夏来る(なつきたる)という明るい季語とともに、新刊をお届けいたします。
 今回は、生活エッセイといえるもので、私がこの10年余りで経験したことの中で、最大の変化をもたらしたスマホとの出会いについて書きました。
 スマホは便利で、いままでできなかったことを可能にしてくれたという点では、シーンレスでもそうでなくても同じだと思います。しかし、私にとって、それはただの「助かった」話しでは終わりませんでした。
 最初は私も、誰でも感じる「ああ、使い慣れるとスマホって手放せないなあ」という気持ちになりましたが、実はそこが本当のスタートだったのです。スマホとともに始まった私の生活は、それまでからは考えられないスタイルに一変し、それがきっかけで心にも大きな変化が起こったのです。何が起きたかは本を読んでいただいてのお楽しみ。
 というのはあんまりなので、一つだけお話しますと、最大の変化に気付いたのは、いわゆるステイホームの時代が始まった「あの時期」でした。ユーチューブに流れる様々な動画が社会との数少ない接点になったのは私も例外ではありませんでした。同時に、日常生活で「買い物難民」に陥ったのです。比喩ではなく、現実に、買い物において行き場を失った状態になったのです。
 そのとき救ってくれたのが、スマホでした。言うまでもなく、それ以前にはたくさんの人間による助けをいただいたわけですが、最後の一歩はどうしても私自身が踏み出すしかない、その一歩を、スマホが滑りだすように踏み出させてくれたのです。ありがたみを感じるとともに、その一歩によって、私は「生活者としての自信」を得たのでした。本ではその顛末をつづるとともに、スマホというものがどれほどの可能性を持っているか、それを使う私たちが何を問われているかについても、楽しく深く考察しました。その中では、社会制度から教育まで、私たちを取り囲む人間の世界についても多くを考えることになりました。
 スマホを手にしたとき、まさかここまでスマホに救われるとは夢にも思いませんでしたし、ましてや本を書くなんて、想像だにしませんでした。けれど数年前から、ぼんやりとスマホのすごさと意味について書きたいと思うようになっていました。その気持ちが、買い物を巡る経験で強まり、この本を書くことが願いの一つになりました。そんな折も折、以前ある取材で出会い、新聞記者から早川書房の編集者に転職した担当者の方からスマホの本を書きませんかと誘っていただいたのです。文字通り天の配剤のようなタイミングでした。こうして、この本はできたのです。
 スマホというテーマのため、書いている傍から技術は日々進歩し、書きあがった翌日から後日談が発生しました。
 でもだからといって、そのベースにあるものを見つめる必要がなくなったわけではありません。この本は最新技術とともに歩むうえで、通信というものの歴史を踏まえながら実生活で最新技術と暮らしている私の等身大の日々を通して、ともに暮らす、ともに歩む、ともに楽しむことを目指しました。お互いに「あるある」の話しも満載です。友達とおしゃべりするようにお読みいただければ嬉しいです。

巻 末には、いまをときめく落語家、春風亭一之輔師匠との対談を掲載しました。お会いする願いが叶い、師匠のご著書にも登場するスマホについて語り合うことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

 このブログの冒頭に「夏来る」と書きましたが、あとがきに記した季語は春の小鳥、メジロでした。季節が一つ進み、本がみなさまのお手元に届くのです。

 ところで、表紙のイラストには、なんと黄色い小鳥が描かれています。本に登場させたわけではないのに、まるで私の心と来し方を誰かがイラストレーターさんに伝えてくれたかのように、私を象徴する絵になりました。
 講演やコンサートで、私は「青いカナリア変奏曲」という自前でアレンジした曲をピアノで弾きます。もっと自前のレパートリーを増やすはずでしたが、いつの間にかこれが私のテーマ曲のようになっていました。アメリカの歌手ダイナ・ショアが歌っていた「ブルー・カナリー」という昔の歌を聞いて、一晩でイメージして編曲したものです。楽譜も決まった音符もないままに弾いていますが、いつしか定番になりました。
 そのカナリアを思わせる小鳥が、念願のスマホエッセイの本の表紙を飾り、私とともに飛び立ってくれました。
 スマホの音声は「黄色い小鳥を手に持っている」と説明してくれました。持っているのではなく、止まっているのですが、とにかく、小鳥を認識してくれたとは素晴らしい。
 点字についても思いをつづりました。最新技術が日進月歩で進化しているからこそ、この手で読み書きできる点字に心を向け、シーンレスが文字を持つという文明面での意味について語りました。
 学校の教材、社員研修のテキスト、大学のリポートの参考書、開発研究のヒント、酒の肴、何でもご活用くださいますよう。購入サイトは、以下の情報コーナーに載せておきます。より詳しい情報は、発売日以降に出版元である早川書房のサイトに載りますので、そちらも併せてごらんくださいませ。

(誤変換等、ご容赦ください)

Informations

三宮麻由子へのメールは、以下のアドレスにお送りください。なお、お返事が数日遅れる場合や、お返事をしない判断をする場合もありますので、ご了承ください。
hashiyasume@hotmail.com
 たまに、受信したメールが迷惑メールフォルダーに入ってしまうことがあるので、返信が遅すぎると思った場合は出版社にご連絡ください。
 オンライン企画を募集します。講演やイベントゲスト、メディア出演のご依頼を考えてくださる方、オンラインでの企画をぜひご検討ください。アイデアがありましたら、上記アドレスか出版社にご連絡ください。

新刊
わたしのeyePhone(早川書房)
https://amzn.asia/d/6pF3cMz

幻冬舎主催の対談  小説「まいまいつぶろ」を巡って
https://www.gentosha.jp/article/24772/
「小説幻冬」1月号掲載)

「おいしい おと」重版 (第25版)
でんしゃは うたう 重版(第22版)

ピアノ教師のグループ「ピティナ」のウェブに連載しました。二回目のアドレスは以下です。前回もここからたどれます。
https://license.piano.or.jp/news/2023/06/iroha_020-2.html

エッセイ収録
忘れないでおくこと 随筆集 あなたの暮らしを教えてください2
暮しの手帖社
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1205.html

心のともしび」
https://tomoshibi.or.jp/radio/

「センス・オブ・何だあ? 感じて育つ」(福音館書店) 重版
絵本「でんしゃは うたう」(福音館書店)重版
近著
フランツ・リスト 深音の伝道師
紙面、電子版で発売中
風のささやき、水のきらめき──心に映る風景を奏でたい。
人気エッセイストがはじめて贈る音楽の本!
金子三勇士氏(ピアニスト)推薦!
https://artespublishing.com/shop/books/86559-258-0/

『どうぶつえんで きこえてきたよ』
三宮麻由子 ぶん 北村直子 え
ちいさなかがくのとも2022年5月号(福音館書店)

『センス・オブ・何だあ? -感じて育つ-』
福音館書店より、3月2日発売、定価1000円、税込み1100円

「バス はっしゃしまあす」
福音館、代理店向けハードカバー

「この町で」を一緒に作曲した新井満さんの追悼番組に出演しました。自宅からのズームインタビューとピアノ、そしてこの歌が誕生した日本ペンクラブ平和の集いの本番が収録されています。私の出番は15-21分辺りです。ユーチューブでごらんください。
https://www.youtube.com/watch?v=KkOQwGWYmck

佼成出版社の共著「子どもだって哲学 家族って何だろう」が重版となりました。自立直前の私の心情が織り込まれたエッセイが収録されています。親離れ、子離れについて考えたい読者には特にお勧めです。
絵本 「おいしい おと」重版、21擦
絵本「でんしゃは うたう」 重版、20刷
絵本「かぜ フーホッホ」(福音館)増刷
四季を詠む 365日の体感 (集英社文庫)発売中
「世界でただ一つの読書」(集英社文庫) 発売中
絵本「でんしゃは うたう」の合唱譜
信長貴富氏作曲、「混声合唱とピアノのための鉄道組曲(音楽之友社)」 発売中

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