医薬品アクセスに影響を及ぼす最も悪質なアメリカの要求とは

リークされた交渉草案によれば、アメリカは攻撃的なIP条項(通称TRIPS-plus)の合意を迫っており、これらが通れば国際法のもと保証された公衆衛生のセーフガードを直接阻害することとなり、TPP加盟各国のより安価なジェネリック薬へのアクセスは困難になる。

以下、アメリカが要求するTRIPS-plusのIP条項の一部:

1)特許承認前から当該特許有効性への異議申立が不可能となる。
2)特許性の要件を引き下げ、たとえ薬効・治療効果が改善されずとも、既存薬に微細な調整を加えただけで、更なる独占権の保護を受けられる。
3)診断、治療、手術の各方法にも特許を要求。
4)特許期間を延長し、先発薬の製薬企業がより長期に渡って高価格を維持できるようにする。
5)ジェネリックメーカーによる後発薬承認取得をより困難にする。
6)臨床データを根拠に独占構造を更に強化する。
7)IP条項の新たな執行形態を導入することで、税関職員に合法的後発薬まで押収する過剰な権限を与える。
8)国の医薬品償還制度に高価格を強要する。
9)製薬会社に政府を起訴する権限を与え、政府が実質的に薬価を管理したり、公衆衛生保護の目的で法整備をする力を奪う。

元文書:
https://wikileaks.org/tpp/healthcare/WikiLeaks-TPP-Transparency-Healthcare-Annex.pdf
当ブログへの投稿が少々遅れましたが、「ジャーナリスト」紙に掲載された記事です。Daily JCJ からもご覧頂けます。

【緊急レポート】
     有権者の54%が支持、世界に波及/「ウォール街を占拠せよ」

                            竹内マヤ

 ニューヨークで9月に始まった「ウォール街を占拠せよ」。10月15日には、ニ
ュージーランド、オーストラリア、日本、英国、ドイツなど世界各地で一斉にデモが
行われた。ニューヨークでは少なくとも5000人がデモ行進、ローマではその規模
は数万人に膨れ上がった。拠点ニューヨークから14日に届いた緊急レポートをお
届けする。

        …   …   …   …   …   

 「我々こそ99%」のスローガンを掲げて9月17日に立上り、同様の運動を全国
約200都市に拡大する「ウォール街を占拠せよ」運動。参加当事者達も今後の展望
は明らかに出来ずにいる。

 10月13日、ズコッティ公園に緊張が走った。この日、同公園を所有する企業が
市警に訴え、公園清掃の名目でデモ参加者の強制退去を予告した。

 このニュースはこれに抗議する何千人ものさらなる支援者を引寄せ、彼らは自らか
き集めた箒やブラシを手に明け方にかけて急遽公園を清掃して見せた。翌朝、市当局
は強制退去中止を発表。状況は一旦終息した。

 この間、公式な交渉は行われていないという。この運動の柔軟な姿勢の一端と、今
や世界が注視する中、軽率には動けない当局の閉塞感が垣間見えた瞬間だった。タイ
ム誌の調査によれば、54%の有権者がこの運動を支持し、「茶会運動」の27%と
比べ幅広い共感を得ている。今後も運動の広がりと共に支持も拡大するだろう。

 経済学者、リチャード・ウルフは語る。
 「この運動の背景には30年に及ぶ米国経済の不公正拡大の道のりがある。過去
30年にわたる生産性の飛躍的向上は企業に驚異的利益・株価上昇をもたらし、その
一方で1978年以来実質賃金は変わらず、米国の一般労働者は二つの職に就くな
ど、世界のどの先進国におけるより長時間働くことを余儀なくされて来た」

 ILOによれば米国人は年間日本人との比較で137時間、フランス人との比較に
至っては499時間も労働時間が長い。にもかかわらず米国全世帯の6分の1が失職
者を抱える。70年代に40対1だった企業トップと一般労働者との賃金格差は
400対1にまで拡大している。

 一方、今回のウォール街に端を発した運動の中心を担うのは、平均年齢21歳ほど
の学生達だ。彼らは重い学資ローンを抱え、砂漠のように乾ききった雇用市場を目前
にしている。

 テーブルで案内をしていたウィスコンシンでスペイン文学を学ぶ大学生、マイケル
・グリフィス(21歳)。ウィスコンシンの運動を経て今ズコッティ公園で活動を続
ける。何が彼を運動に向かわせるか訊ねると、「目の前で起きている事が本質的に不
当であると、DNAに書込まれている気がする。そして何より同年代の若者達と同
様、自分の将来への不安と恐れが自分を突き動かしている」と答えた。
 彼のような非組織活動家が運動の中心を担う。

 ノースキャロライナの小さな町から来たという国際関係論を学ぶジェーンは、コン
クリートの地面に敷いた寝袋で休憩していた。「何か歴史上重大な局面を生きていて
動かずにはいられず4日間の予定で来た」と言う。地元の小さな町でも学生達が小規
模ながら運動に立上っていると話した。

 オハイオから来た看護学生デイビッドは、医療班を手伝いテントを中心に6畳ほど
のスペースに積上げた医療資材の入ったプラスチック容器を整理しながら、運動への
期待を静かに語った。

 「変革は僕達が起すしかない。富裕層に課税し、企業による社会の支配を終わらせ
る。当面雇用の創出と国民皆保険を訴えて行きたい。あと何週間、何カ月かかるかわ
からないが、僕達の存在が一時的なものでない事を実証し続ける」

 彼ら若者達に混じって活動家、労組、有識者、大学教職員、宗教家などの支援も増
している。社会派のアイスクリーム・メーカーとして知られる「ベン&ジェリー」
も、屋外キッチンの隣にスタンドを設けて参加者に自らアイスクリームを振舞い、一
般歩行者の関心も惹く。企業スポンサーの先駆けだ。

 グリーン・パーティーの党員は、有志ジャーナリスト達によって新たに発刊された
「Occupy Wall Street Journal」を道行く人に配布し、大学教授らしき男性は、テー
マ毎の講義の予定を書いた広場の黒板の前で学生と議論していた。

 公園のあちこちで様々な議論が交わされている。また、ブロンクスの貧困地域住民
に新たな形の社会医療を提供するモンテフィオーリ病院の医師、看護師が、医学生と
共に無償で医療サービスと救急医療班の訓練を提供している。

 地域住民も本を寄贈し公園に青空図書室が生まれた。最も組織されていない筈の運
動が、これまで目にしたどの運動よりオーガニックに一つのコミュニティーを形成し
ている。

 寡占化した大企業の抱える膨大な金が、その行き場を投機に求めた。それを奪い合
う金融機関が新たなサブプライムの住宅・信販。学生融資や、そのリスクをカバーす
る筈の保険としてクレジット・デフォルト・スワップなどのハイリスク商品を編みだ
した。

 だが、その結果として訪れた金融危機では、納税者がその損失の尻拭いを強要さ
れ、税金が危機の原因たる民間企業に施された。その影響は凄まじい勢いで公共プロ
グラムの破壊へと及んできた。記録的高額賞与を貪るウォール街の企業幹部には、今
の所いっさいお咎めなしだ。

 その一方で、それに対抗すべき活動組織は、長年分断されたまま、熾烈な労働に疲
れ、とろ火で煮込まれたシジミのように無感覚・無力化した状態が目立ってきてい
た。いくら沸点寸前の社会状況となっても、大きな動きはつくれなかった。

 リチャード・ウルフ氏によれば、「米国の政治は右傾化したのではなく、大多数の
有権者が生活のストレスに疲れ、政治から離脱した」状態にあったのだ。

「ウォール街を占拠せよ」が起こる前には、ウィスコンシン州で、教職員、警察官、
消防士など公務員の給与・職・団体交渉権などの切り捨てに対して「市庁舎占拠」の
動きがあり、ある程度の共感を得たものの、広がりは限定されていた。

 牽引する若者達は、多くの大人達が麻痺させてきた正義感と健全な生存本能を発揮
し得る時を、旧来の組織や論理や方法論にしばられない自分たちのやり方を模索しな
がら、ひたすら待っていたのだろうか──。

 前出のマイケルは、「僕達は社会の一部を代表するに過ぎない。より多くの声に耳
を傾け、参加を求め、大きな視点で問題を見極めたい。僕らだけではマニフェストは
書けない」と語った。

 1929年の大恐慌からニューディールを導き出して以来、米国で初めての新たな
大規模市民運動はまだ始まったばかりだ。

                   (たけうち・まや/NY在住=ライター)


   *JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2011年10月号より*

    上記記事は、2011年10月号PDF見本でもご覧いただけます。
     8面 http://jcj-daily.sakura.ne.jp/20111008.pdf



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ピントをはずし、それを更にオブラートでくるんで砂糖を塗したような後味の残る記事だ。

国際会議での細野氏、野田氏の「冷温停止」発言は、その場を言い逃れた積りかも知れないが、「頭隠して尻隠さず」の恐ろしく的をはずした内容だ。「冷温停止」する対象自体が行方不明という現実を目の前に、世界の衆人環視のもと、こう騙って憚らないこと自体が信じ難い。

そこにサルコジ大統領らが同調する姿は、今の日本の膠着状態が単に日本だけのものではなく、ある部分、種の生存本能さえも麻痺させた人類の現実を反映している気がする。

あと数十年後に彼らはもうこの世にいないだろう。故にこの場を繕えばそれでいいと思い込むのかも知れない。しかし、あとに残る世代はどうだ。我々の残した破壊的環境で、様々な苦しみを背負って生きて行かなければならないのだ。

今、集団夢遊状態が許されるような悠長な状況ではない筈だ。いい加減もっとはっきりとモノを言うべき段階に入っているのではないか。

社説:冷温停止目標 言葉より実態が大事だ(毎日新聞21日)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110921k0000m070161000c.html




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