アラマタ美術誌 荒俣宏 | ちわ☆わんつーmemory 

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日々の忘れたくないこと

ヒトは「絵」が描けるけど、自主的に意味のある絵が描ける生き物は他にいない。

何故ヒトは「絵」が描けるようになったのか?

アラマタ美術誌/荒俣 宏
¥2,940 Amazon.co.jp
本書が教えてくれるのはまずヒトはどうして絵を描くようになったのか?なんと絵が描けたために滅亡をまぬがれたというのです。美の思想は東西で違うにもかかわらず、騙される快楽、イリュージョンの快楽は共通しているわけを豊富な図版で説明。さらに、太古から現代までの装飾芸術の秘密を解き明かして、肥満とダイエットの美術史!を展開。ついにヒトはなぜ悪趣味を求めるのかを論じて大ドイツ芸術もバッドテイストだったことを証明して美醜の起源とその消滅にまで説き至る、さすがはアラマタ美術誌だ。(内容紹介より)





今から15年位前、荒俣宏さんの「ゴードンスミスのニッポン仰天日記」という本を、テレビでご本人が紹介されていた。高額だったので図書館で借りようと思い立ったのが図書館利用のきっかけでした。

ゴードン・スミスのニッポン仰天日記/リチャード・ゴードン スミス
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残念ながら頭のなかには全然記憶が残ってませんけど。図書館という身近な宝庫を利用する、今でも続いている楽しみを教えてもらって感謝です。



さて本書の最初の方におもしろい記述がありました。

ヒトが絵を描けたのは、自由に動かせる「手」を手に入れたから。

無重力体験で足は自由に動かせないのに、手は無重力になってすぐにでも動かせたそうです。

重力フリーになった手が自由に線を描けたのだとか

丁度半年滞在した宇宙から帰還した宇宙飛行士の野口さん、テレビで見ました。手は親指上げてサイン出してたけど、歩けなかったですね。



そして「影」

火を使えるヒトは影の存在を知っていた。輪郭を知ったヒトはそれを写しだした。

ニューヨーク、アメリカ自然史博物館の入り口ホールに展示されている「壁画を描くホモ・サピエンス」

わざわざ暗い洞窟の中で火を持って絵を描いている。

影をコピーしたものこそが「絵」だった。2万年前から「絵」は描かれていたのです。


この影から話は進んで“陰影”へ

日本とヨーロッパでは影に対しての考え方に相違がある。

日本では影は安心も与える存在だった。言葉に「おかげさま」とあるくらいに。

しかしヨーロッパの影は恐怖も感じるものだった。

これは日本とヨーロッパの緯度の違いから、影のでき方が原因ではないかと推測されていますね。

そこから日本の絵画には影が描かれていないが、ヨーロッパの絵画には「リアル」を意味する目的で影が描きこまれた。本当に存在してます。という意味合いですね。

その違いがあったので、影の描かれていない浮世絵はヨーロッパで驚かれたとか。

北斎の娘お栄のように影を巧に描いている絵もあります。荒俣さんはここでもお栄をしっかり取り上げています。


影は風刺でも使われています。

描かれている人の真実の本質を暴くという方法で。


西洋で早くから完成された肖像画。 

あまりにリアルなものは形代、身代わりと思われて、呪いに使われると懸念され、日本では昔の肖像画が少ないとか。

考え方の違いはこうして生きている場所によって絵画にも影響している。




第二章は装飾芸術論

うわべを飾る…装飾です。

本質的なものと表層的なもの  ここから荒俣さんらしい妖怪などの話も出てきました。

古墳の壁画の四神図や東照宮の三猿へ。東照宮の考案は天海です。


ここで「鏝絵―こてえ-wiki- 」というものがでてきます。

左官がこてひとつで作った芸術。

左官 「官」という字が付いていることに意味があるんですね。左官職人は呪術の担い手だった。ここで聖なる石工としてフリーメーソンなんて出てきてビックリ!

左官は地位が高かった! うわべを飾る仕事に従事する人々には何か特殊な職業上の秘密があった!

やはり荒俣さんの本はおもしろいです。


鏝絵で建物の装飾についての解説から鯱(しゃちほこ)も同じく邪気が入らないようにブロックしていると。

そして西洋ではシンボルはライオンが使われていることが。…三越デパートもライオンの像がありますね。

ドアノッカーもライオンが多く使われる。昔から慣例となっている物には意味があるのですね。


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この装飾芸術の話は西洋へ広がり、グロテスクの語源となったグロッタ…人工洞窟や地下室へ。


やがて、うわべのアーティスト対構造のエンジニアという構図が、エッフェル塔を例にして説明されます。おもしろいですよ。


アメリカに贈られた「自由の女神」

内部はエンジニアのエッフェルが担当したが、称賛されたのは、装飾ばかりでアーティストのバルトルディ

エッフェルは自由の女神がバランスよく、崩れず、内部に登れる展望台付きのアートだと理解してないアメリカ人に対して不満だったから、骨格だけの装飾を剥いだエッフェル塔を建てたとか。

知らなかった、知らなかった! そんな因縁があったなんて。



「ダイエット」

ゴッホなど、日本の浮世絵がヨーロッパに与えた衝撃は想像をはるかに超えていたようで、私は日本を過小評価していたのかな?


それまで肥満な肉体を描くことが当たり前の西洋絵画、日本の痩せた人物画も衝撃をあたえたとか。

フランスでは絵画がダイエット!


それに対し日本は逆に

リアリズムとは生々しく毒々しい生の肉体を描きだす…「バッドテイスト」の迫力



ヨーロッパ人が驚いたことがまた出てきます。

「取り合わせの妙」

ここで「唐獅子牡丹」の解説がありました。定形化された取り合わせ。

なぜ牡丹と獅子なのか? 任侠ものの彫り物で知ってはいましたが、その意味は初めて知った!


装飾 絵に込められたメッセージ 昔の人々のセンス  読み取れるか?!



第三章差別する美学ーヒトはなぜ悪趣味を求めるのか



近代以前、身分を表す要素には衣装も含まれていた。

キャラクター(=らしさ)は誰でも分かるよう明確さを要求されてた。今でも残る制服はその実例。


それに反発した「バサラ」

身分秩序を無視し、公家、天皇といった権威を嘲笑し、異様で華美な服装、振る舞いを好んだという。

バッドファッションを好み、バッドボーイの美学を確立した武士たち。文化的な下剋上をした男たち。

では女たちは? 

「源氏名」 源氏物語を知っていた江戸時代の太夫。

平安期の恋、対象者への関心は教養、ウィット その伝統は今いずこ?


庶民的なカブキ者

ゴロツキは「御霊憑き」?! 荒ぶる神にとり憑かれた!


日本では整形は目を二重にすることが一番多い。でもアメリカは鼻の整形。

何故か? それはユダヤ人の鼻は特徴あるから!

ヒトラーやナチスの事も多く書かれた章でしたが、鼻の整形にまで話が及ぶとは思いませんでした。

マイケル・ジャクソンも、鼻、こだわっていたけどね。

現代の表現方法   パーソナリティ?



ここで書かれている美術は荒俣さんゆえの取り上げ方で「らしい」といえば「らしい」です。

荒俣さんの本だから読みたくなる…人を惹きつけるものを持っている。これぞ荒俣さんのパーソナリティ


美術誌となってますが、雑学たくさん  雑学大好きです。

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