2009年11月発行の柴田さんの作品
小説新潮に連載された短編集です。といってもそれぞれつながったお話
- いつか響く足音/柴田 よしき
¥1,365 Amazon.co.jp - 「家族」のかたちが見えればいいのに。壊れはじめたら、すぐに分かるから。借金まみれのキャバクラ嬢。猫の集会を探し求めるカメラマン。夫が死んだ日のことを忘れられない未亡人…ひとりぼっちの人生がはじまった、それぞれの分岐点。著者会心の傑作連作集。 (内容紹介より)
1作目「最後のブルガリ」
主人公はアンラッキースパイラルに陥った26歳の絵理
平凡な生活を送っていたはずなのに。なぜ?こんなに堕ちて行く?
読み始めてつらくなり、怖くなり、読むのをよそうかと思いました。
読んでいるこちらまで落ち込んでいきそう…でも柴田さんの作品だもの、そんなことだけで終わるハズない。
落ちていくだけの話の訳がない。
絵理は高校の同級生であり、キャバクラの仕事を一緒にしている朱美のところへ転がり込んだ。
そこは朱美の父親が住んでいた東京のニュータウンと呼ばれた寂れた団地だった。
そこに暮らす人々
それぞれは平凡に見える人
そんな人達だけど、そのひとりひとりにも思いがけない人生があった。そして秘密も
人生の明日に何が待っているかは誰にも予測ができない
もう人生が終わりかけているような人たちがいる団地
しかし朱美はそこの人たちが好きだ。それは絵理も思っている。こんな人達が家族だったらよかったのに…
おもしろいのはそれぞれが相手をどう見ているかがお互いにわからないこと。
こちらは相手を自分に都合よく見ている。
しかし相手の心の中は…
この作品は私にとっては「身につまされる」ということばがピッタリ過ぎて
読み終わったとき少々影響されて落ち込んだ
若い人が読んだらどう感じるのか
平凡な人生と思っていてもそれぞれいろいろな思いを抱えて生きている人生
その過去のために今は何も願わず、静かに同じことの繰り返しの毎日を送っている里子や静子
柴田さんの目の付けどころに細かい観察眼を感じます。それをこのように表現する技術にも。
私が落ち込んだってことはそれだけリアルなような、自分の人生を見返すような気にさせられたということだから?
あらためて、自分が誰かにとって必要な人間か? 自分にとって誰が必要な人間なのか? を考えてしまいました。
もしひとりぽっちだったらってね。