- うつくしい子ども/石田 衣良
- ¥1,600
- Amazon.co.jp
三村幹生(ミキオ)は進学校に通う、植物好きの中学2年生。
1つ下の弟の和枝(カズシ)と、小学校3年生の妹の瑞葉(ミズハ)と
3人兄弟。
静かなニュータウンで殺人事件が起こる。
妹の同級生が山小屋で絞殺され乳頭が噛まれていた。
そして『夜の王子』からのメッセージが残されている猟奇的な事件。
犯人として補導されたのは、13歳の弟だった。
残された家族はマスコミにさらされ、学校や地域から疎外される。
その中でミキオは「弟が事件を起こした理由」を探し始める。
どんな最低な人間にだって、誰かがそばに寄り添っていてもいいはず。
僕の弟なんだから・・・
事件を調べていくうちに本当の友だちに出会い、嫌がらせをうけてもくじけず
仲を深めていく。
『夜の王子』の心の闇の正体とは・・・
酒鬼薔薇事件をモチーフに書かれた、少年犯罪の話です。
加害者の家族と、新聞記者の目から書かれています。
世間に追いかけられ、指を指されながらもミキオは事件と向かいあい
弟の心の闇を見出そうとします。
それにはあまりにも辛い現実が待っています。
それでもまっすぐな子ども達には心をうたれます。
現代の子どもって、本当にこんなに辛い社会で生きているのかな。
13歳のカズシが書いた作文は、私の気持ちと錯綜します。
『ほんとうのぼくはどこにいるんだろう?』
現実の自分が虚実に包まれていて、カラッポに思える。
他の人もカラッポに思える。
ほんとうのぼくはどこにいるんだろう・・・
少年が起こす犯罪は、私達大人が起こす犯罪と変わらないのかも知れないです。
しかしラストが納得がいきません。
真実は真実として明かすのが心の闇を照らす光になるだろうし、記者としての
使命だと思う。
石田さんの作品はすっきりとした読後感が多いけれど、この作品は無理やり
解決させている感じがして逆に心に残ります。
少年犯罪だけに、答えはないということなんだろうか・・・
うつくしい少年とは誰のことなのだろうか・・・