中学3年生。春のある日。



*001**出会い<0>




「悠さ、悠の塾の“前山”て人と映画見に行ったんだって?」


朝、おはようの次にクラスメイトの成美からいきなり言われた言葉。


前山というのは、今の塾で私が仲良くしている人だった。

隣の隣の中学で、塾に入りたての私に声をかけてくれ、メアドを交換し、メールをしているうちに話題の映画を観たいという話になり…少し前の休日に、街へ行ったのだ。


「うん?なんで知ってるの?」

「成美の塾の、**中の野口竜也て人がさ、プリクラ見せてもらったって!!」


**中は、前山と同じ中学校。

当時、男の子と2人で遊びに行くなんて初めてで、女の子と遊ぶ感覚で普通に「プリクラ撮るかぁ」となり、なんとなく撮ったプリクラ。


どうやら、成美の言う、野口竜也の話によると…その中学校のテニス部の部長の前山は、自慢げに私と映画を見に行ったということをプリクラもろとも部活内で言いふらしているらしい。そして、野口竜也は部員。

野口竜也は成美と塾が一緒で、明美に「山口悠って知ってる?」と話しかけ…






そしてなんだか、成美越しにからかわれた。成美は、「竜ちゃん(野口竜也の相性らしい)、そういう、人のことからかったりとか、よくふざけてる人なんだぁ…ごめんね;;」と言っていたが、知りもしない相手にからかわれた自分としては、

腹たつ!!

の1言しかないわけで。


私はその日1日中機嫌が悪かった。

別に、前山のことは好きじゃないし、ていうか向こう好きな人居るし。「男女で遊びに行く」ということを深く考えてもいなかった私は、カップル扱いされたのが無償に嫌だったのだ。浅はかなのは自分の方なのだが。




数日後、前日塾に行った成美に、

「野口竜也に、悠が怒ってたって言ったらマジ謝りよったよ!!」と言われたが、なんだか無償に腹がたった私は、野口竜也の名前を絶対忘れない!と心に誓った。







その名前が、おそらく一生忘れられない名前に、


本当になるとは思いもよらずに。





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