ちびりんご これは、りんご(娘の名)が幼稚園年中の時の話です。


ビルはりんごより2歳年上のブルドッグである。

ある日、家出した。

わたしの態度が気に入らなかったようだ。


わたしは全然あわてなかった。

もともと気の小さな犬なので、思い切ったことはしない。

「絶対帰ってくる」

と自信を持って、落ち着き払っていた。


あわてたのは、夫とりんご。

夫は懐中電灯を持って、探し回った。


りんごは泣いた。

わたしが、

「なんで?いつも、ビルが死んだら、りんごはバンザーイで、ちいさい女の子の犬を飼って、 

 りんごが散歩に行くんだーとか言ってるじゃん」

と言うと

「いやあ。ビルと同じ犬がいい。ビルがもし帰ってこんかったら、あしたビルと同じ男のブルドッグ買ってえ」

と言った……う、売ってないよ…


しばらくして、夫がビルを連れて帰ってきた。

おばあちゃんの家の玄関の前で、寝ていたそうだ。


りんごは感激の面持ちで、ビルを見た。


わたしが頭をなでようと手を伸ばすと、ビルは

「たたかれる!」

というふうに首をちぢこめた。

ビルは自分のしたことがわかっていた。


その後、遊びに来たお友達が

「ビルこわい。ビルきらい」

と言うと

「そうお。りんごはビル大好きよ!」

と断言するりんごになっていた。