よし。しっかり仮眠もとったし気合入れて民事法Ⅱ終わらせるぞ~ビックリマーク


と、同時に昨日の刑訴ゼミの復習もかねて[5]番「別件逮捕・勾留」の答案ものっけていきますね。


ゼミでハム吉が指摘した点は、供述証拠への違法収集証拠排除排除法則の適用

について高裁判例しかないわけだから、その適否について理由を一言書いておいてもよかったのではないかという点です。


答案

第1 問題の所在
 1 違法収集証拠排除法則
   本件各調書の証拠能力について論じるにあたり、前提としてXに対する逮捕・勾留の違法性が問題となる。なぜなら、本件①~⑤の各調書は、いずれもXの逮捕・勾留中に得られた供述証拠であり、当該逮捕・勾留に違法があれば、当該各調書は違法収集証拠として証拠能力が排除され得るからである。
   この点、違法収集証拠排除法則について、刑事訴訟法上の規定としては置かれていない。しかし、適正手続の保障(憲法31条)、司法の廉潔性、将来の違法捜査抑止の観点から、判例・学説共に認めている準則である。その内容は、当該証拠の採取過程において令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、当該証拠につき違法捜査抑止の観点からも証拠能力を許容することが相当でないと認められる場合に限り、証拠能力を排除するというものである。
 2 検討すべき点
   以上より、本件における問題点は、本件Xに対する逮捕・勾留につき違法があるといえるか、また、違法があるとした場合に違法の程度は如何ほどのものか、という点である。以下、順次検討していく。
第2 別件逮捕(勾留)該当性及び適法性
 1 意義
   この点については争いあるも、一般に、本件について取調べる目的で逮捕要件を具備した別件について逮捕するものをいうと考えられている。
   本件についてみると、警察官らは、XについてA殺害の嫌疑を抱いたが、直ちに殺人罪で逮捕するには至らない程度のものであったという。その後、別の情報から、Xが覚せい剤を所持しているとの疑いが生じ、この点Xに質問するため同人宅に赴いたところ、Xが当該被疑事実について認め、所持している覚せい剤についても任意提出したことから現行犯逮捕している。そして、その3日後の4月4日、XはA殺害について供述をしていることからすれば、逮捕から間近い時期にA殺害の件についても取調べがなされていることがうかがえる。また、逮捕から6日後の4月7日以降の取調べはその大半がA殺害事件の取調べに費やされていたという。
以上の事情からすれば、警察官らは、Xに対し、A殺害の件(本件)について取り調べる目的で別件である覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕したといえる。
   したがって、上記意義に従えば、本件Xに対する逮捕は、別件逮捕に当たると考えられる。   
 2 考え方
 (1)別件基準説と本件基準説
ア 私見
これは、実際に行った逮捕について、どちらの逮捕を基準としてその適法性を判断すべきか、という問題である。
考えるに、当該逮捕をするにあたり、実際上第一次的には別件の被疑事実についての逮捕要件の有無を基準として行わざるを得ない。また、通常逮捕の場合(刑事訴訟法199条~201条)、令状裁判官は、もっぱら別件の逮捕要件の具備を審査する。この点、仮に捜査官が本件についての取調目的を有しているとうかがえたとしても、それをもって逮捕状請求却下を下すことはできないと考えられる。よって、別件基準説が妥当である。実務上もこちらの考えに従っているとされる。
この点、本件基準説は、事後の取調べから逮捕時における捜査官の主観を推察して逆算的に当該逮捕が本件に基づくものであったか否かについて考える。しかし、結果論的な発想であり、実際的でない。また、捜査官の主観を過度に重視する点で考え方として無理がある。
イ 別件基準説からの帰結
以上より、別件基準説に立った場合、別件逮捕の違法の問題はもっぱら余罪取調べのあり方の問題へと移行する。
この点、余罪取調べについては、被疑事実に密接に関連する余罪については、当該被疑事実の様相を明らかにするものともいえ許容される。しかし、以下に述べるように、そのような余罪についての取調べであっても、取調べが当該余罪に関するものに終始し、被疑事実についての逮捕・勾留の実体が喪失していると評価できる場合には、当該身柄拘束について違法になると考える。
 (2)実体喪失説
    起訴前における身柄拘束期間は、その基礎とされた被疑事実につき罪障隠滅や逃亡を阻止した状態で起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行うための期間である。そうだとすれば、当該被疑事実についての起訴要件が具備される等し、その逮捕・勾留要件の実体が喪失したといえる場合には、当該身柄拘束は、令状なき身柄拘束となる。そのような身柄拘束状態が違法となることはいうまでもない。
そして、この点を判断するに当たっては、取調べ状況を詳細に検討し、被疑事実についての取調べが終了したにもかかわらず、未だ身柄拘束がなされていると評価できるかをみていくこととなる。