NHK「週間ニュース深読み」あなたの不安なくせますか?~食品の放射性物質に新基準~ | 男も女もすなる日記といふものを、オカマもしてみむとてするなり

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現在は原発事故に関連した記事が多いですが、どの記事にも自分なりの物の見方・考え方を書くようにしています。

  4月7日の週間ニュース深読みで、食品中の放射性物質新基準が取り上げられた。
 概要はサイトを参照していただくとして、何点か指摘したい。

 第一に、ICRPが(ICRPでさえ)放射線防護に関し直線しきい値なしモデルを採用し、100mSv以下の低線量被ばくであっても放射線量に応じた発ガンリスクがあるものとして「考える」ということ、その割合が100mSvで0.5パーセントであること、基本的に日本国も同様の立場に立ち、首相官邸ホームページでもその旨説明されていること、を明示していない

 私が知る限りテレビ報道で直線しきい値なしモデルやその割合に言及しているのは、NHK「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」のみである。

 第二に、新基準の下でも経過措置があるものがあるとまったく触れられていない

 第三に、厚労省発表の検査件数と、まさにNHKのブログで指摘されているベラルーシでの年間1100万件の検査件数の比較にまったく触れていない

 第四に、「安全と安心」の問題である。
 番組で「専門家」の立場からいろいろしゃべった唐木氏は、サイトではその一部しか記載されていないが番組中では安全と安心に関し次のように述べていた。
・安全と安心を分けて考える
・安全はデータが大事
・我々がどれだけの内部被ばくを受けたかのデータが大事
問題になるような内部被ばくは一切受けてない
・よって暫定基準値(暫定規制値)でも安全は守られていた
・心配だ心配だと言うから安心のために基準を下げた
・各企業はもっと下げようとしているが、これは安全とは関係のない売り上げの話
・子どもも大丈夫な一番厳しい基準と言える国の基準を信じていただくのが一番いい

 まったくふざけた「専門家」である。こんなジイサンが学長できるんだから、日本の大学は相当レベルが低い。

 確かに内部被ばくのデータは重要ではある。
 しかし
①問題になるような内部被ばくとはどの程度か説明がない。
どのような低線量被ばくでもリスクは「あると考えて」放射線防護をするのがICRPを始めとする世界的な共通認識であり、我が国もその立場に立つ。「問題になるような内部被ばくはなかった」という言明が「この程度の内部被ばくであれば、一切健康被害はない」と断言できるかどうかが問題なのだ。そしてそのような断言は100mSv以下しきい値なし説に立たない限り言えないし、それは国の立場とも異なる少数説である。
 
 安全の問題で言えば、どのような低線量であっても人体に影響を与える。
放射線がDNAを破壊する
自己修復機能がある
常に正常な自己修復がなされるとは限らない
 この三点は、マトモな科学者であれば原発推進であろうが反対であろうが認める科学的事実である。
 といういうことは「問題がない」と主張する者が100パーセントかそれに近い精度で正常に自己修復がなされると証明するべきなのだ。

 この問題は是非理解してほしい。よく「低線量被ばくに関しては確立されたものがない」と発言する者がいるが、それは間違いだ。上記の①②③は確立している。学問論争であればどの程度自己修復されているのか、自己修復しない箇所がどういう影響を生ずるのかを思う存分議論してもらえばいい。
 しかし我々シロウトは学問論争の最先端に踏み込む能力、時間がないし、その必要もない。①②③が確立された科学的事実だと認識した上で、「なるほど。破壊はされるが自己修復機能はある。そうは言っても必ず正常に自己修復できるとは限らないのか。私は日々生きていかなきゃならないから、大切な人を守りたいから、常に正常に自己修復できるとは限らないという現在の科学的知見に基づいて自己防衛をします」で全く構わないし、当然の選択だ。

 付言すれば「心配だ心配だと言うから安心のために基準を下げた」は虚偽である。ICRPは健康リスク、社会的要素、経済的要素を考慮するよう勧告しているし、原発事故直後の状況とそれ以後の状況などでも異なる基準を提唱しているからである。