったわよね?!クーおじ様がものすごく自慢していたわ!!”俺の娘はすごいんだぞ”って。』
『そうなんですか?!嬉しいです・・・・それで、あの・・・』
『キョーコ、ゆっくりでいいから。』
『はい・・・あの、ですね。私、結婚してからお仕事をセーブしてきました。子供が生まれてからは、マスコミの前には出ないようにしています。』
『そうなのか?』
『なんで?』
『私は家庭に恵まれない子供でした。父親の顔も名前も知りません。たった1人の肉親である母親からも愛情を受け取れませんでした。』
『・・・・・・』
『『!!』』
『久遠さんと私は交際期間もほとんどなく結婚しました。告白・・・即、婚約・・・みたいな感じで・・・』
『まあ・・・』
『でも、家族に恵まれなかった私には結婚というか・・・家庭というものに夢があったんです。それは、結婚したら、久遠さんが安らげる家庭を私が守りたいっていうものでした。』
『キョーコ。』
『久遠さんは私のお仕事を認めてくれています。お仕事もすればいいと言ってくれます。でも、私には久遠さんと築き上げている家庭を守ることのほうが大切なんです。』
『そうなのか・・・』
『子供が大きくなったら・・・お芝居をまたすると思います。でも、それまでは・・・私は奥さんとお母さんを一生懸命がんばりたいと思っています。そして、子供たちに”お父さんは世界一素敵な俳優さんなのよ”って話して聞かせるんです。』
『・・・え?子供、たち?』
『はい。”たち”です。久遠さん、来年のお誕生日には4人家族になっていますよ?』
『キョーコ!!』

俺は照れながら話すキョーコをぎゅっと抱きしめた。

『嬉しいよ、キョーコ。』
『『キョーコ、クオン。おめでとう!!』』
『ありがとうございます。』
『ありがとう!』
『キョーコ、君は神様が俺に与えてくれた最高の贈り物だ!!』
『久遠さん、みんなが誰かにとっての天使であり、素敵な贈り物なんですよ?私にそれを教えてくれたのはあなたなんです。幼いころ、生まれてきた意味がわからなかった。でも、あなたと出会って、その意味を知ったんです。私にもお礼を言わせてください。生まれてきてくれてありがとう。私を見つけてくれてありがとう。ありのままの私を愛してくれてありがとう。』
『キョーコ・・・・・本当に幸せな誕生日だよ・・・ありがとう。これからもよろしくね。』











なんだか中途半端ですみませーんううっ...
これでご勘弁を~354354