3月2日、「政策論議中心の民主党にするフォローアップ会議」(世話人は櫻井充財務副大臣、筒井信隆農水副大臣、松井孝治元官房副長官、北神圭朗拉致特筆頭理事で、いわゆる「中間派」と報道されています)の2回目会合がありました。
 開会前、机の上に置かれていた文書に目を通した議員たちは、皆、押し黙ってしまいました。2009年8月30日の深夜に発表された鳩山由紀夫代表の「勝利宣言」ともいえる声明(末尾に掲載)と、9月16日に鳩山内閣の初閣議で決定された「基本方針」でした。私を含めて、出席した議員たちが「粛として声なし」の状況になったのは、この勝利宣言と基本方針の中身に、一様に衝撃を受けたからです。それぞれの青春時代が甦ったような、まさに甘酸っぱい「共感」という衝撃でした。
 何人かの後に私も発言を求めて、「今や『歴史的古文書』となってしまったこの理念を、民主党政権において何ゆえ実現できなかったのか。政府に入った議員、党執行部を構成した議員、その他すべての議員たちが、あの8月30日には共有していた理念と現状の惨憺たる有様との落差に責任があるはず…、その失敗の検証を敢えて厭わぬことのみが民主党政権の再生につながる」と述べました。出席者の1人だった山岡賢次代議士会長は、私が『歴史的古文書』という褒め言葉を使ったことを褒めてくれましたが、大半の議員は「古文書」に皮肉のニュアンスをより強く感じたようでした。
 私は、「歴史的古文書だけど、この勝利宣言は『五箇条の御誓文』のように、後世、常にそこに立ち返って勇気を奮い起こす力を持つ」とも申しました。確かに、僅か1年半で「歴史」として論じなくてはならなくなった展開は悲しい限りです。しかし、この歴史的検証を真摯におこなうことで初めて、「政権交代の虚と実」、そして「政治主導の明と暗」が明らかになります。
 私は、09年9~10月の政権始動期に、小さなボタンのかけ違いがあったこと、それが修復されないまま拡大し、さらに様々な要因が加わってしまったことを認識していますが、内閣・各省の政務三役(大臣・副大臣・政務官)、党執行部を経験した議員たちが歴史的検証に加わることで「失敗の本質」がより明快になるでしょう。
 自民党も、最初から巧妙な統治システムを築き上げていたわけではありません。激しい権力闘争を繰り広げる一方で政権党としての責任を問われ続けて、超長期政権の土台を堅固なものにしたのです。自民党政権が安定期を迎えるのは14年後、最盛期は30年後だったことを思えば、1年半は助走期間にもならないでしょう。今こそ民主党議員の真価が問われる時です。
 


国民のさらなる勝利に向けて 2009/08/30



民主党代表 鳩山由紀夫


 このたびの選挙で国民の皆さんは、勇気をもって「政権交代」を選択していただきました。また、民主党に圧倒的な議席をいただきました。
 民主党代表として、国民の皆さんに心から感謝申し上げます。
 同時に、今回の総選挙の結果を民主党全体として、厳粛な覚悟を持って受け止め、その責任を果たしていく決意です。
 今回の総選挙は、自民党を中心とした与党連立勢力対民主を中心とした野党連立勢力が真っ向から対峙し、政権交代を賭した政党選挙が繰り広げられ、政権交代が実現されたという点で日本の憲政史上初めてのケースであり、本日はまさに歴史的な一日となりました。
 私は、今回の選挙結果を、単純に民主党の勝利ととらえてはおりません。国民の皆さんの政治へのやりきれないような不信感、従来型の政治・行政の機能不全への失望とそれに対する強い怒りが、この高い投票率となって現れたのだと思います。
 その意味では、民主党や友党各党はもちろん、自民党、公明党に投票なさった皆さんも、誰かに頼まれたから入れるといったしがらみの一票ではなく、真剣に、日本の将来を考えて一票を投じていただいたのではないかと思います。この夏は、多くの国民が、真剣に日本の未来を考えた四十日間だったのではないでしょうか。そうだとすれば、この選挙、この政権交代の勝利者は、国民の皆さんです。
 私は、この歴史的な出来事には、三つの意義があると考えます。
 それは三つの「交代」です。
 第一には、当然のことながら、政権の交代であります。
 戦後長く続いた自由民主党による事実上の一党支配の弊害は明らかです。
 そうした政治体制を招いた一端は、野党の政権担当意思の欠如でありました。今回の結果を機に、政党は互いの揚げ足取りや批判合戦の政治ではなく、各政党がその長所を発揮し、政策面でしのぎを削り、議会制民主主義を発展させ、国民にとって政治を前進させる、真の意味での責任ある政党制を実現してゆかなければなりません。
 第二には、古いものから新しいものへの円滑な交代と融合です。
 今回、多彩な新人議員が非常に多く当選させていただきました。たとえ永田町での経験が不足していても新鮮な感覚で政治や行政体制を刷新せよとの国民の皆さんの変化への期待、古い体質から新しい改革への審判を重く受け止めさせていただきます。
 私たち民主党は、ベテラン・中堅・若手、そして男性と女性、さまざまな経験、経歴を持った人間が、それぞれの持ち味を出し合い、世代と性別を超えた力の融合を図り、改革を実現することに全力を傾けて参ります。
 第三には、主権の交代であります。
 国民の皆さんは、長く続いた官僚支配・利権政治を終焉させ、本当の意味での国民主権、機会均等の、公正かつあたたかみのある政治を望んで、一票を投じていただきました。
 かつて戦後の復興と高度成長期に、志ある政治家と粉骨砕身の努力を惜しまなかった官僚たちの努力が大きな役割を果たしたことを国民の多くが記憶しています。
 私たちは、政治と行政が誰のために存在しているか、もう一度、その原点に立ち戻り、国民と政治家と官僚との関係をとらえなおさなければなりません。
 私たち民主党は、「政治主導」が、単に政治家の官僚への優位を意味するのではなく、常に国民主導・国民主権を意味しなければならないことを肝に銘じなければなりません。
 「官僚たたき」「役人たたき」、そういった誰かを悪者にして、政治家が自らの人気をとるような風潮を戒め、政治家自らが率先垂範して汗をかき、官僚諸君の意識をかえる、新たな国民主権の政治を実現していきます。
 民主党は、議員一人ひとりが、この大勝に酔いしれることなく、数に奢ることなく国民の皆さんからいただいた議席の意味を深くかみしめたいと思います。
 党利党略や反対勢力への意趣返しに走り、政権交代そのものに浮かれてはならないことを銘記します。
 民主党は、国民の怒り、政治への不信を真摯に受け止め、これまでの負の遺産を一掃し、身動きの出来ない政治・行政の体制を根こそぎ見直して、政治・行政の停滞を打開していきます。
 それを成し遂げて初めて、民主党及び各政党は勝利への道のりを歩み始めることが出来るのだと思います。
 もちろん政治改革だけが、政府の仕事ではありません。
 直近の景気回復や、年金などの諸問題、さらには三十年、五十年先を見据えた、日本の国のあり方を大胆に問う政策も実現させていきたいと考えています。
 戦前、日本は、軍事によって大きな力を持とうとしました。戦後は経済によって国を立て直し、国民は自信を回復しました。しかし、これからは、経済に加えて、環境、平和、文化などによって国際社会に貢献し、国際社会から信頼される国を作っていかなければなりません。
 アメリカと中国という二つの大国の間で、しかし、日本が果たせる役割は小さくないはずです。
 私たち民主党は、日本に暮らすすべての人々が、誇りを持って生活を送れる、新しい国家の形を提言していきたいと考えています。
 私は、本日の国民の皆さんの審判に基づき、明日にも、政権の移行が円滑かつ速やかに行われるよう準備を開始いたします。同志とも協議を進めつつ、現内閣に対しても、国民本位の政権移行に向けて協力を求める必要があります。
 民主党は、新政権の発足とともに、わが国の政治・行政の大刷新にとりかかります。同時に、国益、国民の利益の観点から、必要な措置については、麻生政権の取り組みについても是々非々で判断し、継続発展させていくべき事項も存在すると考えます。喫緊の課題である新型インフルエンザ対策や、安全保障面での脅威への対処、各種の災害への備えなどがまさにそうした政策課題です。
 本日が、国民のさらなる勝利に向けたたたかいの初日となること、民主党は、そのたたかいでの勝利を目指して、これから険しく長い旅路を歩まなければならないことを胸に刻み、これからの一日一日に全力をつくします。
 国民の皆さんのご支援とご協力を心からお願い申し上げて、民主党を代表して私からの御礼と今後の決意とさせていただきます。
 予算委員会の採決と本会議の開会待ちの一日です。深夜あるいは明日まで持ち越しになるとの見通しもあります。週末、26日に埼玉県連の定期大会がありましたが、そこで「我々は、これまで『国民の生活が第一』を最大の目的としてきたし、これからも目的としていくことを誓う」と決議がされました。
 フロアで聞いていた私(=執行部でないので)は、この文言を決めて党本部に怒られないのかと思いましたが、黙っていました。統一選挙を戦う地方議員たちの悲痛な叫びだからです。「政権交代の歴史的意義を決して忘れていないし、これからも確信していく」という声が届かないもどかしさを拭えません。
 昨晩(17日)、ある大臣を囲む会に10数人の同僚議員が集まって懇談。本題は別として、16人の会派離脱問題について各事務所への反応がどうだったかが話題に。「凄いネという電話しかなかった」と語ったのは誰もが知る有名議員。大半は…
 例によって新聞・テレビは大批判の連呼でしょうが、私たち個々の議員の事務所へは、昨日の段階では大半が「何もなかった」「ほとんどなかった」ということでした。世の人々は投じられた一石の重みに迷っているのでは? 菅内閣、民主党政権がこのままでいいとは誰も思っていないでしょうし。