きゅうりが好き | はははわらったよ

はははわらったよ

ブログのタイトルは、息子から。

息子→小児脳腫瘍、松果体、混合性胚細胞腫瘍(未熟奇形種、グローイングテラトーマ等)
寛解、現在経過観察中。

/晩期合併症→高次脳機能障害(境界知能、感覚過敏、易疲労等)成長ホルモン分泌不全、シスプラチン難聴 等

昨日の朝早く。

近所に住むおばあさん『おはよう。ねぇ、柚子とりにくる?柚子ジャム作るー?』

引っ越してきてから ずっといつも温かい眼差しで家族ごと見守ってくださる おじいさん、おばあさん夫婦が近所にいます。

親よりも年が上で、私と年が離れすぎているからか、なんだかお友だちのようで、
ときどきばったり会うたび『元気してた?』と私の背中をポンポンとしてくれるおばあさんです。

長女が2歳の時にここに引っ越してから、新しい土地と右往左往しながら子育てに奮闘する様子や、
長男を出産するとき里帰り出産をしない私の体調と幼い長女のことを気にかけてくださり、産後も自宅の家庭菜園の野菜などを(おすそわけー)とおいしいものを持ってたびたびきてくれました。

長女も長男も、小さい頃からおばあさんのおうちに寄り道して 季節の野菜を掘りとらせてもらって両手いっぱいににこにこ帰ってきたり。。
長男は小さい頃から偏食傾向だったけど、『おじいさんのおうちのきゅうりが好き!』と、おじいさんちのきゅうりがなるたび『ぼく、ここのなら食べれる!』と、大喜びして食べていました。

いつもどんなときも優しくニコニコ笑って見守っていてくれていたご夫婦ですが、
一度だけ、真剣にとても怖い顔で、怒ったようにおばあさんから声をかけられたことがあります。

長男の病気がわかってすぐのこと。
季節柄、寒い時期だったけど、冬の夜の寒さと、これからの怖さで凍え切って 駅から自宅まで自転車をこいでいたら、
角をまがったとき、おばあさんがものすごく怖い顔で立っていました。

自分の親ですら弱音を吐けず、泣けなかった私は、両親のときと同じように笑って『わあ!こんばんわ!…なんか心配かけちゃって、ほんとにごめんなさい!』と、しっかり言えたはずでした。

だけどおばあさんは、
『あんた、、がんばんなさい!あんた、がんばんなさいよ!がんばんなさい!!』と、ずっと怖い顔で 私の背中をバシバシと本当に痛いくらいに何度か叩いてくれました。

いつもほがらかなおばあさんとはあまりにかけはなれている表情と、一体いつからここで待っていたのかと考えたら、泣くつもりはなかったけど、なんだか言葉をなくしてしまって、背中を叩かれたことが自動スイッチみたいに涙がポロポロとこぼれて頷くことしかできませんでした。

おばあさんが『…ご両親は手伝いに来てるの?こっちに来てらっしゃるの?』と聞くので、両親は来る予定も手伝うこともないことを言葉にしたら本格的に泣きそうになって首を横に振るので精一杯。

おばあさんは厳しい顔のまま、『遠慮しないで、なんでも言いなさい。あなたが病院行ってる間、長女ちゃんの習い事の送りお迎えもついででできることはあるわ。連絡くれればいつでも手伝ってあげるから。わかった?遠慮しないのよ。』そう念を押され、ただひたすらに感謝の気持ちをこめてお辞儀して家に帰ったのでした。

いくらそう言われても、なるべく迷惑はかけないよう。。そうおもっていても帰宅途中に病院から連絡が入って病棟に戻らなくちゃいけなくなったとき、主治医先生とのカンファレンスでパパも私も病院に行かなくちゃいけないとき、
家庭の予定変更は、入院や病院のスケジュール優先の生活ではよくあることで、夜遅い時間の留守番をする日や、習い事の送迎など長女のことをみてもらったことがたくさんありました。

長女の居場所が安心できるものであればあるほど、私はなにより心強く、一番 安心して病院で長男の付き添いができました。

何度目かの送迎をしてもらったときに、長女が『ママー、おばあさんちのお迎え またあるー?またして欲しいなー♪』とにっこり。

どうして?と、聞いたら
『だってね、ほら、ママのお迎えのときはママは車の中で、あたしは駐車場まで歩いて行くじゃん?でもね、おばあさんちのときは、すごいんだよ!おじいさんが駐車場で待っていて、おばあさんがね、いつも教室までお迎えにきてくれるの!でね(長女ちゃん、おかえり)って、あったかい缶の紅茶をくれるの。ねぇ、ママ、あれ飲んだことある?甘くて、あったかくて、おいしいんだよー!』
うわー、お迎えのときにそんなことまでしてくれていたんだ。知らなかったー、、。私も長女と一緒に甘えさせてもらえたように本当に本当に心強く温かい気持ちになりました。

そんな温かくて優しいおじいさんとおばあさん。理想の夫婦。。

ところが先日、おばあさんが元気をすっかりなくしてとぼとぼ歩いていました。どこか身体の具合が悪いのか心配になって、声をかけて、立ち話。おばあさんが いろんな悩みを話しだしました。

ニコニコ笑っていても、素敵な夫婦にみえても、何歳になっても、家族って、夫婦って、ほんとに難しい。

泣いたり、我慢したり、怒ったり。

おばあさんが『あたしね、死ぬときに(あたしは ほんとによくがんばった。)そう思って死にたいの。でもね、我慢しすぎて疲れちゃった。もう最近は 早くお迎えきてー!って毎日 祈ってるの。もういい!いろんなこと我慢して、たくさん自分の病気を抱えて、いつもいろんな病院ばっかり通って疲れたわ!もうじゅうぶんがんばったでしょー!って。』そうぽろりと涙をこぼして、その涙をみて、わあ涙がでたー!と、少し笑って話してくれました。

私もいつか、いつか、もうじゅうぶん がんばった!お迎えきてー!と、泣きながら笑える日がくるだろうか。


長男と柚子をもらいに行ったら、大きな柚子の木が枝ごと伐採され、すっかり小さくなっていました。

長男は 柚子の棘に気をつけながら、おじいさんに褒められながら、せっせと柚子を収穫し、ついでに大根も三本も抜きとらせてくれました。

長男くん、大きくなったなあ!力ついたなぁ!と、ニコニコ笑うおじいさん、おばあさんに、長男はちょっと照れて嬉しそうににっこり。

大きな柚子の木がすっかり小さくなっていたので、長男が『なんでこんなに小さくしちゃったの?』と聞いたら、「来年は、もう、柚子をとる体力がないかもしれないから。これからはいろんなものをあんまり大きくしないことにするの。…終い支度よ!」と、長男に伝えてました。

長男は『ふーん。そうなんだ。』と、頷いてまた一生懸命 柚子ひろいのお手伝い。しばらくして『もう寒いよー!柚子の匂いなんか苦手だしー!酸っぱいものきらーい!』と、冷たくなった柚子をにぎって『ああっ、つめたい!つめてー!』と大騒ぎしていました。

たくさんの柚子をもらって、家に帰ったら、長男が『おじいさんちにお礼のお手紙かく!』と、書いていました。
しばらくして『届けてくる!』と言うので、「ちょっと待って!間違えてる字がないか念のためみせておくれ!」と、みせてもらいました。

長男のお手紙には、
家庭菜園の絵と、
(ぼくはゆずよりも きゅうりが好きです。おじいさんちのきゅうりがたのしみです。)

また夏になったらきゅうり、とらせてもらおう。ついでに小さくなった柚子の木が実をつけてくれるよう長男と一緒にお水もあげてこよう。

もらった柚子は約4キロ。
おじいさんとおばあさんが『おいしい!』と言ってくれるように、丁寧に柚子ジャムを作りました。
明日、長男と一緒に柚子のお礼で柚子ジャム、ひと瓶届けてこようっと。

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じゃーん。
柚子ジャム、長男はやだー!と逃げるけど、長女の大好物です。