高梨 尚之, 大本山永平寺
永平寺の精進料理 七六〇年受け継がれた健康の智慧を家庭でいただく

作る心、いただく心。

ちょっと大判の本で、オールカラー、写真がたっぷり掲載されたこの本は、

はじめの3分の1が、永平寺での修行の様子や、
精進料理を伝えたという、道元禅師の『典座教訓(てんぞきょうくん)』を引用しながらの、調理の精神、いただく側の感謝の念などが、

読みやすく、わかりやすく掲載されています。

残りの3分の2は、レシピ集。

ご飯・おかゆ、汁物、煮物、和え物、
蒸し物・焼き物・寄せ物、炒め物・揚げ物、
残り物を利用した料理や、だしのとり方など、

どれもおいしそうで、品が良いお料理のレシピがたくさん載っています。

もちろん、精進料理なので、肉や魚などは食材として使われないのですが、

アボカドとトマトのごまわさび和え、とか
豆腐とレンコンの精進バーグ、
なすのソテーごまクリームソースかけ、精進麻婆豆腐など、

精進料理のイメージとはちょっと違う、
洋食っぽいメニューもあって、

私はちょっとビックリしました。

そして、思わず「はぁ~」と感心してしまったのは、

作る側の心もすごいのですが、
(これは、真似できない・・・と思ってしまいました)

いただく側の心。

どれほど多くの手間がかけられ、その食材が収穫されたのか、
作ってくれた人は、どれほど多くの手間と労力をかけてくれたのか、

それを思えば、自然とそのありがたさから、
頭が下がり、敬虔な気持ちで手を合わせたくなる・・・。

現代人には、欠けているものばかりで、
心を落ち着かせて、大切に作って、大切に食べたい、と思わせてくれた良書です。

下手な和食のレシピ本を見るより、
この本1冊で、すべては十分だと思います。