知的障害者が受給する障害基礎年金で、継続して就労できていることなどを背景に、不支給や支給停止、減額とされる例が相次いでいることが分かった。旧社会保険事務局が「障害が軽くなった」と判断したためだが、関係者からは「知的障害者の就労は、本人や周囲の大変な努力で成り立つことが多く、障害が軽くなったわけではない。就労継続を理由に年金を認めないなら自立を遠ざける」と批判の声が出ている。

 兵庫県宝塚市の小原冷子さん(58)の長男(32)は、重い知的障害を抱えながらもアルバイトを続け、現在は牛乳店で働く。20歳から障害基礎年金1級を受給してきたが、07年11月、2級に減額された。通知書に「障害の程度が変わったため」とあり、社保事務所からは「仕事が3年続いているから」と言われた。職場の同僚の支えが必要な状態に変わりはないが、不服申し立ては退けられた。

 このため小原さんや仲間の親が調べると、兵庫県内だけで06~08年、障害が軽度になったとして障害基礎年金を6人が停止、7人が減額されていた。就職したり、就労後数年たった人が多かった。

 働く知的障害者が暮らす滋賀県甲賀市の通勤寮(07年閉鎖)では03~05年度、従来なら支給を認められていた程度の寮生5人の支給が認められなかった。だが、支給を求めて寮生以外の1人とともに大津地裁に提訴した後の07~08年、6人中5人が再申請すると、一転して認められた。訴訟で国側は「(1度目と2度目の申請の間に)日常生活能力が低下した」と主張したが、先月19日の判決は全員の当初の不支給決定を取り消した。国側は控訴しなかった。

 社保庁は昨年7月、社保事務局に「就労で一律に障害年金が支給されなくならないよう総合的判断が求められる」と通知した。しかし、小原さんは昨年末にも、自宅から作業所などに通う知的障害者2人の家族から、支給停止や減額をされたとの相談を受けた。通知した当時の担当者と厚労省年金局は「個々の認定の是非に言及したわけでない」と説明する。

 知的障害者や家族で作る「全日本手をつなぐ育成会」の大久保常明常務理事は「あいまいで検証できない認定の仕組みを見直すべきだ」と話す。【野倉恵】

 【ことば】障害基礎年金

 最重度の1級から3級に分かれ、等級は日本年金機構(旧社会保険庁)の認定医が判定する。1、2級しか受け取れず、3級と判定されると支給停止になる。支給額は1級が月額約8万3000円、2級が約6万6000円。身体障害については、1級は「両眼の矯正視力の合計が0.04以下」などと具体的基準が示されているが、知的障害を含む精神障害については「身体機能の障害と同程度以上と認められる程度のもの」とされ、「認定側の主観で大きく結論が変わる」との批判もある。

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