☆ TPPその光(メリット)と影(デメリット)<Ⅱ> | mikapapaのブログ

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 安倍首相が今年3月に正式参加を表明したTPP交渉ですが、過去ログにも書いて来ましたように、愁眉の的となっている農業や保険・医療などの分野に衆人の注意を集めていますが、実は昨今、識者の疑念の中心に浮かび上がってきている問題に、著作権など知的財産の分野が争点になると言われています。
 そのような中、ネット上などでは 「TPP参加で、コミックマーケット(コミケ)が終了するのでは?」 という議論が持ち上がっています。


 そうした疑念の背景には、アメリカがTPPでの「著作権法の非親告罪化」 (著作権者の告訴がなくとも検察が起訴できる)を提案しているという情報から単を発しています。
 現状では交渉内容はオープンにされていませんが、交渉リストに入っていることは確実とされています。


 この非親告罪化が実現すれば 、二次創作文化の一つである同人誌にも計り知れない影響が出ることは否めません。現実的に考えても、国内で開催されるコミケの現実は、夏冬ともに50万人規模の観客動員と、3500サークルもの参加サークル数の、規模をもち世界でも例がない、ユーザー発コンテンツの祭典でもあります。


 主催者側の調査によればそのうちの75%前後は、多かれ少なかれ既存のコンテンツをモチーフにしたパロディ的な作品としています。


 しかし、日本がTPPに参加して、「著作権の非親告罪化」が正式に認められた場合には、こうした二次創作は、相当数が現行法では既存作品の無断『翻案』となり、仮に裁判となれば著作権侵害とされることは歴然です。


 簡単にいえば、現行の著作権法からも厳密にいえば、コミケに並ぶ二次創作物の多くは、著作者が持っている著作権の一つ 「翻案権」 を侵害している可能性は大きいのですが、なぜコミケは堂々と開催されているのかといえば、過去、刑事摘発や紛争に至ったケースもありますが、必ずしも多くはなく、むしろそうした現象を、オリジナルの作家や出版界側では、『あれは原作のファン活動の延長』 という意識が暗黙のうちにあるからであり、ある意味、逆にシーンを盛り上げる側面もあると好意的な大人目線の判断からといえます。


 加えて、コミケから人気作家が生まれたり、現役の作家がコミケに参加するケースも増えてきた中で、黙認という程ではないのですが、いわば 『放置』 してきたのが適切な判断でしょう。無論、行き過ぎがあればクレームも入りますが、要は、プロ側とコミケ側での、ある種の呼吸の合致から共存して来たのが現実的な情勢です。


 現実的に日本では、著作権侵害があった場合、著作者の告訴があって初めて検察が起訴することができる「親告罪」とされていますが、では、仮に、TPPに参加して、著作権が非親告罪化されることになると、同人誌を販売することすら摘発の対象にされるということを意味します。


 しかも、権利者が怒っていなくても、検察の判断で起訴 ・ 処罰できることになれば、現場では萎縮感が進み、特に、特定の二次創作を不快に思う第三者が『告発』すると、警察も当然動かざるを得なくなり、大きくいえば司法権の乱立に帰結します。


 更にいえばこうした危惧は、コミケに限らず、日本文化の特徴といえるさまざまな二次創作の場に波及することは避けられないことになるのではと、様々な分野で危惧され始めています。


 一般として、『コンテンツ立国』 『知財立国』という考えかたから、すぐに著作権などを強化する 『知財強化』 のことだと短絡的に判断されがちですが、もちろん、海賊版対策など知財をきっちり守ることは大事なことですが、むしろもっと大切な、古くから残る日本文化や、コンテンツ産業の強みを正しく理解して、その土壌を壊してしまうような制度を安易に導入しないことのほうが重要なことです。


 特に、TPPのような多国間の包括条約の場合、一度取り入れてしまうと、試行錯誤でやり直すということが事実上できなくなることを認識すべきです。


 TPP交渉においては、農産物や工業製品だけでは無く、こうした知的財産権の保護も大きな焦点です。
 交渉では、米国側が著作権保護期間の延長を主張し、権益拡大を狙って来る可能性が強く懸念されます。


 そうした米国の思惑を揶揄するようなエピソードが、『 TPPでミッキー守る』 といわれる出来事にも現れています。


 米国の著作権法は皮肉交じりに、「ミッキーマウス保護法」 、或いは 「ミッキーマウス延命法」 ともいわれ、ミッキーマウスの著作権が切れる直前に、関係者のロビー活動によって保護期間を延長する法案が可決された、というあざとい歴史を持ちます。


 更にいえば、くまのプーさんの著作権料は、世界で年間1千億円を超えていて、更に人気の高いミッキーマウスはより多く、コンテンツと特許は、米国有数の “輸出産業” になっている国でもあります。


 そうした現実的な問題を踏まえて考えると、昨今大きな争点にもなっている、知的財産権分野の海賊版の取り締まりや、著作権の保護期間等も対象になり得るといわれています。


 米国の市民団体が昨年、独自に入手した交渉資料をインターネットで公開していますが、それによると、知的財産の分野では、著作権の保護期間を延長する旨が記されていたことも指摘されているようです。


 因みに現在、米国が世界各国から受け取る著作権 ・ 特許料の総額は、年間で、9兆6千億円にも上っています。


 日本での著作権の保護期間は、作者の死後50年で、米国は70年で、著作物を利用する国の法律に基づいて支払われていて、此の為、米国は、日本の保護期間を自国並みの70年に延長させたいのは見え見えです。


※ 世界の主要国では、保護期間は死後70年が多数派を占め、日本音楽著作権協会(JASRAC)によると、経済協力開発機構(OECD)加盟34ヶ国の内、70年としているのは30ヶ国に及び、メキシコが100年で、50年と規定している国は日本、カナダ、ニュージーランドの3ヶ国です。


 実は日米の間では、本来、著作権が切れている戦前、戦中の米国の作品に対して著作権料を払い続けている 「戦時加算」 の問題が眠っています。


 戦勝国側が 「日本は戦時中、無断で使用していた。」 と見做し、保護期間を約10年加算したことによります。


 この問題に関しては、優良なコンテンツを壮大に持つ米国が、圧倒的に優位なことは現実でありましょう。しかしこれまでの知り得る情報を考えるにつけ、己が利益は絶対的に死守、あるいは拡大させ、他国の利益は、一睡の余地も持たない老獪で露骨な思惑を強く感じられるのは、底辺に住む個人の単なる思い過ごしであるのか、現実の交渉力が左右することになろう、が…