「【明日もまた話そう】などと泣き付くような勢いでお願いしてくるものだから優しくも慈悲深い仏様のような私は今日も仕方なく会話に付き合ってあげるという算段でやってきてあげたのに、一体何をしているのかしら、ああ、一気に話したら舌を噛み切りそうになったじゃないの。腹立たしい」
「よう、おはよう。待ったか?」
「やっときたのね。私が既に立っているという事は、確実に待ったという状況を言わずもがな披露しているようなものじゃないの。遅れて来るなんて失礼な」
「いや、お前が早く到着しただけで、僕も待ち合わせ時間より5分早いぞ。どれくらい待ったんだ?」
「あなたよりも更に5分前に来たのよ。予定を10分早くしましょう、ってちゃんと宣言したじゃないの」
「え?いつ?そんな約束した記憶が無いぞ……忘れてたとしたらごめん」
「ここに到着した時に声も高らかに宣言したわよ。【やっぱり予定を10分早めましょう】って」
「そんな理不尽な!こっちは知りようが無いだろうが!」
「うるさいわね。私が早く来るかもしれない事も考慮せずに行動するのが悪いんじゃないの。約束の時間の30分前には到着していないと遅刻よ」
「そのルールだとお前だって10分前で遅刻じゃないか!」
「こういう事は一番のしっかり者が責任を持って決定するべきなのよ。あなたはひたすら早く来て、私が約束時間を変更しないように気をつけるべきだと思うわ」
「自分の都合でコロコロ予定を変える人間に責任を持たせられるわけないだろ!でもまぁ良いや。次から早く来るようにするよ。お前との待ち合わせの時だけは待たされてもあんまり苦にならないし」
「あら、何よ突然。どういう事かしら」
「待ち合わせの時って、その相手の事を考えるだろ。だから相手によって遅刻と感じる時間が違うってわけだ。お前は……その……特別だよ」
「……そうね。確かに私もそうだったわ」
「そ、そうか!どんな事を考えてくれてたんだ?」
「【後どれくらいで来るのかしら】とか、【ちょっと彼より早く着すぎてしまったかしら】とか、【待ち合わせの場所は確かにここって言ってたわよね】とか」
「ほら!ずっと僕の事を考えてくれてたんじゃないか。嬉しいよ」
「早とちりしないでちょうだい。それぞれまだ続きがあるわ。【後どれくらいで来るのかしら。私を待たせるなんて失礼な。ひっぱたいてやろうかしら】とか、【ちょっと彼より早く着すぎてしまったかしら。今はまだ一応時間前だから良いけれど、一秒でも遅れたら八つ裂きにしてやろうかしら】とか、【待ち合わせの場所は確かにここって言ってたわよね。まだ着ていないフリをしてどこかに隠れて、しばらく慌てる様子を観察してやろうかしら】とか。色々と面白い攻撃法を思い付きそうだったわよ」
「なるほど……次回から何としてもお前より早く来るようにするよ……」
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