心理学者でもあり、茶道家でもある岡本浩一さんの著書に興味深いことが書かれているので、「癒しと自己の探求  心理学者の茶道発見」から一部引用して紹介させていただきます。



家族関係や交友関係、価値観から言葉遣いから発音までが、社会的地位によって異なっていることが示されている。


そのなかに興味深いフランスの研究が紹介されていた。

 

社会階層や社会的地位についての心理学研究。


出自、資格、職業、学歴、財産、持ち物などの要素を排除して、個人のどのような属性がフランス人の社会的地位を判断する手がかりになるかを調べたところ、クラシック音楽の知識が社会的地位と見事に対応していたというのである。


具体的には、オーケストラ曲のいろいろなフレーズの断片を聴かせて、そのフレーズは誰の何という曲の、どの楽章からとったものかを答えさせるというテストで、社会的地位の高い人ほど、作曲家と曲名を正確に答えさせることができたのである。


いかにも音楽が盛んなフランスらしい結果だ。


立身出世に直接は役に立ちそうもないクラシック音楽の知識が社会的地位に対応しているというところが面白い。


この研究は、人間の教養の重さについて、重大な示唆を与えている。

 

そもそも教養とはなんだろうか。


なぜ教養が大切なのだろか。


立花隆がこれを見事に言い表しているのを最近目にした。引用させていただく。


「教養はパンのための学問ではない。パンのためには役に立たないが、知的存在者でありたいと思う人がただそれだけの理由で身に着けようとするものである。そういう知識の総体が教養である。」(文芸春秋  平成10年6月号)


日本の中・高等教育に決定的にかけているのが哲学の教育だ、という立花氏の見解。

 

大学でも実学志向が強まった結果、本当の意味で人間の知性を耕すような教養を与えなくなってきている。


アメリカ、イギリス、フランス、ドイツでは、高校後半から大学にかけて、哲学的な人文学教育をみっちりやる。


その要点は、知識を与えるのではなく、合理的に疑い考える態度、哲学的態度、あるいは教養的態度とでもいうべきものをそなえさせることにある。


それが彼らの技術革新を生み、良心を支える一方で余裕のある生き方と価値観を生んでいるのである。


欧米の研究会議や学会に出ると、必ずパーティがある。パーティは本会議のおまけではない。


一見、軽妙なだけにみえるパーティトークのなかで、相手の教養をはかり、人間の深さを確認する真剣勝負である。


最近は、欧米にも、芭蕉や禅籍、孔子に通じる人が多いから油断ならない。


彼らが教養を重視するのは、危機や逆境にあっては、真の教養的態度が品性を支え、良心を曇らせず、適切なリーダーシップを発揮せしめることを知っているからである。

 

日本にあっては、茶の湯が「そのような教養の中核であった。知の深さ、心の確かさ、機知と機転、社会性など、真に教養的な資質を磨き、問う場所が茶席だったのである。

 

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いかがでしょうか。


一流のビジネスマンのサードブレイスとして、社交と教養を共有する場所として、私は大人の男性に茶道を取り戻していただきたいと考えています。

 

女子校のクラブ活動ではなく、主婦のお稽古事ではなく、当たり前の教養としての大人の茶道です。



茶室での空白の時間を持つことによって生産性があがる。


スーパーフードを丸ごと飲み込む、抹茶のパワー。


心の作法を知っていることが、ビジネスシーンでの人間関係に役にたつ。


など、検証していきたいこと、体感していただきたいことは沢山あります。


 


断捨離やミニマリストが流行っているが、モノを持つことを否定するのではなく、大人としてよりよいもの、上質な空間をもつことを意識することなのだろうと思います。

 

完成しない空間が、脳に感じる余白を生み出します。

 

そうした非日常としての茶室を体験していると、次は、抹茶を点てて飲むだけで、茶室でなくても、オフィスでもリビングでも、スイッチ切り替えられるようになる。


まさに、マインドフルネスの一服になります。


 

利休の時代は、戦国時代でしたが、自殺者が多い日本の現代は、見方を変えたら、まさに侍のような人生かもしれません。


また、かつて武士たちが鎧や刀を脱いで茶室に入ったように


役割を脱いで


スマホや時計を外して


時間を忘れ


しがらみとしての戦場から離れた時間を持つことは、内側の静寂をもたらしてくれます。

 


大人には、対外的成長だけでなく内的成長も必要です。


そのための茶道を取り戻したいと思います。

                               

茶道=堅苦しくて敷居が高い


というイメージが強いですが、茶の湯の世界は、和敬の精神でみな対等です。


もちろん、私もまだ学びの中途にあります。


ともに、大人の茶道を学んでいく仲間をお待ちしています。


心を静かに、一服の抹茶を楽しむ時間を持っていただけたら嬉しいです。


 

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表千家茶道教室(下北沢)

初心者・経験者・体験・男性やお子様・どなたもお稽古できます