2018年1月記事への補筆再掲

米ウェストミンスター WL5118

タルティーニ 提琴協奏曲ニ短調、提琴奏鳴曲ホ短調、ホ長調

ペーター・リバール(提琴)

クレメンス・ダヒンデン指揮 ウィンテルトゥール交響樂團

フランツ・ホレチェク(ハープシコード)

(1952年 初出)

リバールでもっとも知られた盤はヴィオッティ協奏曲22番 WL50-49 であらう。

「ヴィオッティの、憂ひをふくんだ曲の甘美さの魅力」もあり、「弦樂ファンのアイドルとなつた」との記述がある。

 

リバールはスイスのウィンテルトゥール樂團、また同弦樂四重奏團で主將をつとめ後年スイスロマンドからまねかれた。四重奏團の記録としては、ハスキルと組んだブラームス洋琴五重奏曲のコンサートホール盤(CHC46)が名盤として名高い。

 

この盤、WL5118 ・・・ 弦の質感、ハープシコードの靜かなかがやき、樂團低域部の恣意的でないやはらかなひろがり・・・これぞウェストミンスター初期盤。 すばらしい音質だ。 

 

演奏は幾分硬質な音色ではある。けれども丁寧に丁寧に糸をつむぐやうな、そしてあたたかい血がかよふもので、孤高といふよりもどこまでも音樂をいつくしむがごときアプローチが聽く者のこころにしみいる。 ホ長調奏鳴曲では「息吹、生命力」が印象的だ。 決してみづからを熱く主張する演奏でない。「平常心」も深みのみなもとであることを知らせる一枚。

 

三曲をいれたこの盤はリバールの音色もふくめた藝風と曲趣とに幸福な一致があり魅惑的名品となつた。

 

やはりこの歌唱だと思ふ。

ほかのだれかとくらべるのは無意味。

 

 

2019年の三月にこのLPレコードについて書いたが、このたびひさしぶりに聽き、あらためて讚意をしめし、また前記事へのおぎなひの意も込め・・・。

米レミントン R-199-146

パガニーニ 奇想曲 作品1-1~12

米レミントン R-199-152

パガニーニ 奇想曲 作品1-13~24

 

オッシ・レナルディ(提琴)

ユージン・エルマー(洋琴)

(1953年初出)

 

レナルディは1953年12月に若くして亡くなつてゐる。 初出を1953年としたのはジャケット裏面の記載によつたし、他のおほくも1953年と書いてゐる。 が、この二枚、レナルディの死後に出た、との記述もあることから、1954年である可能性も否定できない。また、録音時期も特定できるものを見いだせない。 1953年、この人最後の録音かもしれない。・・・わからない。

 

米ロンドンの第1號盤 LLP1 はこの人のブラームス協奏曲である(ミュンシュ指揮)。

 

この米レミントンの二枚、音質は上上。抜けがよいし質感も大變よく出てゐる。これもCDでは出ない音だ。演奏はジノ・フランチェスカッティほどの「パガニーニ臭」は感ぜられないが、たしかな技術は評價されてよい。線は細いがそのぶんきめのこまかさは特筆されるべきだ。

 

岡 俊雄さん述

(レナルディは)『第二次大戰がはじまり渡米し、アメリカの市民權を得てゐた。その頃米コロムビアにサラサーテの《ロマンス・アンダルーサ》と《サバティアード》の二曲を入れたのが彼のレコーディング・デヒューだが、SP末期の英デッカにミュンシュ/コンセルトヘボウとブラームスの《ヴァイオリン協奏曲》(AK2065-9)を入れた。これは米ロンドンのLP第一号(LLP1、英デッカのLPはLXT2566)におかれた曰くつきの録音でもあるのだが非常に整つたいい演奏だつた。レコードがあまりないうちに若死してしまつたけれど、彼の死後、米レミントンから出たパガニーニの《奇想曲》(199=146-152)はダヴィッド編のピアノ伴奏によつためずらしいものだつた。いつ頃の録音か不明だし、ついに聽くチャンスはなかつたが、非常な好演だつたといふ。

 

この録音へのわたしの讚意としても、岡さんの言辭を添へたい。

 

今、CDでも入手できるやうだ。ただ上述のとほり提琴の音の質感の再現が不十分であれば、「レナルディを感得することは六つかしい」と思ふ。 まあ、この録音に限つたことでないが。