番組の司会者とメンバーが変わるだけで、けっこうな騒ぎになっている。

 日本テレビの演芸番組「笑点」のメンバーに、このほど二代目林家三平さんが加わった。桂歌丸さんの司会引退を受け、春風亭昇太さんが前週六代目の司会者に「昇格」。三平さんがその空席を埋めた。父は言わずと知れた昭和の爆笑王、初代林家三平。二代目は、45歳という若さと、持ち前の明るいキャラクターが買われたようだ。

「笑点」新メンバーに林家三平さん

 「最初に話を聞いたのは3月。日本テレビの社長室の隣で、偉い方に囲まれて…。よろしくお願いします、と言われたので、はい、と答えてしまった。これはトップシークレットで、もし誰かに話したら話はなかったことになりますからとも言われた。きょうまで黙っているのが大変だった」

 新メンバー発表後の記者会見で、三平さんはその時の様子を、笑いと、多少の緊張感をにじませて語った。この日まで本当に、家族の誰にもしゃべらなかったという。「笑点」を勉強する時間も必要だったが、事情を明かせないので放送を毎週録画し、「かみさんが寝てからこっそり見ていた」と明かした。

 新司会者の発表も極秘扱いされた。三遊亭円楽さん、林家木久扇さんらの名前が噂されていたが、ふたを開けると春風亭昇太さん。当時のメンバーでは最も新参(2006年加入)で、林家たい平さんに次いで若い56歳。新司会者としてアナウンスされると生放送の会場から驚きの声もあがった。昇太さんも「ずっと黙っていなきゃいけなかった」と言ったが、サプライズ効果は視聴率27%(関東地区)という形で如実に現れた。

 司会者やメンバーが変わるだけで話題になるのは、もちろん「笑点」が超のつく人気番組だから。1966年のスタート以来、50年の長きにわたって日曜夕刻のお茶の間に笑いを届けてきた。「パンパカパカパカ、パンパン」というオープニング音楽で全身の脱力感を誘い、「大喜利」の軽妙、珍妙な回答やアドリブで視聴者を笑いの渦に巻き込んだ。演芸番組では抜きん出た視聴率と息の長さ。司会者や新メンバーを、局が秘密にしたくなるのも大いにうなずける。

 若手、中堅の落語家にとっても、あこがれの番組。レギュラーになれるかどうかで、地方で口演する際のギャラも大きく違ってくると言われる。「大喜利は寄席の余興の一形態で、落語ではない」という声もたまに聞くが、大喜利の出演者はおしなべて本業の落語にも定評があるものだ。

 歌丸さんや先代の円楽さんは、「笑点に出ると落語会で全国に呼ばれるようになる。そこできちんとした落語ができるようになりなさいよ」と後輩たちに教えてきた。「笑点」が落語ファンを一人でも多く増やすきっかけになればいいと…。素質を見込まれて番組に起用された若手落語家が、人気者になり、そこからさらに芸を磨いて噺家(はなしか)として飛躍的な成長を遂げる…。昇太さんやたい平さんは、その好例といえるかもしれない。

 「笑点に出たい人はいっぱいいる。そんな中、三平くんが選ばれたのは素晴らしいことだ」と円楽さん。その上で、「三平くんが自分のキャラを作りながら、お客様にどう受け入れられていくか。その方法は自分で編み出さないといけない。そして、その結果は視聴率に表れる」と。

 番組が今後、60年、70年と続いていくために、「昇太-三平」の新コンビにかかる期待と責任は重い。 (時事ドットコム編集部)



一気に若返った感じですね。