好きな人に対して、

不安なことがあって、すごく不安になっていた。


どうして?

なんで?


そう思う小さなきっかけがあり、

今度会ったら、ちゃんとお話をしようと思っていた。


昔の恋愛で学んだこと。


それは、


思ったことをすぐにすべて言葉にしない。


突き詰めない。


相手のために、

逃げ道は作っておく。


オトコの人は、プライドが高く、非常に繊細。


小さな気づきが、その後の大きな展開に繋がる。


それらが、大きく学んだことである。


好きな人と会った時に、

思ったことは、すべて言葉にしなかった。


苦しい時、人生の底で、

私が、自身の血と涙とを

引き換えに学んだことを活かした。


相手の言葉を自然に引き出せるように、

言葉を選んだ。


引き出した言葉が、

本当なのかどうか、

私のことを本当に思っているのかどうか。


本当のことは、

私には分らない。


しかし、私には、彼が言ったことを、

本当だと信じることは出来る。


本当は。


私には、

信じること『しか』出来ない。



目覚めて、次の日。


眠っている間の私は、

好きな人の背中に

自分の丸めた手の甲を

つけて眠っていた。


手の甲から伝わってくる

かすかな温かさに救われていた。


本当は、しがみついて眠ったり、

手をつないで眠っていたい。


でも、忙しい人に貴重な睡眠時間を

邪魔してはいけないと思う。


だから、自分のカラダの一部を

少しだけひっつけて。


私は眠る。


朝。


会議があるから、会社に早く行くという彼の

朝の準備をしている姿を

私はベッドで寝っころがって、

目を閉じたり、開けたりしながら、

逐一見ていた。


彼は、準備が整うのと

速度を同じくして、

少しずつ企業人になっていく。


私が初めて会った時も、

こんな顔をしていたのだろうか。


もう、思い出せない。


ふとした瞬間。


彼は、朝の支度を止めて、

私の寝ているベッドに座った。


ベッドに座って、朝のワイドショーを見ている彼に

私は、彼の足を触ったり、お腹を触ったり、

眠っている時に感じていた背中の温度とは、

反対側の温度を感じていた。


いちゃいちゃして、

お互いのカラダの温かさを確かめた。


昨日、確かめた温度よりも、

温度が上がっている気がした。


この温かさが私のすべて。


そして、今の私には、これしかない。


好きな人は、私と別れる時に、

キスをしてくれる。


別れ際。


少しだけ、会えない日が続くことが

分っていたので、私は、少し名残惜しそうなことを

言い、「ちゅ~」と悲しい顔で言った。


すると、

好きな人は、おも~いキスをしてくれた。


そして、抱きしめても欲しかったので、

その旨も伝えた。


すると、強く、強く、

痛いぐらいに抱きしめてくれた。


そして、

真っ直ぐに私の目を見て、

好きな人は、「じゃあ、行って来ます」、

そう言って、ドアを閉めて行った。


「気をつけて、行ってらっしゃい」と、

ままごとみたいな言葉を掛けて、

私は、閉まってしまったドアの前に立っていた。


私は、再びベッドに寝ころんだ。


まだ、ベッドは温かい。


好きな人がいた証が、

そこにはあった。