さて、これまた久々の書評。
今回読んだ本は、こちらです。
国際会計基準戦争 完結編/磯山 友幸
¥1,890
Amazon.co.jp
タイトルを見るといかにも分厚そうな内容ですが、意外と読みやすく平易に解説されていました。
ただ、それは裏を返すと、ちょっと内容が薄いと言えるかも知れません。
また、前著「国際会計基準戦争」は1990年代から2000年代初頭までのコンバージェンス(収斂)の舞台裏を描いたものですが、本書にもこの内容の要約が盛り込まれていますので、「完結編」があれば特に別途購入する必要はないでしょう。
しかしそれでも、国際会計基準をめぐる財界vs会計士業界vs官僚という構図は、非常にわかりやすく描かれています。
バブル崩壊から現在に至る会計基準の国際化の潮流とそれを巡る国内の動きは、まさに幕末と重なります。
財界も会計士業界も、
「経済のグローバル化にともない、会計の国際化も必然。このままでは日本は会計基準へのイニシアチブを失う」
と危機感を募らせるサイドと
「会計など所詮モノサシ。実体が「主」で会計基準は「従」なのに、なぜ会計基準をとやかく言わなければないのか?」
と反感をあらわにするサイドに別れます。
一方、国内でのエリート意識にどっぷりと浸かっている大蔵官僚は、会計の重要性を理解する気もなければ、民間組織に会計基準の決定を委ねる気もなく…
こうした姿勢が日本の迷走を招くのですが、それでも日本の監査法人が力を結集して、ビッグ4に対抗しうる国際会計事務所を目指していたのは、驚きでした。
そして興味深いのは、日本と対照的に欧米や中国は会計を明確な「戦略」として位置づけている事です。
特に中国はいち早く国際会計基準を導入するだけでなく、国内の会計士の育成にも力を入れ、日本が頓挫した中国発の国際会計事務所の成立をも目指しています。
国際会計基準審議会(IASB)に理事を送る事も目指しており、僕はそこに何十年も先を見越した中国の国家戦略を垣間みた気がしました。
3年前に法人のサマースクールで北京に行った時の、会計学の先生(もちろん中国人)が講義で以下のように話していた事と、非常に一致します。
「中国が国際会計基準の導入に踏み切ったのは、貿易摩擦の回避が目的でもあります。中国企業が国際的なルールの下で国外の証券市場に上場したり国外の市場で活動しやすくする事で、中国自身の貿易黒字が膨らみ過ぎないようにするためです」
確かに当時(今もですが)の感覚で言えば「中国企業の海外進出を支援? はぁ? 笑わせんな」と捉える人も少なくないかもしれません。
しかし、三菱やホンダやパナソニックだって初めは無名だったわけですから、半世紀後はどうなっているかわかりません。
企業活動を野球に例えるなら、会計基準は野球のルールと言えます。
どんなに身体能力が高くても、このルールが理解できなければプロの選手として通用しません。
会計基準の国際化を無視した日本企業は、ある意味バットを振ってから三塁側に走るイチローやボークというものを知らない松坂みたいなものと言えるかも知れません。
確かに、時価を過度に重視する国際会計基準や、J-Soxなど必要以上に企業に負担を強いる直近の会計制度に、全く問題がないわけではありません。
しかし、それ以上に問題なのは、会計の重要性を認識しないまま会計そのものに対するイニシアチブを失いかけている現実です。
メートル法のように、「モノサシ」の基準値だからこそ、会計を握ることの意義は大きい。
それに気づかされる一冊です。
ブログランキング、ありがとうございますm(___)m
(まだ未公認ですが、温かく見守ってやってください)
今回読んだ本は、こちらです。
国際会計基準戦争 完結編/磯山 友幸
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タイトルを見るといかにも分厚そうな内容ですが、意外と読みやすく平易に解説されていました。
ただ、それは裏を返すと、ちょっと内容が薄いと言えるかも知れません。
また、前著「国際会計基準戦争」は1990年代から2000年代初頭までのコンバージェンス(収斂)の舞台裏を描いたものですが、本書にもこの内容の要約が盛り込まれていますので、「完結編」があれば特に別途購入する必要はないでしょう。
しかしそれでも、国際会計基準をめぐる財界vs会計士業界vs官僚という構図は、非常にわかりやすく描かれています。
バブル崩壊から現在に至る会計基準の国際化の潮流とそれを巡る国内の動きは、まさに幕末と重なります。
財界も会計士業界も、
「経済のグローバル化にともない、会計の国際化も必然。このままでは日本は会計基準へのイニシアチブを失う」
と危機感を募らせるサイドと
「会計など所詮モノサシ。実体が「主」で会計基準は「従」なのに、なぜ会計基準をとやかく言わなければないのか?」
と反感をあらわにするサイドに別れます。
一方、国内でのエリート意識にどっぷりと浸かっている大蔵官僚は、会計の重要性を理解する気もなければ、民間組織に会計基準の決定を委ねる気もなく…
こうした姿勢が日本の迷走を招くのですが、それでも日本の監査法人が力を結集して、ビッグ4に対抗しうる国際会計事務所を目指していたのは、驚きでした。
そして興味深いのは、日本と対照的に欧米や中国は会計を明確な「戦略」として位置づけている事です。
特に中国はいち早く国際会計基準を導入するだけでなく、国内の会計士の育成にも力を入れ、日本が頓挫した中国発の国際会計事務所の成立をも目指しています。
国際会計基準審議会(IASB)に理事を送る事も目指しており、僕はそこに何十年も先を見越した中国の国家戦略を垣間みた気がしました。
3年前に法人のサマースクールで北京に行った時の、会計学の先生(もちろん中国人)が講義で以下のように話していた事と、非常に一致します。
「中国が国際会計基準の導入に踏み切ったのは、貿易摩擦の回避が目的でもあります。中国企業が国際的なルールの下で国外の証券市場に上場したり国外の市場で活動しやすくする事で、中国自身の貿易黒字が膨らみ過ぎないようにするためです」
確かに当時(今もですが)の感覚で言えば「中国企業の海外進出を支援? はぁ? 笑わせんな」と捉える人も少なくないかもしれません。
しかし、三菱やホンダやパナソニックだって初めは無名だったわけですから、半世紀後はどうなっているかわかりません。
企業活動を野球に例えるなら、会計基準は野球のルールと言えます。
どんなに身体能力が高くても、このルールが理解できなければプロの選手として通用しません。
会計基準の国際化を無視した日本企業は、ある意味バットを振ってから三塁側に走るイチローやボークというものを知らない松坂みたいなものと言えるかも知れません。
確かに、時価を過度に重視する国際会計基準や、J-Soxなど必要以上に企業に負担を強いる直近の会計制度に、全く問題がないわけではありません。
しかし、それ以上に問題なのは、会計の重要性を認識しないまま会計そのものに対するイニシアチブを失いかけている現実です。
メートル法のように、「モノサシ」の基準値だからこそ、会計を握ることの意義は大きい。
それに気づかされる一冊です。
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(まだ未公認ですが、温かく見守ってやってください)