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 ICUに入院し機械的換気を受けている患者に対し、患者が好きなときにヘッドフォンを使って心休まる音楽を聴けるようにすると、鎮静薬の使用量が減少することが、ランダム化比較試験(RCT)の結果として示された。米Minnesota大学のLinda L. Chlan氏らが、JAMA誌電子版に2013年5月20日に報告した。

 ICUで機械的換気を受けている患者の不安を減じ、人工呼吸器との同調性を高めるために鎮静薬の投与が行われている。しかし、高用量の鎮静薬が持続的に行われる場合には、徐脈、低血圧、せん妄のような有害事象の発生が懸念される。また、ガイドラインに沿った鎮静を行っても患者の不安が減らないことがある。強い不安が続くと、神経系の興奮が増して呼吸困難となったり、心筋の酸素消費量が増大して心筋虚血リスクが上がる危険性がある。

 これまで、ICUに入院し機械的換気を受けている患者の不安に対する音楽の影響を評価した研究はなかった。著者らは、患者自身が聴きたいときに聴くことができる患者指向性の音楽(Patient-Directed Music; PDM)が、機械的換気期間中の不安の低減と鎮静薬の使用量を減らすために役立つかどうかを調べるRCTを実施した。

 RCTでは、MinneapolisとSt. Paulにおける5つの病院の12のICUで、06年9月から11年3月まで、急性呼吸不全を呈して機械的換気を受けている373人の患者を登録した。86%が白人で52%が女性、平均年齢は59歳で、重症度を示すAPACHE IIIスコアの平均値は63だった。

 これらの患者を自発的なPDMの聴取(PDM群、126人)と、雑音を打ち消す機能を持つノイズキャンセリングヘッドフォンを提供し、ICUのノイズを遮断したいときに自分で装着(NCH群、122人)、鎮静薬の処方を担当医の判断に任せる通常のケア(通常ケア群、125人)に割り付けた。

 PMD群に割り付けられた患者には、気分をゆったりとさせる音楽をピアノ、ハープ、ギター、インディアンフルートで演奏している6枚のCDからなるスターターセットを患者に示して、CD/MP3プレイヤーとヘッドフォンの使用法を説明し、いつでも音楽を聞くことができるよう、患者の手が届く位置にそれらを保管した。割り付けから24時間以内に音楽セラピストがイエス・ノー方式の調査票を用いて患者の好みを聞き取り、個々の患者のために選曲を行った。患者には、不安を感じたら、または、リラックスしたいときに、1日に2回以上音楽を聴くように指示した。ヘッドフォンにデータロガーを取り付けて、患者の使用状況を記録した。

 主要転帰評価指標は、毎日の不安レベル(100mmVASを用いて評価)と、鎮静薬曝露の強度と頻度とした。

 鎮静薬曝露は、ICUで用いられている8剤(ミダゾラム、ロラゼパム、プロポフォール、デクスメデトミジン、モルヒネ、フェンタニル、ヒドロモルフィン、ハロペリドール)の投与状況に基づいてスコア化した。

 1日の鎮静強度スコアは、8種類の薬剤のそれぞれについて各回の投与量を体重調整し、試験期間全体の1回量に基づいて四分位数を求めて、各投与時の用量が第1から第4のどの四分位群に属するかを調べ、薬剤の種類にかかわらずそのままスコアとし、毎日のスコアを求めた。例えば、午後4時に第2四分位群に属する用量のロラゼパムと第3四分位群に属する用量のフェンタニルを投与されていれば、午後4時の鎮静強度スコアは2+3=5となる。鎮静頻度スコアは、1日を4時間のブロック6つに分けて、それぞれのブロックにおける8剤の投与の有無から、投与ありブロックの数を集計し1日のスコアとした。

日経メディカルより抜粋

 風疹の流行が止まらない。感染拡大を食い止めようと首都圏の自治体を中心に予防接種費用を補助する動きが広まっている。しかし、自治体によって対応が異なり、流行を抑える効果までは期待できそうにない。自治体からは国の助成を求める声も上がっている。(平沢裕子)

 ◆妊婦と夫が対象

 国立感染症研究所によると、今年の風疹患者数は8日までで5964人と既に昨年1年間の2・5倍。約9割が成人で、20~40代男性が全体の約7割を占める。

 成人男性が多いのは、子供の頃に風疹の予防接種を受けておらず、風疹の免疫を持たないまま大人になった人が多いためだ。

 風疹の流行が問題なのは、免疫を十分に持たない妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんに白内障や難聴、心疾患、発育不全など「先天性風疹症候群(CRS)」と呼ばれる障害が生ずる可能性があるためだ。例年は年間0~1人のCRSの赤ちゃんが、昨年は5人。今年も4月21日までに5人確認されている。

 妊娠してからは予防接種を受けられない。妊婦への感染を防ぐためにも免疫のない人に予防接種をしてもらい、感染拡大を抑えることが大切だ。

 東京都は3月から、妊娠を望む19歳以上の女性と妊婦の夫を対象に、区市町村負担分の半額の補助を開始した。

 補助の目的は「CRSの子供が生まれないようにするため」(感染症対策課)で、想定人数は約3万人(約1億5千万円)。

 都内62のうち61市区町村が助成を実施。千代田区は対象者を20~40代の区民全員と都の条件より広げ、費用も全額補助とした。約800人を想定していたが、今月中旬までに1200人が申し込んだ。

 担当者は「区民の関心が予想以上に高かった。都の対象から外れる分は、区の負担となり、財政的に厳しいのも事実」と打ち明ける。

 ◆国は助成せず

 一方、4月から助成実施の川崎市の場合、妊娠を望む23歳以上の女性▽23~39歳の男性▽妊娠中の女性の夫-が対象。自己負担2千円で、対象者の約30%が利用した場合、市の負担は3億7千万円になるという。市健康安全研究所の岡部信彦所長は「CRSの赤ちゃんが生まれるのを防ぐには、風疹の流行そのものを抑える必要がある。予算的には厳しいが、市民の健康のために市当局が理解してくれた」。

 風疹の流行は全国的な問題だけに、自治体からは国に財政措置を求める声が上がっている。しかし、厚生労働省は「風疹感染者は東京など6都府県で85%と地域的な流行だ。他にも予防接種が必要な病気があり、財政的に難しい」とし、助成は行わない方針だ。

 日本赤十字社医療センター元小児科部長の薗部友良医師は「今後の流行を抑えるためにも、本来は臨時接種という国の予算でワクチン接種を実施するのが望ましい。また、今回の流行では成人男性2人が脳炎になっている。妊婦への感染を防ぎ、赤ちゃんがCRSにならないのはもちろん、自分の健康のために、特に成人男性は受けるようにしてほしい」と話している。

 ◆成人の接種も小児科医に相談を

 風疹のワクチンには、風疹だけを予防する「単独ワクチン」と、風疹と麻疹の両方を予防する「混合(MR)ワクチン」の2種類がある。費用は医療機関によって異なり、単独が4000~8000円、MRが7000~1万2000円。単独の方が安いが、生産量が少なくMRだけしかない医療機関もある。予防接種を行っているクリニックなら診療科にかかわらず接種が可能。最も詳しいのは小児科で、成人が接種する場合でも小児科医に相談するといい。

産経新聞より抜粋

看護師が「診療の補助」の範囲で行える高度な医行為である「特定行為」の選定作業が大詰めを迎えている。厚生労働省は45項目の医行為を選び、一定の研修を受けた看護師に実施を認める方針だ。


 厚労省は2012年12月6日、「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」(座長:昭和大病院長の有賀徹氏、以下WG)で、看護師が行う高度な医行為47項目を「特定行為」として定める案を提示、委員から大筋で了承された(表1、後日45項目に再整理された)。

表1 主な「特定行為」の項目(案)(2012年12月20日付の厚労省資料を編集部で再編)

 看護師が行う現在の医行為の中には、保健師助産師看護師法で定める「診療の補助」の範囲かどうか不明確なものがある。WGではこうした“グレーゾーン”の医行為を明らかにし、技術や判断の難易度が高い医行為を「特定行為」に選定。一定の教育や経験を持つ看護師が能力認証を受けた場合に実施可能とするべく、制度化作業を進めている。なお、特定行為を行う看護師は当初、「特定看護師」と称されていたが、業務独占の誤解を生むことから、現在は「看護師特定能力認証制度」の創設に議論の内容が改められている。

 WGではこれまで、10年に行った看護業務実態調査で取り上げた203項目の医行為を、行為と判断の難易度から、A(医師が実施する絶対的医行為)、B(特定行為)、C(一般の医行為)などに分類する作業を進めてきた。Bには、シミュレーション教育や実習を経て実施する必要がある医行為や、複合的な要素を勘案して医師の指示内容を判断する必要がある医行為などが含まれる。

「病態確認が必要な行為」と規定
 さらに厚労省は昨年12月6日のWGで、特定行為を「看護師が患者の病態の確認を行った上で実施する行為」とする考えを示し、B分類に該当する94項目のうち47項目を特定行為(案)として提示した。一般の看護師や他職種が行う行為が制限されないよう絞り込んだ格好だ。

 特定行為は、事前に作成するプロトコルに基づき、厚労省の指定研修を修了した看護師が医師の「包括的指示」を受けて実施することとなる。指定研修について厚労省は、単位制とした上で、救急や在宅など分野ごとに必要な特定行為を選んで習得する仕組みを想定している。座学と実習で構成し、業務に支障を来さないよう実習は勤務先の医療機関での実施を認める方針だ。研修の具体的内容は今後詰める。

 ただし同省は、指定研修を受けていない看護師であっても、院内研修を経て医師から「具体的指示」を受けた場合には特定行為を実施できるとしている。両者の線引きは難しく、現場が混乱しないような制度設計が求められる。

日経メディカル2013年1月号「行政ウォッチ」(転載)


抗うつ薬抵抗性のうつ病患者に認知行動療法CBT)を併用すると、通常の薬物療法を続けた場合に比べて症状の有意な改善が望めることが、無作為化試験で示された。英Bristol大学のNicola Wiles氏らが、Lancet誌電子版に2012年12月7日に報告した。

 うつ病患者のうち、抗うつ薬に十分な反応を示すのは約3分の1に過ぎない。にもかかわらず、抗うつ薬抵抗性の患者に行うべき最善の治療を示したエビデンスはほとんどない。

 CBTについては、治療歴のないうつ病患者に対する効果はよく知られているが、抗うつ薬抵抗性の患者を登録し、通常のケアにCBTを併用した場合の有効性を調べた大規模な無作為化試験はこれまで行われていなかった。

 そこで著者らは、プライマリケアを受診した治療抵抗性うつ病患者を登録し、薬物療法を含む通常のケアにCBTを加えた場合と、通常のケアのみを行った場合の効果を比較する、多施設無作為化試験CoBalTを実施した。

 08年11月4日から10年9月30日までの期間に、英国内の73カ所の一般開業医の診療所で、18~75歳の治療抵抗性うつ病患者469人を登録した。治療抵抗性うつ病患者の定義は、抗うつ薬を6週間以上投与してもBeckのうつ病調査票(BDI-II)スコアが14以上で、国際疾病分類第10版(ICD-10)でうつ病エピソードに分類される人々とした。

 469人の平均年齢は49.6歳で、72%が女性、ベースラインのBDIスコアの平均は31.8だった。全体の28%の患者が重症のうつ病エピソードに分類された。

 これらの患者を無作為に、通常のケア(235人)、または、CBT+通常のケア(234人)に割り付け、12カ月間追跡した。介入の特性から、盲検化はできなかった。

 通常のケアは、ベースラインで使用していた薬剤を原則としてそのまま継続使用することとし、あとは担当医の判断に任せた。

 CBT群にはうつ病のための50~60分の個人セッションを12回行い、必要に応じて最高6回まで追加実施した。

 主要評価指標は、治療に対する反応性とし、具体的には、6カ月の時点でベースラインに比べにうつ症状(BDIスコア)が50%以上減少した患者の割合を比較した。分析はintention-to-treatで行った。

 登録患者全体の介入期間の平均は6.3カ月で、90%の患者について6カ月時点の評価が可能だった。当初6カ月間にCBT+通常ケア群には11回(中央値)のセッションが行われていた。6カ月時点で、両群ともに93%の患者が抗うつ薬を使用していた。

 6カ月時点で、BDIスコアがベースラインから50%以上減少していた患者の割合は、CBT+通常ケア群は95人(46%)、通常ケア群は46人(22%)で、調整オッズ比は3.26(95%信頼区間2.10-5.06、P<0.001)となった。

 2次評価指標に設定した6カ月時点のBDIスコア(CBT+通常ケア群で平均5.7ポイント良好、P<0.001)、BDIスコアが10未満になった寛解経験者の割合(CBT+通常ケア群28%、通常ケア群15%、P=0.001)、SF-12の精神的健康スコア(CBT+通常ケア群で平均5.8ポイント良好、P<0.001)などにおいても、両群の差は有意だった。

 サブグループ解析も行ったが、一貫してCBT追加の利益が認められた。

 得られた結果は、通常のケアにCBTを追加することにより、抗うつ薬抵抗性のうつ病患者に症状軽減をもたらせることを示した。

日経メディカルより抜粋
「包括的指示」で実施可能な看護師業務は限定的―厚労省NG

 医師と看護師の役割分担をめぐる議論が大詰めの段階に入った。厚生労働省は12月6日の会議で、特定の看護師が実施できる医療行為の範囲を狭め、一般の看護師が行える範囲を拡大するとともに、特定の看護師と他職種が競合する医療行為を外す案を示した。病院経営者や関係団体などの声に配慮した修正案だが、看護関係者から「看護師の裁量はどこに反映されるのか」との不満が出た。病院関係者からは「さらに絞り込む必要がある」などの注文が付いた。

 この会議は、「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」(座長=有賀徹・昭和大医学部救急医学講座教授)の第30回会合で、特定の看護師が実施できる医療行為をさらに絞り込む案を示した(資料は厚労省ホームページ)。前回会合までは、2010年夏に実施した看護業務実態調査で取り上げた203行為を、A(絶対的医行為)、B(特定行為)、C(一般の医行為)などに分類。Aは、医師の具体的な指示があってもできない行為で、Bは医師の「包括的指示」で特定の看護師ができる行為、Cは一般の看護師らも実施できる行為としていた。

 厚労省は今回、B分類の範囲を維持しながら、Bよりもさらに狭い範囲を新たに設定。90以上の行為のうち47行為がそれに該当するとし、この47行為を実施する看護師は、「指定研修を受けなければならない」とした。これにより、「B分類の行為」の一部が「指定研修義務のある行為」となったが、いずれを「特定行為」とするのかは、まだ議論が残っている。今回の会合では、「特定行為」の範囲をめぐって委員からさまざまな注文や不満の声が出たものの、研修義務を課す47行為は大筋で了承された。20日に開催予定の親会議(チーム医療推進会議)に報告する。

指定研修を義務付ける範囲を設定
 看護師の業務拡大をめぐっては、「対医師」「対他職種」との関係に絡む問題であるため、これまで長い議論が続いてきた。09年8月に設置された「チーム医療の推進に関する検討会」が約半年間の検討を重ねて報告書を取りまとめ、それを受けて10年5月に「チーム医療推進会議」が発足。その会議の下にこのワーキンググループが設置されてから約2年半、今回で30回を数える。有賀座長は6日の会議の冒頭、「30回まで来ると、回数を適当に言っても誰も分からないぐらいロングランになった」と笑みをこぼした。救急や外科の現場に携わる立場から、医師の業務負担を看護師が軽減する必要性を訴えてきた。

 現在の議論の主な争点は、医師のみが行うAとBとの関係よりも、B─C間の境界線。特定の看護師のみができる行為を広く規定してしまうと、一般の看護師が行っている行為が制限されてしまうとの声が出ている。また、薬剤師や放射線技師など専門性ある他職種の行為と競合するケースもある。さらに、「B分類の行為」を拡大して看護師を「ミニドクター化」していくことに対しては、療養の世話など「看護本来の専門性」を強調する看護関係者からの抵抗が激しい。こうした議論を踏まえ厚労省は今回、「B分類」の中にさらに狭い領域を設定し、取りまとめを急いでいる。

 現在、「B分類」の範囲を画する基準は「技術的な難易度または判断の難易度」となっている。厚労省は新たに、医師の「包括的指示」の成立要件である「患者の病態の確認を行う」などの「確認行為」を追加し、このような「確認行為」をなし得る看護師は、「指定研修を受けなければならない」とした。これにより、「包括的指示」で実施できる行為の範囲と、指定研修を義務付ける行為の範囲を整合させた。「B─C間」の境界線を維持しながら、特定の看護師ができる範囲を狭めて他職種との摩擦を回避するとともに、一般の看護師も実施できる範囲を拡大し、中小病院の経営者らの要望に応えた。

 具体的には、「看護師が行為を実施する上で、病態の確認行為があるもの」を47行為として、「看護師が行う病態の確認行為があるかなど検討を行う必要があるもの」は外した。さらに、「他職種が行為を実施するものについては、特定行為としない」としたほか、「C分類」に変更した行為や複数の項目を統合した行為も除外した。こうした絞り込みの結果、特定の看護師が実施できる行為として研修が義務付けられる47行為については、医師の「包括的指示」で実施可能とした。しかし、反発もある。

看護師の裁量は?
 「看護師の裁量はどこに反映されるのか? 『病態の確認』は単なるスクリーニングだけではないのか?」。東京医科歯科大大学院教授の井上智子氏が厚労省案にかみついた。厚労省の担当者は、「病態の確認をした上で、あらかじめ定められた『プロトコール』の範囲に合致しているかの確認をする点がポイントだ。この場合には医師の具体的指示を求めないので、看護師の裁量と言える」と答えたが、他の委員から「病態の確認は、看護師がいつもやっている行為ではないか」との声も出た。

 厚労省が示したフロー図では、医師の指示が出されてから特定行為などが行われるまでの流れが詳細に書かれている。大きな議論になったのは、「B分類の行為」のうち、「包括的指示」で特定の看護師のみができる流れと、「具体的指示」で一般の看護師が行う流れとの違い。「包括的指示」で行う流れには、「プロトコールに規定された病態の範囲にあるか」という確認と、「患者の病態がその範囲に合致しているか」の確認という「2つの確認行為」があるが、「具体的指示」の流れにはない。

 特定の看護師と一般看護師の業務範囲を分けるのは「2つの確認行為」だが、プロトコール自体は「医師をはじめとするチームで決める」(厚労省)ため、特定の看護師がその裁量を発揮する場面がないのではないか、というのが井上氏の疑問だ。これに対し、有賀座長は、「プロトコールをチームで決める中で看護師に活躍してもらう。医師にも看護師にも他の医療者にも裁量がある」と返した。星総合病院理事長の星北斗氏は、「特定行為の考え方を変えるセンセーショナルな資料だ」として、「B分類の行為」を一般の看護師にも解放する点を評価した。

医師の業務は軽減されるのか?
 「今回のフロー図を見せられた現場はものすごく混乱してしまう。医師が看護師に『やっておいてね』と言ってやってもらうのが『包括的指示』だと思っていた」。恵寿総合病院の理事長で全日本病院協会副会長の神野正博氏は、こう不満を漏らした。厚労省案によると、特定の看護師に「丸投げ」ではなく、医師との連絡を緊密にしながら業務を進めていくことが示されている。

 フロー図では、医師が指示を出してから看護師が業務を実施するまでの流れは一方通行ではなく、時折ループして医師に戻ってくる。有賀座長は、「行ったり来たりを繰り返す」と説明。厚労省の担当者は、「病態の確認をやりながら、医師との連携が随時行われるべき」と説明した。一般の看護師が「B分類の行為」を行う場合には、「医師が患者のベッドサイドに行って病態の確認を行う」(厚労省)としている。星氏が「指定研修を受けた看護師でも、具体的指示を受けて実施するのか」と質問したところ、厚労省の担当者は「そういう理解だ」と答えた。

 厚労省案では、「包括的指示」で実施する場合には、「必要に応じて、医師に再確認や提案を行う」としている一方、「具体的指示」で実施する場合には、「看護師が医師に随時報告を行いながら、具体的指示を求める」と記載されている。しかし、「包括的指示」で実施する場合でも、具体的指示を受けながら実施するという解釈を示したため、両者の違いをめぐって議論が一時錯綜した。

 「もう少しシンプルにできないか」「法律の文面に表しにくいのではないか」などの意見が相次ぐ中、東大大学院法学政治学研究科教授の山本隆司氏は、「プロトコールに基づいて行うということと、指定研修を受ける必要があるということを書けばいいので、制度化する場合は複雑にならない」と述べた。

一般の看護師の業務が増える?
 厚労省の提案に対し星氏は、「もう少し削ればコアになるものが見えてくる」と指摘し、「B分類の行為」のうち研修を義務付ける47行為をさらに減らすよう求めた。星氏は、「病院を離れて研修に行かなければできない行為が多くなればなるほど、地域の医療機関に与える影響が大きい」と語気を強めた。しかし、難易度の高い「特定行為」とされている「B分類」の枠組みを維持したまま絞り込むと、一般の看護師が「具体的指示」で行う業務の範囲が拡大する可能性もある。

 医療法人鉄蕉会医療管理本部の前看護管理部長である竹股喜代子氏は、「この流れは限りなく『B』(特定行為)が『C』(一般の医行為)になっていく。ナースがどんどん業務を引き受けることになり、現場の混乱を生じる」と星氏に反論。「日本の病院の7割は200床以下の中小病院で、現在の環境でも看護師にかなりの無理を強いている。『特定行為』は難易度が高い行為ばかり。これを一般の看護師が引き受けるのは、私が考えるレベルを超えている」と声を荒らげた。

 一方、ケアーズ白十字訪問看護ステーション統括所長の秋山正子氏は、「医療現場では医師が足りない。看護師がすぐにやることで、患者さんのQOLが上がるという状況が在宅医療でもある。議論を前に進めていくべきだ」と厚労省案を支持した。他の委員からも「皆さんの意見は、大きな方向性は違っていない」との発言もあり、議論は収束した。

 会議終了後、厚労省の担当者は記者団に対しこう述べた。「今回の会議で、指定研修の対象になる行為は、患者さんの病態確認や臨床推論が必要な行為であるということで意見がまとまりかかった。そういう方向性での議論が明確になったと思う。今後は、そうした観点に基づき、院外に研修に行かなければならない行為について、(47行為以外の)『要検討』とした行為について、さらに精査していく。次回は、基本的なコンセプトをもう一度確認した上で、こうした考え方でいいかをきちんと固め、個別の行為を確定したい」。