コンペティーション
VHS、8mm、 DVD・・・録画のツールは次々と変わっていきます。
VHSと、ベータのふたつの方式は、激しい競争の末、
VHSが勝ち残りましたが、今は、どちらも消えようとしています。
この世界に詳しい client が、こんなことを語っていました。
VHS・ベータの2種類の方式が並行してあったため、
消費者が迷惑をしたとの意見がある。
しかし、2種類の方式が勝ち残りを争って、各メーカーがしのぎを削ったため、
数十万円もしたビデオレコーダーの価格が、数万円にまで下がったのだ。
メーカー同士の競争がなかったら、
ビデオレコーダーは、いまだに20~30万円していたであろう。
消費者にとって、どちらが良かったかは、なんともいえない。
5月1日ののブログ、「フィレンツェで、ささやかな大発見」のとき書きました、
洗礼堂のドアのコンクールで、競いあった案です。
左がブルネレスキの落選案、右がギベルティの当選案。
テーマは、「アブラハムの犠牲」、旧約聖書からです。
神が、アブラハムの信仰心を試し、息子イサクを犠牲にと命じますが、
それに従うアブラハムの信仰に感じた神が、
天使を遣わしてイサクを救う場面です。
この、コンペに敗れたブルネレスキは、建築の道を歩み、
やがて、傑作:花のドオモを完成させます。
彼の案が当選していたら、ドアの制作に生涯をかけ、
この美しい教会は、別の形になっていたことでしょう。
フィレンツェ市民にとっては、どちらが良かったのでしょうか?
カトリックの総本山、サンピエトロ寺院。
数多くの建築家が任命されましたが、
有名なのは、ラファエロとミケランジェロ。
当初は年若いラファエロに設計が委託されました。
ラファエロが37歳で亡くなり、変節を経て、
ミケランジェロが引き継ぎます。
ミケランジェロが最初にしたことは、
それまでの工事を取り壊し、新たに作りあげること。
ラファエロが長生きしていたら、この傑作も、
また別の形になっていたことでしょう。
この二人は、直接争ったわけではありませんが、
建築家にとっては、
長く生きるのも、勝負の分かれ道になりました。
当事者にとって、コンペティーションは大変つらい試練でしょうが、
多くの傑作を生みだしたことも事実です。
ささやかな規模ですが、住宅のコンペの締め切りが、あと1週間。
ついつい、こんなことを書いてしまいました。
mic