何はともあれ聞いていただこう。文句は次の通り。
「カウントダウンが始まった 絶対優勝・星野阪神」
待ちに待ちましたぞ、この時を
18年もの年月を耐えに耐えたる人がある。待ちに待ったる人がある。伊勢神宮の遷宮とタイガースの優勝は20年に一度のお祭りじゃで、いよいよそれが現実に、秒読みにとなりました。
つらかったでありましょう、泣きたかったでありましょう、あと一歩、あとひとつというところで裏切り続けたにくいやつ、誘っておいてはすっぽかす、身放そとすりゃ振り返る、駆け引き上手な魔性の女、ぼやきぼやいて18年、惚れたあんたが悪いのよ。
そんな性格直してやろと、立ち上がったる戦人、星野仙一その人なり、生まれ故郷のスタジアム、岡山県は倉敷市、その名倉敷マスカット、超満員は三万人で膨れ上がった舞台の上で、悲願大願18年、待ちに待ったるカウントダウンがいま高らかに始まりました。
せくまいぞ、慌てるまいぞ、おごるまい、山はまだまだ高いでしょう、落とし穴もあるでしょうそんな時も、こんな時も、めげるまいぞよ、くさるまい、気を緩めず、手を抜かず、一歩一歩を確かめて、踏みしめて、栄光のゴールは決して遠くない、勝利の美酒をともどもに、酔いしれたい気持ちをば、ぐっと抑えて今しばし、今しばし、今しばし、わかって頂戴、傍聴の旦那
一番セカンド今岡は、変わりましたよこの男、いまは立派な先導役だ
二番センター赤星は、二年連続盗塁王、ダイアモンドのチーターよ
三番レフト金本よ、チャンスは必ずものにするのだ此の男
四番ライト桧山進次郎、住み慣れたるライトにもどりゃ、こいつはだれにも止められぬ。
五番ファースト、ジョージ・アリアス、生まれ故郷はグランド・キャニオン、笹船浮かべて遊んで育つ、誰が言うたかしらないけれど、メシア・フロム・USA。アメリカから来た救世主。
六番サード片岡篤士、忘れまいぞよあの巨人戦、延長十回サヨナラ打
七番キャッチャー矢野輝弘、ケガだけせずにいてくれよ、お前さえいれば味方のピッチャー100パーセントの力持ち
八番ショート藤本敦士 恐怖の八番バッターよ、栄冠はお前のものだ藤本よ、イージーミスさえしなければ
帰ってくるのだ 浜中よ、大将星野の胴上げは、お前のその手でやってみろ。俺は待ってるぜ。
忘れちゃいません 八木裕、神様、仏様、はちぎさま、ここで一本頼みます、皆の願いを裏切るような奴じゃない、男の中の男だ八木よ、どうしてそんなに偉いのか。
さてピッチャーにと目をやれば、
打つのも大好き、トレイ・ムーア 上手・対角・横からと、変幻自在に繰り出す玉で、開幕からの七連勝
後ろの控えしこの人は、言わずもがなの剛腕伊良部、アメリカ帰りであるけれど、いまじゃ立派な虎の一員よ、鍛え抜かれた投球術で、ローテーションの要なり。
三番手としてうかがうは、ハラハラドキドキ井川慶、しっかりせいや、もう少し、文句の一つも言いたくなるで、若きエースの君なれば、
藪恵壹は三重県人、伊勢神宮に立石さん、熊野大権現の支えあり。
ここ一番での下柳、相手打線をねじ伏せる、
ここで登場安藤優也、売り出し中の頼れる男、待ちの時間は俺が持つ。
ルーキー久保田の繰り出す玉は、空気摩擦で燃え上がる、こいつは全く楽しみだ。
さてどん尻に控えしは、こいつが出てくりゃウイリアムズ、左こぶしを握り締め、空気切り裂くあの雄たけびは、トラ軍団の勝鬨よ。
これで役者はそろいました。お膳立てもできました。皆様ビールを温めて、お待ちくださいその時を。私はビールをよく冷やし、さめないうちに頂きます。
六甲おろしにさっそうと、蒼天翔る日輪の、青春の覇気麗しく
時は大正13年、甲(きのえ)子(ね)の年八月一臂、名付けられたが甲子園、戦災、天災かいくぐり、見届けましたぞ名場面、高校野球はもちろんのこと、景浦、沢村始めとし、小山、村山、王、長島、球史を飾る名勝負、演じましたる名優たちを。
輝くその名ぞ、阪神タイガース。
今年こそ、ああ、今年こそ、今年こそ、男星野が宙に舞う、夢にまで見たその日まで、・・・
2003年7月8日 対広島戦(倉敷)に勝利し、セ・リーグ史上最速のマジック・ナンバー49が点灯したその時点のことを読んだもの。優勝の決まったのは、9月15日であったから、踊りの期間中はすべてこの文句で通せたのである
青文字については、阪神タイガースの歌 六甲おろし(六甲颪)を借用しました。