父の仕事の関係で、生まれてから3歳までは名古屋に住んでいました。
あまりたくさんの記憶はないのですが、うちの前が小学校で夕方にたくさんのコウモリが飛んでいたことと、近所の市場のお嬢さんのお嫁入りの日に子どもたちにどっさりお菓子をくださったことは、今でもはっきりと覚えています。
私は覚えてないのですが、3歳になったばかりの頃に迷子になったことがあるらしいです。
京都生まれで京都育ちの母は名古屋に友だちもなく、平日の昼間はいつも私を連れてあちこち出かけていたそうです。
ある日、繁華街を歩いていた時に、ほんの一瞬だけ目を離した隙に私がいなくなって母は大慌て。
しばらく近辺を探したけれどどこにも見つからず、ついに父の会社に電話をして、仕事中の父にも一緒に探してもらえるように応援を頼み、とにかく走り回って必死で探したけれど見つからない。
もうこれは誘拐されてしまって二度と会えないかもしれないと半狂乱になった母でしたが、人はパニックの極限に達すると妙に冷静になるのか、あてどもなく探し回るのではなくその日歩いた経路を最初からずっと辿ってみることに思いいたりました。
そうしたら、3歳の私が泣きもせず、あるところに立って、あるものを飽きもせずにじっと見つめ続けていたそうです。
それは、、、
名古屋人のソウルフード、寿がきやの店の前に立っていたスーちゃんのお人形。
(今のスーちゃんとはデザインが違っていた気がします)
その私の姿を見た時に、母は全身の力が抜けたと言います。
そして、私が、
「ママ、どこ行ってたん?」
と、母を迷子扱いしたことを、笑いながら話してくれます。
子どもは、親とはぐれたらその場所から動かずじっとしていると聞いたことがありますが、まさにその時の私がそうだったようです。
ママと一緒に歩いていて、ふと見つけたスーちゃんに気を取られた一瞬にママを見失ってしまい、仕方がないからその場でママを待っていたのでしょう。
それとは別のある日、
デパートで迷子になったときに、一人でいた私を見つけてくださった店員さんに、私が、
「ママが迷子になったから探している。」
と言ったと、これも母がよく笑いながら話してくれるエピソードです。
大人になって定期的に仕事で名古屋に伺う機会があります。
そんな時いつも何となく懐かしい場所に帰ってきたような気がしています。
その頃から50年も経っているのですけどね。笑
*寿がきやさんと三越さんの写真はwebから拝借しました。