これから必要とされるかもしれないので。 | 獣医師 まつもと先生のブログ

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愛知県豊明市のまつもと動物病院です。
動物たちの健康の窓口として、信頼されるかかりつけ動物病院を目指します。
小さなことでも、お気軽にご来院下さい。

 僕のBlogには、似つかわしくないのかもしれないけれど、一応小動物臨床に携わる者として、時には正確な情報もエントリしていきたい。
 
 巷でよく…。「アニマルセラピー」とか「ペットセラピー」、「ドックセラピー」とか言う言葉が、安易に使われ過ぎているのに気が付くと思う。これには、マスコミの影響が多いいのだけれど、本質的なものをまるで理解していない人が使う言葉であるので、注意してもらいたい。
 
 http://www.jaha.or.jp/contents/modules/sect5/index.php?id=1 (JAHA 公益社団法人日本動物病院福祉協会)
 
 で、大まかな事が記載されているが…。
 
 一般に言う、「アニマルセラピー」や「ペットセラピー」、「ドックセラピー」は俗称であり、正確な名称ではない。ただ、そう言った方が、伝わり易いので使っていることもあるが、本質的なものはまるで違う事を理解してもらいたい。
 
 ① 動物介在活動(AAA:Animal Assisted Activity)
 
 一般に言われている「アニマルセラピー」や「ペットセラピー」と言うのは、この活動の一部に過ぎない。活動内容としては、動物と触れ合い、動物と接することで、レクリエーション的な意味合いを持たせたり、この活動を受ける側の人の生活の質(QOL)を向上させようと言う目的をもつもの。
 
 これは、あくまで『活動』なので、条件がクリアー出来れば、たいていの人が参加することが出来る。しかし、人間相手の事なので、ボランティアなどは、ある程度の経験は必要だし、理解してくれる人たちも、受け入れてくれる人たちも必要になる。もちろん活動に参加する動物は、獣医師による指導により管理されている事、服従訓練が徹底されている事が条件となる。
 
 さて、ここからが本題。
 
 ② 動物介在療法(AAT:Animal Assisted Therapy)
 
 これの事を、「アニマルセラピー」や「ペットセラピー」だと勘違いしている人が、圧倒的に多いが…。
 
 まったく違う…。
 
 言うまでもないが、「Therapy」と名のついている以上、あくまで『療法』なのである。つまりが、医療現場で行われるべきものであり、『医療従事者(医師)の指導のもと、より専門的な治療行為として行われるべきもので、その補助療法に動物が用いられる。』と言う事なのだ。
 
 この活動には、医療従事者(医師)、看護師、動物を取り扱うハンドラー(ボランティア)、その他のスタッフ、そして「獣医師」が連携をもったチームとして動かなければ機能しないことになる。 ← これ重要
 
 以上の点からも、AAAは「活動」であり、AATは「医療行為」と言う点で、まるで違うものであることは、理解出来ると思う。
 
 だから、『セラピー』なんて言葉を、安易に使うべきではないのだ…。
 
 そして、最後に…。
 
 ③動物介在教育(AAE:Animal Assisted Education)
 
 各獣医師会などでは、「学校飼育動物関連事業」等と言っているところもある。これは、小学校などに、動物同伴で訪問して、動物への正しい接し方、触れ合い方を学ぶと同時に、「命」の大切さを学んでもらう機会を作ろうと言う活動を指す。
 
 以上の事をまとめると…。
 
 これら、①、②、③の事を総称するとJAHAが言う、『CAPP活動』となる。ちなみに、CAPPとは、Companion Animal Partnership Programの略であり、人と動物の触れ合い活動と言う事になる。
 
 どの活動にも、少なからず獣医師が関係している事が重要で…。
 
 やってみたいから、勝手に動物連れて、獣医師の指導なしに、施設を訪問するなんてことは、言語道断なのである。
 
 今、東北地方太平洋沖地震における避難所で、ペットの同伴が問題になっていることもある。その中で、被災者が連れてきたペットが、ある意味「アイドル的癒し効果」を発揮している事実もあるようだ。
 
 そんな中、ペットがもたらしてくれる『心のケア』と言う面からも、近い将来において、AAAやAATが用いられてもおかしくは無い、と思う。
 
 しかし、その活動や治療には、専門的な知識と経験が必要になる事を、もう一度再確認して欲しい。
 
 例えば、年老いた犬を、これらの活動に供するのは、「タブー」とされていることだし、ひとたび活動や療法に参加した動物は、それ相応の休息時間を作らなければならない。
 
 人間の癒しの為に、動物たちが疲れていては、この活動の本質から、大きく外れることになる。
 
 動物たちがもたらしてくれる癒しと言うのは、もはや説明するまでもないが、人間の都合ばかりを考えていては、この活動を発展させることもできないし、存続させることもできなくなる。
 
 被災された方々と被災した動物たちが、手を取り合い復興出来る日が来る事を、願わずにはいられないのである。