<聖アンナと聖母子、幼児の洗礼者ヨハネ>(バーリントン・ハウス・カルトン)1499年
紙にチョークと鉛白 139.5×101cm London National Gallery


ルイ十二世は、サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ聖堂にあった<最後の晩餐>や、<岩窟の聖母>から深い感銘を受けており、そのため1499年10月、レオナルドに聖アンナ、聖マリア、キリストと幼児の洗礼者ヨハネをモテイィーフとして大画面の作品を注文したと推測される。
ルイ十二世はこれを妻アンヌ・ドゥ・ブルターニュへの贈り物として注文したようだが、結局これは完成しなかった。

それでも全体図が描かれた絵画の原寸大の下絵は残存しており、「バーリントン・ハウス・カルトン」と呼ばれている。
人物達は岩で取り囲まれた風景の中におり、マリアは母アンナの片膝の上に座っている。幼児キリストは、祝福のポーズを取りながら、右横にいる幼児ヨハネに体を向けており、今にもマリアの手から滑り落ちそうである。

画面の上半分に描かれた各人物像の輪郭はすでに完成しているが、2人の女性の足と天を指す聖アンナの左手は完成していないようだ。
だが、顔は陰影と鉛白で完璧に肉付けされており、ここからすでに完成作品の風格が伝わってくる。


ルイ十二世の依頼に基づいて描かれたこの絵は、レオナルドが1499年12月にミラノを出立したときから始まった遍歴生活の犠牲になったようだ。