夢にときちゃんって子が出てきた。

小学生6年くらいの車イスの女の子。僕も背格好は小学生6年。

大事な人がいなくなって病院の前でスピーチをするときちゃん。見守る僕。

なきめになりながら強く先をみる目が印象的だった。
スピーチが終わってときちゃんの病室に向かう僕とときちゃん。
何故か車イスは使わないで肩をかしていた。

ときちゃんの病室は5階。エレベーターを使うときに赤ちゃんを連れた若いお母さんも一緒だった。
若いお母さんはすぐに閉まるボタンを押すのだけど閉まる寸前に小さな女の子が現れて僕はあけるボタンを押した。

若いお母さんは「乗るなら早く乗りなさい!」と強めの口調。
僕も「用事があるんだったら一緒に乗ろう」と促す。だけれども乗ってこない女の子。しびれを切らした若いお母さんは閉まるボタンを押してしまっていた。

えらくゆっくりなそのエレベーターのなかで若いお母さんは「なんなのあのこ」とぽつん。
僕は無性にイライラして何か言いたかった。けど、言葉が出てこない。
その時ときちゃんが顔を真っ赤にしていった。「あのこは絶対にエレベーター乗りたかった。あのこを入れさせられなかった私たちがまずかったんです」って。
そうだ、少女は顔を火照らして息も切れ切れだったんだ。
ときちゃんの必死の顔と、少女の火照ってた顔が繰り返され浮かんでやっと僕もひとこと。「そうだ、僕らが悪い」
ばつが悪そうに若いお母さんはエレベーターから降りていった。遠くから「最近の若い子は口の聞き方…」とかなんとか聞こえたが全く悔しくない。

ときちゃんと僕もエレベーターから降りた。因みにだけどときちゃんの容姿は色白でショートヘアの可愛らしい女の子だ。

ときちゃんを5階の受け付けに連れていくと軟体動物のように素早く椅子の下に潜り込んでしまった。僕は慌てて右から一個ずつ椅子を上げていく。一個めの椅子にはいない。二個めの椅子にもいない。三個めだ。
三個めの椅子の下でときちゃんはおやすみぷんぷんのお母さんみたいな顔で泣いていた(文字どおり顔が今まで全然違う)。

「虹みたいな」
「でもどうしようもないな」
なんてさっきまで凛としたときちゃんとはうってかわってしおらしいぷんぷんのお母さんが目の前にいた。
僕は内心笑いそうになりながらも言葉をひねり出す。
「僕が車の免許とれるようになったら虹を見に行く」「ときちゃんも連れてくから」
相変わらずぷんぷんのお母さんみたいな顔でときちゃんは泣いている。
「ほんとに?ほんとに私も連れてってくれるの?」
先刻のスピーチや若いお母さんにモのを言わせた凛々しい美少女は目の前にいない。
でも、僕はときちゃんの事が大好きだ。ときちゃんっていう人の心が大好きだから顔なんて関係ない。
「ほんとだよ」
という僕にときちゃんは
「やったー!!」
とぶさいくな?顔で言って抱きつく。
ときちゃんは隣のおじいさんに虹を見る約束をしたことを嬉しそうに話している。そんなときちゃんの姿を僕は嬉しそうに見ている。