うつくしい子ども/石田 衣良
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三村幹生(ミキオ)は進学校に通う、植物好きの中学2年生。

1つ下の弟の和枝(カズシ)と、小学校3年生の妹の瑞葉(ミズハ)と

3人兄弟。

静かなニュータウンで殺人事件が起こる。

妹の同級生が山小屋で絞殺され乳頭が噛まれていた。

そして『夜の王子』からのメッセージが残されている猟奇的な事件。

犯人として補導されたのは、13歳の弟だった。

残された家族はマスコミにさらされ、学校や地域から疎外される。


その中でミキオは「弟が事件を起こした理由」を探し始める。

どんな最低な人間にだって、誰かがそばに寄り添っていてもいいはず。

僕の弟なんだから・・・

事件を調べていくうちに本当の友だちに出会い、嫌がらせをうけてもくじけず

仲を深めていく。


『夜の王子』の心の闇の正体とは・・・



酒鬼薔薇事件をモチーフに書かれた、少年犯罪の話です。

加害者の家族と、新聞記者の目から書かれています。

世間に追いかけられ、指を指されながらもミキオは事件と向かいあい

弟の心の闇を見出そうとします。

それにはあまりにも辛い現実が待っています。

それでもまっすぐな子ども達には心をうたれます。

現代の子どもって、本当にこんなに辛い社会で生きているのかな。


13歳のカズシが書いた作文は、私の気持ちと錯綜します。

『ほんとうのぼくはどこにいるんだろう?』

現実の自分が虚実に包まれていて、カラッポに思える。

他の人もカラッポに思える。

ほんとうのぼくはどこにいるんだろう・・・

少年が起こす犯罪は、私達大人が起こす犯罪と変わらないのかも知れないです。


しかしラストが納得がいきません。

真実は真実として明かすのが心の闇を照らす光になるだろうし、記者としての

使命だと思う。


石田さんの作品はすっきりとした読後感が多いけれど、この作品は無理やり

解決させている感じがして逆に心に残ります。


少年犯罪だけに、答えはないということなんだろうか・・・

うつくしい少年とは誰のことなのだろうか・・・