マスコミは良識ある報道を | blog.正雅堂

マスコミは良識ある報道を

 昨日の厩舎火災について、職場で各社の新聞に目を通す。最近は便利な世の中で、インターネットでもニュースを動画配信している。 昨日の火災は身内の出来事でもあるので当然これら各社の映像を視聴した。 局によって様々でありながら、そのいくつかに怒りを感じるものもいくつかあった。自らがマスコミの業界に身をおいている立場からしても、このあまりにも非常識な報道に怒りを感じる。


 こうした場で特定の企業を上げることはこれまでも避けてきたが、今日はあえて書かせてもらおう。


まずテレビ朝日


 他局よりも長い時間取り上げてくれた意味では、ありがたいとも思っている。ローカルなニュースを大きく取り上げてくれるので、時折うれしく思うことがある。

しかし、今回ばかりはどうだろうか。長いから何でも許されるというものではない。


 火災現場の前で、記者が厩舎の所有物である寝藁を手に取り、あたかもこれに火がついて燃えたというような表現をしている。

 だが、この時点では火災の原因は特定されておらず、あまりにも根拠のない報道としか言いようがない。更には隣人の厩務員を捕まえて、困惑顔しているにもかかわらず感想やらコメントを述べさせている。これもまた非常識といわざるを得ないだろう。


それから、火災現場の映像。

どこの局だったか失念したが、焼けた馬の足が映っているシーンがあった。

これも許せるものではない。これを観て喜ぶ視聴者がいるだろうか。映像を扱う仕事をしている立場から言えば、これは明らかに作為的なものを感じる。 「うっかり映ってしまった」は絶対に考えられないのである。映像編集はそんなに甘くない。


フジテレビさんなどは、中に入った取材をせず、門の外からの取材に留めている。

関係者の神経を尖らせない配慮だと思う。



失礼なのは映像だけではない。

毎日新聞。 インターネットにも掲載されていたので、この記事から個人名を省いて転記する。


厩舎火災:2棟全焼し競走馬9頭が焼け死ぬ 千葉・船橋

9頭が焼け死んだ厩舎跡=船橋競馬場で 3日午前1時5分ごろ、千葉県船橋市若松1の船橋競馬場内にある厩舎(きゅうしゃ)から出火、隣接する厩舎に燃え移り、木造一部2階建て厩舎2棟計600平方メートルを全焼した。両厩舎内の宿舎には男性厩務員5人がいたが、けがはなかった。競走馬13頭のうち2~5歳の9頭が焼け死んだ。隣接厩舎の4頭は逃げて無事だった。県警船橋署は出火原因を調べている。

 調べでは、現場は競馬場南側で、厩舎78棟で約600頭がいた。死んだ9頭はいずれも特に優秀な成績を残していないという。【山本太一】

毎日新聞 2006年9月3日 12時10分 (最終更新時間 9月3日 22時00分)


 記者の山本氏なるものが、どの程度競馬に詳しいのかは知らぬが、「特に優秀な成績を残していない」という記事は失礼であろう。優秀な成績を残していたらどうだというのだ。 彼は本当にまじめな記者なのかと、記者精神すら疑いたくなる。


 同じマスコミ業界に身を置く者として、こういう人間が世間大衆に情報を発信していることを恥ずかしく思う。どうして相手の気持ちを汲み取らないのだろうか。たとえそれが事実であったとしても、火災の原因とは無縁なことであり、無用に他人を傷つける情報は伝えるべきではない。



 マスコミ・・・とくに報道という仕事は、人の幸せより、不幸を題材にして飯を食っているところがある。だが、それはニュースという生活情報を入手する視聴者側も望んでいることであり、間違ったことではない。報道の必要不可欠な使命であり、辛いながらも大衆に大切な情報を伝える役目である。能天気なニュースばかりやられては困るので、これは致し方のないことである。


 だからといって、それを免罪符にして何でも許されるということはない。 

事件現場での取材に対してはそれなりに配慮をするのが大原則である。 彼らはこうしたシチュエーションでの取材は手馴れたものであろうが、取材される側は初めての事。そのショックは計り知れないのである。 関係者の神経を逆なでするような行為はお願いだからやめていただきたい。