極上の音楽奏でる聖なる酔っ払い楽団 | mathichenの徒然なるままに

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mathichenの徒然なるままに-Wagnerプログラム




かれこれ30年前、花の女子高生だった頃、選択科目の芸術で音楽を専攻したmathichenさんです
美術、書道は、授業終わりに作品提出がメンドクサイ
音楽なら、居眠り、あるいは、教科書の陰で小説のネタをメモ出来る
と思っていたら、音楽には楽典つまり筆記試験が存在し、歌の方で低いソプラノ張り上げて切り抜けるハメに
従って、楽譜読むのは、47歳の現在も苦手な部類ざます
それでも、今年ワーグナー歴20年を迎えるから、感性という意味での良い耳持てば何とかなります




今年2013年、緑の東京でなく伊太利亜のヴェルディとともに、ワーグナーは生誕200年を迎えます
ワーグナーといえば、まず、♪ニーベルングの指環を思い起こしますかね?
『序夜と3日間のための舞台祝典劇』、4部作完結まで26年、上演に約15時間を要する長大作品
とにかく長ったらしい。ここで話し出したら、約17記事は要するでしょう
そこで、今日思い出したことだけを1つの記事にします




mathichenの徒然なるままに-The Golden Ring





1958年から録音が始められた、ゲオルク・ショルティ指揮ウィーンフィルによる、世界初の『指環』全曲
厳密にいえば、正規スタジオ録音として世界初であり、ライヴ録音は以前からいくつか存在しました
1955年には、ショルティ盤より早く、ヨゼフ・カイルベルト指揮バイロイト音楽祭がステレオ録音されました
ショルティ盤を製作することになるジョン・カルショーが、英国デッカ勢を連れ、聖地に乗り込んでのもの
これは現在、英国Testament盤で聴けますが、長年、デッカの倉庫に眠っていたようです
恐らく権利関係、出演歌手陣の了承その他の調整が難航して暗礁に乗り上げたと思われます
カルショーさんはよほど悔しかったのやら。ショルティ盤を1965年まで7年かけて完成させました




同じ英国のEMIもさぞかし?何しろあそこは、戦前から『指環』に呪われているもんな
落としたらパリンと割れる、約5分ごとに裏返す必要あるSP盤時代に、全曲録音を計画して敢行したら
時代は鉤十字ドイツが調子こいている1930年代、総統さん出身国墺太利のウィーンフィル使ってなので
指揮者がユダヤ系で亡命、歌手も同様のため、♪ワルキューレ途中で見事に頓挫しちまいましたに加え
1954年、またまたウィーンフィルで始めたら、今度は指揮者が昇天されてしまい、♪ワルキューレだけ
1970年代に、エゲレスは倫敦での英語版ライヴを出したものの、本場主義の潔癖な日本では相手にもされず
などなど、EMI指環史だけで、序夜と3日間のための舞台祝典劇の長さとあって、デッカに先越されたのはねぇ
…寄り道はこの辺にしといて




上の映像は、1964年に録音された♪神々の黄昏より、ジークフリートの死と葬送行進曲の録音風景
ショルティ盤録音は序夜♪ラインの黄金から始まり、第二夜♪ジークフリート、第3夜♪神々の黄昏と続き
1965年の第一夜♪ワルキューレで締めくくられます
ジークフリート役のヴォルフガング・ヴィントガッセンが、1914年生まれ
40代後半から50歳頃の全盛期に録りたかったので、出番ないワルキューレを後に回した?
その結果、神々の長ヴォータン役ハンス・ホッターの喘息と不調が…は置いといて




オペラ録音は言うまでもなく、作品の時系列に録るわけではありません
歌手のスケジュールに合わせ、細かく場面を分け、最終場面を最初に録ったりみたいなのはザラで
ショルティ盤指環録音にも、次のような笑い話が聞かれます




1958年のラインの黄金幕切れ、『ヴァルハラ城への神々の入城』
この部分のセッション終了後、カルショーは録り直しの必要に気づきました
録り直しの必要でなく、ウィーンフィルがその日の予定を間違えていたんだっけ?
とにかく楽団を呼び戻したまでは良かったものの
楽団はもう仕事上がりの酒と軽食を堪能した後で、「え?まだ仕事あんのぉ?」とフラフラ千鳥足で登場
が、酒飲み大トラ集団でもさすがは世界屈指の名門オーケストラ、世界に冠たるプロフェッショナル集団
見ん事役目を果たし終えました
…のですけどね








YouTubeではわかりづらいですけど、10:17辺りから耳をダンボにしてみましょう
ラインの乙女の嘆きが消え、神々の入城の勇壮な音楽に変わりますね
オーケストラの音量、特に管楽器、急にグーンと上がるでしょ?
…グーンと上がる部分が、ハイテンションな酔っ払い楽団の証ですってば…




ウィーンフィルだけイヂメても悪いし面白くない
ラインの黄金録音エピソードからもう一つ、歌手に関する笑い話通り越してバカ話を




ラインの黄金、そして次のワルキューレには、結婚の守護女神フリッカが登場します
ショルティ盤では、ラインの黄金がキルステン・フラグスタート、ワルキューレがクリスタ・ルートヴィヒ
予定ではワルキュレーでもフラグスタート、しかし録音の間が開き過ぎたせいで、亡くなったのですわ
ルートヴィヒがまだ40歳くらい、一方フラグスタートは、第一線を離れた60歳過ぎでしたからね
フラグスタートは本来、ドラマティック・ソプラノ。メゾソプラノ役のフリッカはあくまで録音用
カルショーに懇願され、本人も楽しく参加したそうですけど
だから青二才は嫌なのよ、偉大なワグネリアンの価値知らないんだから、とばかりに登場するのが
雷神ドンナー役エーベルハルト・ヴェヒター、幸福の神フロー役ヴァルデマール・クメント、どちらも29歳
小奴らがですな、フラグスタート見て、「何で、あんなバアちゃんが今更?」とヒソヒソ話していると
悪いコトは出来ないもの、フラグスタート本人に聞こえちゃった…
さすがにバツ悪くなり、ヴェヒターの方が、「お国のスウェーデンは如何な感じですか?」と時候の挨拶した所
「お若いの、わたしは、ノルウェー出身ですよ」と返ってきたから、素直に誤りを謝ればいいのに
「ノルウェーもスウェーデンも似たようなものでしょう~」って…
その後どーなったか?知らん。証人のカルショーが怖くなってその場を逃げ出したというんだもん
ま、小僧どもは録音完了まで、私的には大先輩からシカトされ続けたとは思うわね~
なお、小僧どもはウィーン出身。アタクシと知人は、『維納の天然ボケ二匹』と命名しましたとさ