フェルメール〈地理学者〉とオランダ・フランドル絵画展 Bunkamuraザ・ミュージアム | ちわ☆わんつーmemory 

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日々の忘れたくないこと

日本が大変な時期ですが、この美術展も行こうと思っているうちに地震が起きました。
いくつかの行きたいと思っている美術展なども東北地方太平洋沖大地震の影響による施設点検のために休館するところが多く、そのなかで開催時間は短くなっていますが開催中のBunkamuraザ・ミュージアム

       フェルメール〈地理学者〉とオランダ・フランドル絵画展
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持っているチケットが期間限定なので被災された方には心苦しいですが、行ってきました。

今回の美術展は、ヨハネス・フェルメールの作品は〈地理学者〉のみですが、もともとフェルメールの作品は三十数点しか現存していません。

43歳でなくなるまでそのほとんどを故郷デルフトで過ごしたといいますが、22年の画家としての活動時期に描かれた作品が少なく、記録も少ないそうです。
ただ、この頃は画家は副業を持つのが普通で、フェルメールも画商をしていたようです。

そして、三十数点のうち男性単身像はこの〈地理学者〉と〈天文学者〉しかありません。

その2点は対のように
〈地理学者〉には地球儀が
〈天文学者〉には天球儀が描かれています。
17世紀海の覇権を握ったオランダ
スペインから独立し新興国オランダは貿易大国になります。

〈地理学者〉にはそんな貿易や航海に関連あるモチーフが描かれています。

①後ろにある地球儀はインド洋海域が正面に向けられています。
②壁の右側には地図。「ヨーロッパ海図」がかかっています。
③手に持つコンパスと右下イスの上にある定規
④身につけている上着は「ヤンポス・ロック=日本の着衣」と呼ばれるもの。交易で日本の着物などが流行し、ステータスシンボルとなっていました。
⑤壁の幅木の代わりに故郷の特産デルフト焼きタイルが使われ、ゴブラン織りの豪華な布は貴重な工芸品として高価で取引されていました。
地球儀の影が壁にかかり透明感のある光の描写です。

今回の美術展はフランクフルトにあるシュテーデル美術館が改装工事をすることになり、コレクションの17世紀オランダ絵画とフランドル絵画が貸し出されました。



「歴史画と寓話画」
ここで巨匠対決
オランダ絵画のレンブラントとフランドル絵画のルーベンス
どちらもダヴィデの絵です。展示順で
ルーベンスの 〈
竪琴を弾くダヴィデ王
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この作品は作者名はルーベンスとヤン・ブックホルストの連名になっています。
ルーベンスはインテリで魅力的な人物だったので人気があり、アントワープの工房には注文がたくさんありました。
この作品もルーベンスは頭の部分と肩のみ。それも人物が特定できない絵を描いているだけで、工房でダヴィデ像に完成させました。
このようなトローニー(頭部の習作)から作品が大量生産されました。
まるで今なら、マンガ家とアシスタントですね。


続いて
レンブラント〈
サウル王の前で竪琴を弾くダヴィデ
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この絵ではダヴィデは左側、竪琴を弾いています。正面で槍を持っているサウル王
王の視線がダヴィデに…横目でダヴィデを見ています。
レンブラントが二十代半ばの作品
―イスラエル王サウルはダヴィデの竪琴にいつも心を慰められていたのですが、ダヴィデがゴリアテを倒したことで、ダヴィデに嫉妬の心を持ちます―
この場面は竪琴を聴きながらもそのあとで、槍でダヴィデを殺そうと思っています。
レンブラントは光の明暗をはっきり描くのが特徴ということですが、この作品もダヴィデは暗く、サウル王が浮き上がっています。


「肖像画」
オランダの台頭する裕福な市民の肖像画が多く描かれるようになりました。
フェルディナント・ボル〈若い男の肖像〉
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レンブラントの弟子だった画家です。
若い男と名付けられているのはヒゲなどがないからだとか

フランス・ハルス〈男の肖像〉と〈女の肖像〉
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この2点の作品は夫妻を描いでいるらしいのですが、
男性のえり飾りは自由な筆使い、対して女性の襟は細かくしっかりと描かれています。
その男性のえりの描き方は後の印象派へ影響を与えたそうです。


「風俗画と室内画」
ディルク・ファン・バーブレン〈歌う若い男〉
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見た瞬間カラヴァッジョ
ちわ☆わんつーmemory-misskju01suiig.gif  なんて思ってしまった…
キャプションには題材などがカラヴァッジョの描写に影響を受けたとありますが、光の描き方とかすご~く似てます。
私のような素人でさえカラヴァッジョを思い浮かべたのだから

アドリアーン・ブラウエル〈苦い飲み物〉
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見るからに苦そう
この画家の作品は
〈足の手術〉
〈背中の手術〉
苦い飲み物
と続きます。痛みや五感のうちの味覚といった感覚をすごくうまく表していて、見ている方まで、痛みを感じそう。
この絵もインパクトがありました。


「静物画」
ヤン・ウェーニックス〈死んだ野兎と鳥のある静物〉
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手前にある銃。仕留められた獲物のウサギの毛の質感。静物画のコーナーで一際印象に残ります。
貿易大国となったオランダ
描かれるレパートリーも格段に広がり、裕福な商人の邸宅を飾るなど、ステータスシンボルとなりました。
この作品に描かれている狩猟は貴族の趣味。
その狩猟を行うことや、そのような絵を飾ることで、貴族趣味を楽しんだようでした。

また、花などのなかに無造作に描かれた高価な中国製の水差しの絵
高価な物をぞんざいに扱うことがオランダ商人のステータスでした。
ピーテル・ド・リングの作品には黄金のリングがサイン代わりに描かれていて、名前とのシャレかな…



「地誌と風景画」
あまり興味の湧かない主題なのですが、何故風景画が発展したかという理由がわかると、こちらの見方も変わります。
生まれた土地を追われた人たちが、ふるさとを思い出しながら眺める。
スペインとの独立戦争でのことです。

この美術展で印象に残った作品・目立つ作品をあげてみました。

特別出品として
〈ファルク 地球儀〉1700年
〈ファルク 天球儀〉1700年
〈ファルク ヨーロッパ図〉1695年頃
ヨーロッパ図には下の方に女王が描かれています。
大航海時代 夢をふくらませていた多くの人が忍ばれますね。




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