論争 人材の国づくりは神奈川から❶ 文教常任委員会編
2013年3月5日・6日
文教常任委員会質疑応答要旨

○県立図書館と川崎図書館の現地調査での質疑(3月5日)
松崎:文教常任委員会には、これで3度目の所属となったが、2度目の時にも両図書館を訪ね、千代田区立図書館にも伺っている。川崎図書館はそのときも課題だったと思うのだが、身体障害者や高齢者に対してのバリアフリーについて改善しているのか 。
平野館長:川崎については、賃貸借の期限が切れるので、階段のみの現状は変わっていない。逆に、県立図書館はスロープやエレベーターがある。また朗読などの障害者サービスを別に行っている。
松崎:千代田区立図書館は勤労者の仕事が終わってからの利用を考えて開館時間を午後10時までと大幅に遅くし、カフェテリア風の場所なども開設して、民間の知恵を取り入れ改革を行っていた。開館時間を遅くすることや、心地よく滞在できるための工夫など利用拡大の視点からの改革はどのように行ってきたのか。
平野館長:開館時間については調査を行ったことがある。月曜日が祭日になった場合は開館するなど行ってきたが、時間の延長については実施していない。ただ、千代田のように指定管理者を導入するのは、専門的な分野もあるので、なかなか難しい。市町村立図書館とは利用の形態も違うと思う。
松崎:利用される方が減ってきている中で、工夫の仕方次第で、潜在的な利用希望者がおられることに意識を向け利用拡大につなげる工夫をしていただくことを、強く要望する。
平野館長:入館者については、確かに減少傾向だが、貸出冊数については増傾向である。宅配サービスなども行っている。館に来なくても利用している方はいる。

3月6日 文教常任委員会での質疑

○県立図書館のあり方について
松崎:昨日も川崎図書館、県立図書館に伺わせていただいた。11月7日に決算特別委員会の総括質疑において教育当局の方から答弁があり、そこから新聞紙上でもだいぶ記事になり、インターネット上でもいろいろな形で、私も個人名を挙げてかなり中傷ではないが、叩かれているようなところもあり、内心忸怩たるものもないわけではないが、委員会の場なので、そうしたことは切り分けて落ち着いて議論ができればと思っている。
 まず確認だが、あの日答弁された二見教育局長、あるいはまた課長も今答弁されているが、私どもとしては、当初から、あの時点でも、県民、利用者の方々にとって大きなサービスの低下や利便性の後退につながるのではないかという懸念を表明させていただいたところであるし、本日先ほどもそうしたことのないようにという観点からの質疑があったと思う。この点では、議会の中であまり異論はないと思う。この辺をまずどうするかということを同時に考えないと、いきなり集約化ということだけがポンと出たのでは、甚だしく考え方、スタンスが明確でない。
 そこでお聞きするが、今言われている川崎図書館の立ち退きが現実化することと、情報センターについても集約化ということがあるということだが、報告資料の中では、集約化という言葉が、検討の方向性、調整の方向性、それから今後の調整内容というところでそれぞれ出てくる。
それで、川崎図書館は昨日現地調査をしたときも、立ち退きということが区画整理の関係で出てきているということで、4階まで上がるのにバリアフリー化ということを、私もかねてから指摘をしていたが進捗状況を聞いたら芳しくない、ということだ。それから、館長によると、エレベーターについてもこれも限られた予算ということもあって、バリアフリーの決め手となるはずのところが、これもなかなか手がつかないということだった。
 そうすると集約化ということは19年度から検討してきた中において、先ほど財政オンリーの話ではないということだったが、具体的にいうと集約化というのは、川崎についていえば、何を集約するのか、それからバリアフリー化ということも含めてお答えいただきたいのだが、川崎をこれからどうして行こうとするのか、つまり、機能は集約するものと存続するものがあり、利用される訪れる方々にとっては当然もっとユニバーサルなデザインのものにしなければならないという要請もあり、その辺をトータルで、財政以外の観点を含めてどういう風にしようとされているのか、わかりやすくお答えいただけないか。ここには集約化しか出ていないので、どういう風にしていくのかというビジョンをお答えいただきたい。
生涯学習課長:集約化の具体的なあり方について、今いろいろと検討しているが、一つは川崎市のあそこの地域にあるという地域性と特性、企業支援に非常に役立っていること、そうした企業の支援に役立つような機能については、さらに高度化・特化して、同じ川崎市内に残すことを今考えている。
 したがって、まるまる今の川崎図書館がそのまま残るということではなく、特定の機能に着目して、そこのところは地域性、特性から残すことになる。それ以外の部分はどうするのかということで、基本的には横浜の紅葉坂にある県立図書館に集約していこうと考えている。
 いろいろな県民からのご意見をお聞きすると、集まっている方が便利でいい、例えば、ビジネス関係でいうと社会科学・人文系の経済誌みたいなものは横浜にあって、技術系のものは川崎にあるが、例えばそれを集約して一遍に見られる、ワンストップサービスみたいなものができればというようなご意見もある。そういうのも参考にしながら、川崎の方にはどういうものを県立図書館として役割を残していくのか、いろいろ検討させていただき、集約化を進めていきたい。
松崎:川崎に、というのは確かに分かる。それは、川崎という街の成り立ち、日本という国の中における果たしている役割は、私もそのとおりだと思う。しかし、県政全般で見ると、これから相模縦貫道、圏央道が開通していく中において、例えば県としては、黒岩知事の旗の下にやはりロボット特区というものを新たな産業、大きな産業の目玉として位置づけてきている。また、産業というくくりだけではないが、城ヶ島、大山等でやはり観光の新しい核づくりをしていくということがある。そうすると、ものづくりという観点だけから見ても、例えばロボット特区を考えると、川崎ではなく県央に新しい拠点を設けるためには、知の拠点をどうするのかという整理も一旦はしなければならない。
 それからもう一つは、それは活字文化でよいのかという側面も、新しい産業という意味では出てくる。特にロボット関係というのはそういう性格を帯びていると思う。極めてICT技術と近いものがある。
 さらに、もう一つは、存続なのか廃止なのか、あるいは現状維持なのか縮小なのかといった観点だけで考えていいのかという問題もある。つまり、現状では訪れて利用される方は数が減ってきている。でも、貸出冊数は増えている。しかし、貸出冊数だけでカウントできるものだけで本当に知の拠点と呼べるかという問題もある。だからこそ閲覧というところに特化していこうとされているのだと思う。ここは一つ大きな鍵だと思う。
 そうすると、利用者、閲覧回数もそうだが、やはり増えていってもらいたいし、相乗効果でどんどんどんどん、新しい知見と新しい知見を組み合わせれば、またさらに新しい知見が生まれるということもあるので、そこをどのようにしてサポートしていけるか、より高次の高度化したものに特化していきたいと言われる川崎の関係についても、改革するとか創造するということにもう少し取り組まないと、今のままの、訪れた方が活字を閲覧して、そのことによって得ていくものでという時間の流れ方よりは、世界がもう少し速いスピードになっているのではないかと思われることもある。その辺を含めての方向性だと思う。
 同時に、そこには財政的視点は、先ほど意味深い答えをされたと思うが、財政的視点を除けて考えているという答弁はされていない。財政的視点は必ずそこに入っているわけである。したがって、そこをどういう風に両立させるかということもあると思うが、二見教育局長いかがか。
教育局長:たしかに視点ということでは、図書館の持っている力をどう高度化して発揮していくということと、財政的な見地と両方の面から検討していくということである。やはり、地域性ということからどこに立つか、これも非常に重要なポイントであって、今回は川崎図書館として、今まで川崎という地にあって、川崎で中心になっていろいろな資料を収集してきた歴史と、川崎にあって力を発揮しているというこの機能は捨てられないということから、川崎の中に残して生きたいという方向性を出した。
 具体的な場所の検討としてはこれからになるが、進む方向としては、やはりなぜ川崎にということの一つの大きな意味として、産業、企業への支援というところがポイントである。
 したがって、今後残して高度化させていく内容については、課長の答弁にもあったように企業支援につながるところについて、高度化・特化をしていくという形である。現在も力を発揮しているものであるが、未来にわたってもう少し力を発揮していくにはどうしたらいいかということを検討していきたい。その中には、単に今までのように手に本を取って見るだけではなく、電子化の話もあるだろうし、企業の交流をしてきたという意味も含め、そういったところを未来形として、よりよい力を発揮するような方向を検討していきたい。当然、その中身は財政的な見地を入れてやっていく、両面から対応していくということである。
松崎:いま、教育局長から、将来を見通しての話があったが、どちらかというと川崎図書館についての話だったと思う。紅葉坂の県立図書館も、青少年センターなどシアター、劇場型の他の施設と関連性を持たせながら、機能を果たしてきたという歴史もあると思う。
 一方で、訪れて手にとってという方々の点から見ると減ってきている。同時に、子どもたちの活字離れは深刻な状況である。それは、文教常任委員会が開かれるたびに私や誰かが必ず指摘してきたことだ。私どもも深刻に受け止めている。それをどういうふうにして、今の時代に合って、かつ、子どもたちを含め成人の方々もより利用しやすいものに変えていくのか、改革するポイントがいくつもあると思う。
 そこが、県民の方々から見て時代にマッチしない、あるいは利用する、訪れるに値しないと思われるようになったら、これこそがピンチだと思うので、そこをどうするかということをしっかりやっていきたいが、よろしいか。
教育局長:先ほど川崎について答弁したが、県立図書館全体の話として私どもが提案したのは、市町村の図書館と組んで未来型の図書館という意味合いを込めて提案をした。
 それは高齢者の方などが自分の町の図書館、近くで本を借りられる、それも頻度多く借りられるようになれば、サービスとしては向上するだろうということから提案をさせていただいた。それだけではやはり機能は済まない、閲覧という手にとって見ることが必要というご意見を非常に多くいただいた。その辺もサービスを維持、向上させていく意味では、閲覧も残した方がいいという判断である。
 これから進めていく中で、財政的な見地もあると先ほどから申し上げているが、今までのものをそのまま残すのではなく、よりサービスをよくして高度化していく中で、市町村の図書館を経由するものも含めての貸出と、現地での閲覧機能を残すということをマッチングさせて、両方合わせて機能を向上する中で、どうやって個々の部分を押さえて財政的な見地を出していくか、3つを整合させる解を見出していきたい。
松崎:3つの課題を整合させていくということだが、翻ってそれらを込めた集約化と受け止めた。ちなみに、ヤフーで行われた神奈川県の県立図書館及び川崎図書館の11月の答弁の後のアンケートを見ると、ほぼ10000対10000で拮抗していたという。ただ、回答数は膨大な数だったそうなので、おそらくそうしたところにもヒントがあるのかもしれない。そういった意味では、課長の言うように、いろいろな意見があり、なかなかこれはすぐスパッとこうするという答えは出しにくいが、そのこと自体が図書館というものの存在の重さ、深まりを物語っていると思う。ぜひともそこはご検討よろしくお願いしたい。