MAST石川不動産「きまま日誌」
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過剰雇用者

7月24日金曜日に発表された経済白書は衝撃的でした。

「過剰雇用者」の数が2009年1~3月期に過去最多の607万人に達した。企業業績がさらに悪化すれば失業しかねない「失業予備軍」と見ることもでき、日本経済の足を引っ張る懸念がある、と言うのです。(7月24日読売新聞)


このような記事を読むと、トーマス・フリードマンの著作「フラット化する世界」を思い出します。

フリードマンはIT技術の発展により、経済のグローバル化が進んでいくと、安い労働力を背景に、中国・インドがグローバルな競争力を強め、先進国の労働者から職を奪っていく、というのです。彼はこの現象を、世界の「フラット化」と名づけました。

経済が地球化し、競争が激しくなればなるほど、人々は丸い地球の向こう側にいる競争相手と戦わなければならないのです。そして、人々の賃金は国境を越えて、平準化していくのです。平準化していくということは、先進国においては賃金が徐々に安くなっていくということであり、新興国にとっては、賃金が徐々に上がっていくということなのです。


同志社大学の浜教授は、経済のフラット化が進めば進むほど、「フラット化の圧力に耐えられる人と、耐えられない人との格差が拡大していく」と、指摘しています。かつて日本は世界でも屈指の「平等」と「豊かさ」を併せ持った国でしたが、今日の日本は「派遣労働」「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」といった言葉があふれ、「豊かさの中の貧困」が鮮明になってきました。あるいはもしかしたら、日本人は「平等」と「豊かさ」の上に、いつも間にか胡坐をかきすぎてきたのかもしれません。企業間の競争がこれほどまでにグローバル化し、厳しいものになっているという現実から、自らを遠避けていたのかもしれません。しかし、現実には、世界中の企業が、「苛烈ともいえる生き残り競争」を強いられ、企業は徹底したコスト削減が至上命題となり、コストを制する企業が生き残れるということが鮮明になってきたのです。となりますと、安い労働力を獲得できなければ、企業は企業間競争に敗れ市場から撤退せざるをえないということになります。ある繊維関係の古い友人は、長年中国に生産工程を置いた仕事に携わってきましたが、今は徐々に、インドに近い、バングラデッシュ、ベトナム、ミャンマー等に比重を移してきているというのです。中国の半額で済む人件費は、厳しい企業間競争にとって、なくてはならない貴重な資源だというのです。


従来の資本主義において労働は、資本と相対峙する、単純な成立要件でした。しかし、経済のグローバリゼイションは、一方において資本の激しい競争化を促進しましたが、労働に関しても、20世紀後半から労働の液状化をもたらし、労働者自身激しい競争にさらされるようになったのです。上記浜教授は、労働の4分極化を指摘してます。正規労働者、非正規労働者、外国人労働者、労働難民。正規労働者が労働者の頂点に立ち、労働者のピラミッド型の上下関係が、21世紀になって、自然発生的に出来上がってきたかのようです。607万人の日本国内での、過剰雇用者が発生していると経済白書は報告してますが、雇用の過剰感は、ひいては、正規労働者の減少、非正規労働者・外国人労働者・労働難民の増加傾向に拍車をかけていく、それはまた同時に、日本の国力の衰退に繋がっていくのではないかと、心配せざるをえません。


2009年7月31日厚生労働省は6月の有効求人倍率を発表しました。0.43倍、2ヶ月連続の過去最悪更新だそうです。総務省からも同日、6月完全失業率が発表されました。5.4%(過去最悪5.5%)。過去最悪の1歩手前だそうです。総務省からは同日、全国消費者物価指数(2005年=100)も発表されました。前年同月比1.7%下落で、4ヶ月連続の下落だそうです。また、比較可能な1971年1月以降の過去最悪の更新だそうです。


タックスヘイブン

 2009年4月2日、ロンドンで、第2回20ケ国・地域首脳会議(G20)が開催されましたが、独メルケル首相・仏サルコジ大統領両首脳提案のタックスヘイブン(租税回避地)への監督・規制強化案が、米オバマ大統領の全面的同意を得て、採択されたようです。


 タックスヘイブン(租税回避地)というと、英国領ケイマン諸島などのカリブ海域のリゾート地が有名ですが、2001年9月11日アメリカ同時多発テロ以降、米国愛国者法(テロ資金監視強化を定めた法律。2001年10月26日発行)が制定されたことを受け、身元を知られることを嫌う中東産油国・中国の資本家等の資金が大挙して、ロンドンおよびケイマン諸島などの英国領に移転され、これら世界の余剰資金は、租税回避地を経由して、アメリカのヘッジファンドや、金融機関の投資ファンドに流入していったと推測されてます。そのアメリカの金融機関は、住宅ローン債権などをベースにした証券化商品、金融派生商品を大量に発行し、米欧を中心として世界中に販売していきました。タックスヘイブン(租税回避地)はドルの信用を増幅させる生産基地の役割を果たしていたといわれてます。タックスヘイブン(租税回避地)は、世界を駆け巡る資金の過剰流動の生産現場、租税を回避してまでもレバレッジを効かせて、さらに儲けようとする強欲資本主義の巣窟といっても過言ではなかったのです。(この項、産経新聞「ドル帝国溶解」4月10日)


 仏サルコジ大統領は、今回の金融危機を次のように考えているようです。

「今回の危機は、資本主義の危機ではない。反対に、資本主義のもっとも基本的な価値からかけ離れてしまったシステムの危機である。」「我々は金融業界のいかなる投資家・機関・商品といえども、今後、規制・監督機関の管理から逃れてはならないと決めた。この規則は信用格付機関だけでなく投機的投資ファンドやタックスヘイブン(租税回避地)にも適用されなければならない。」(この項、読売新聞「グローバル・ビューポイント」4月1日)


今後どのような規制・監督がなされていくのかわかりませんが、投機筋に流れたマネーの暴走は許さないという市場原理主義に基づく経済行為の抑制に多少なりとも傾いていくことは間違いないようです。マネー暴走を許したタックスヘイブン(租税回避地)への監視はますます厳しくなることでしょう。



ファニーメイとフレディマック

 2008年7月13日、アメリカ政府とFRBは、経営が悪化している政府系住宅金融2社に対し、緊急支援の声明を発表しました。声明の内容は、公的資金を使った資本増強とFRBによる低利での融資が柱のようです。

 政府系住宅金融2社とは、ファニーメイとフレディマックです。

 2社は民間金融機関から住宅ローン債権を買い取り、小口証券化してアメリカ国内及び世界中の投資家に販売することを主力業務としてきました。2社が国内外の金融機関・機関投資家に小口販売していた証券の総額は530兆円、日本の年間のGDPにも匹敵する額とも言われています。

 このように途方もない金額をアメリカ国内及び世界中からかき集め、アメリカ国内の住宅投資に還流させていたのですから、アメリカ国内における住宅価格の下落とローン不払いの増加は、2社に取り重大な打撃となりました。万一2社の経営不安が表面化した場合、アメリカ及び世界経済に与える影響は計り知れないものがあります。今回の救済措置の発表は、それを見越しての事前の措置のようですが、それにしても、政府系とはいへ、民間の上場企業ですから、破綻が無いとは言い切れないのです。今回の緊急措置発表で、破綻懸念は解消されるのでしょうか?

 2社の発行する債券は、政府系ということで、いざとなれば、アメリカ政府が保証してくれるだろうという安心感から、アメリカ国内及び世界中の金融機関、機関投資家によって購入されてきたそうです。また、その利回りはアメリカ政府が発行する国債の利回りを上回っていたようですから、なおさらです。投資対象に悩んでいる日本国内の金融機関・機関投資家にとっても、格好の投資対象であったに違いありません。それにしても、日本の金融機関・機関投資家は、かつての不動産バブル崩壊を経験済で不動産の値上がりは永遠に続かないということを身をもって体験したはずなのですが、その割りに小口証券化された債権に対しては警戒心が不足しているように思えてなりませんが、いかがなものでしょう。

 ちなみに、2社を含むアメリカ政府機関債の対外保有残高は1兆3000億ドル(アメリカ国債の場合は1兆9650億ドル)といわれています。また保有残高が1番多いのは中国(3760億ドル)で、2番目が日本(2290億ドル)だそうです。このように考えると、ファニーメイとフレディマックの問題はひとごとではない話です。日本の金融機関・機関投資家及び政府はいざとなった場合、どのような対策対応を考えているのでしょう?ちょっと気になります。

サブプライムローン問題のその後

 アメリカのサブプライムローン問題をきっかけに、アメリカの金融機関は大きな痛手(資本の毀損)を負ってしまいました。政府系ファンド(SWF)等の資金の手助けにより増資を行ってきたようですが、それ以上に、アメリカの住宅価格や証券化商品の値下がり等がとまらず、なお、毀損した資本の穴埋めをしなければならない状態のようです。シティ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースなどの株価は、年初来20%から40%下落したといわれてます。これまでにアメリカの金融全体で1200億ドルの資本調達が行われてきたようですが、まだ、650億ドルの資本投入が必要であるといわれております。ところが、増資に応じた政府系ファンド(SWF)等が、株価の下落で多大な損害を蒙っており、新たな資金の出し手が見つからないでいるというのです。次に打つ手というと、資産の切り売り、配当のカットということになるようですが、こうした手詰まり感が株価を押し下げるスパイラル的情況を作り出しているといわれてます。(この項7月2日付け日本経済新聞)

 アメリカのサブプライムローン問題は、当初、「アメリカの住宅価格の下落」「証券化商品の下落」「金融不安」等をクローズアップさせましたが、その後、「過剰流動性」「投機資金の株式市場から先物商品市場への流出」「原油の高騰」「原材料の高騰」「穀物相場の高騰」をもクローズアップさせることになり、今日では、こちらの問題の方が大問題となってしまいました。先日の朝日新聞の株式コラムには、「懲りない投機筋」というような表現で寸評が掲載されてましたが、原油・資源・穀物の高騰の原因が「投機」にあるとするならば、これほどいまいましい「資金」はないということになります。このために、世界中の多くの人々が大きな苦痛を味わうことになってしまったのですから、本音が出てしまった朝日の記者に同感した人も多かったのではないでしょうか?

 しかしながら、原油・原材料・穀物の値上がりは、「投機筋」の問題とばかりに片付けられないようです。値上がりの本当の原因は、BRICS等の新興国の経済発展、需要の増大にあるといわれています。巨大な人口を抱える国の人々が豊かになり、冨を蓄えれば、豊かになった分だけ需要が増大するのは当たり前のことです。需要が増大すれば、当然に、物の値段は上がります。BRICS等の新興国の人々が豊かになることを誰も止めることは出来ません。このようなわけで、原油・原材料・穀物の価格は、かつてのように安い価格に戻ることはないと言われています。

 これからの日本は、今までより高い原油・原材料・穀物を購入する分だけ、貧しくなっていくのでしょうか?それとも、今までより高い原油・原材料・穀物を購入しても、高い生産力をあげることにより、今まで同様の豊かさを矜持することが出来るのでしょうか?もしかしたら、今日本は、その岐路に立たされているのかもしれません。今までとは違う技術、システムが社会全体で求められているのかもしれません。今までとは全く異なる路線の変更が求められているのかもしれません。

 その1例とも言える記事が7月2日付けの日本経済新聞に小さく載ってました。「経済産業省は、革新的な太陽光発電の国際的拠点を、国内2箇所に選んだ。産官学の連携により2050年までに発電システムの効率を現在の4倍に高めるための基礎研究を担う。(略)選ばれたのは、東大先端科学技術センター、産業技術総合研究所。7年間の事業で、予算は合計150億円。シャープ、新日本石油、三菱重工業なども研究に加わる。」

 またその日の日本経済新聞トップには、「昭和シェル石油2011年に1千億円強を投じて世界最大級の太陽光発電パネル工場を建設する。」との記事が掲載されていました。

 今後、このような記事が、報道各社により頻繁に取り上げられてくると思われます。7月7日に洞爺湖サミットが開催され、CO2削減問題、資源の問題等が話し合われることになりますが、日本は低炭素社会のシステム構築がEU等に比べて周回遅れの状況にあるといわれております。それはまた、それなりの技術があっても、それ以上の技術開発及び産業化が進んでいないということでもあるようです。 原油高・資源高・食料高は否応無しに、脱化石燃料を前面に掲げた社会システムの構築と産業基盤の整備を、強力に後押ししていくのではないでしょうか?今後日本が先進国であり続けるためには、また従来と同じ富を維持していくためには、脱化石燃料社会の構築と技術及び産業の発展が欠かせないのではないでしょうか?

 

サブプライムローン問題

サブプライムローン問題は、最初は目立たずに小さな記事として新聞の片隅に顔を出す程度でしたが、最近は毎日といっていいほど大々的にメディアを通じて発信されるようになってきました。当初は「サブプライムローン」といってもアメリカのどのようなローンなのか、ほとんどの人は想像も出来なかったのですが、毎日の報道の深化により今では誰でもが、「あのことか」と理解できるようになったのではないでしょうか?

問題はこれからです。

ブッシュアメリカ大統領は、先週末減税を柱とする緊急景気対策を発表しましたが、世界の株式市場の判断はこの政策を評価しなかったようです。世界同時株安が進行し、東京の株式市場の日経平均株価は1月22日、1万3000円を割り込んで、1万2573円まで下落しました。

こうした連鎖的世界の株安を受けて、アメリカ連邦準備制度理事会は、22日臨時の連邦公開市場委員会を開いて緊急利下げに踏み切りました。0.75%の利下げです。これを受けて、23日の株価はちょっと落ち着きを見せたようです。果たして、アメリカ及びアメリカと関係の深い世界の株式市場はアメリカの金融政策により安定を取り戻せるのでしょうか?アメリカの金融機関は巨額の損失に耐えうるのでしょうか?減税とか利下げとかの景気刺激策のみで、巨額の損失の穴埋めをできるのでしょうか?

最近の新聞等の論調の端々に、今のところ大々的ではないですが、かつて日本が経験したような政策論調が垣間見えてきています。

23日付け読売新聞9面には、元アメリカ連邦準備制度理事会副議長で、現在プリンストン大学教授のアラン・ブラインダー氏のインタビュー談話が掲載されてました。

「アメリカ銀行・証券から損失含みの証券化商品を買い取る新機関を創設すべきである。」「金融と住宅の両分野の回復を目指し、公的資金を投入して、2つの新機関を創設する。アメリカ銀行・証券から損失含みの証券化商品を買い取る新たな期間を創設すべきである。」「買い手が付かない証券化商品を政府が購入すれば、機能マヒに陥った金融市場の健全化が見込め、住宅市場の回復にもつながる。」「アメリカ政府は金利軽減などの借り手保護を策を打ち出したが、解決には程遠い。」ずいぶんと思い切った論調です。

こうした論調は、今のところ、片隅の論調ですが、この論調が大々的になってきた場合は、米政府はどのような政策を打ち出してくることになるのでしょうか?1930年代の大恐慌時代、自宅の差し押さえを防ぐため、借り手から住宅ローンを買い取る公的機関が創設されたようです。1990年代にはアメリカ貯蓄貸付組合が破綻し、アメリカ整理信託公社が創設されたようです。今回の巨額のサブプライム損失は、公的資金の出動無しに解決することができるのでしょうか?世界は、固唾をのんで、アメリカの政策を注視しているといっても過言ではありません。そして、世界の株価はどのような判断をくだすのでしょう?



不動産株の大幅下落

エコノミスト8月14日・21日合併号に気になる記事が載ってました。

マンションデベロッパーなどの不動産株が下落しているというのです。7月27日の終値と今年の最高値を比較してみた結果、大手から中堅不動産業者まで、軒並み2割以上下落しているというのです。ちなみに、掲載されている表をたどってみると、次のようになります。

三井不動産22.5%、三菱地所26.5%、住友不動産33.4%、野村不動産ホールディングス24.3%、東急不動産27.3%、東京建物25.6%、大京33.6%、藤和不動産45.5%、長谷工コーポレーション37.3%、アーバンコーポレーション22.7%、明和地所22%、ゴールドクレスト20.1%という具合です。

上記は主にマンションを販売している不動産業者ですが、では、主に建売住宅を販売している不動産業者はどうでしょう。8月8日現在の終値との比較でやってみますと次のようになります。

飯田産業19.9%、東栄住宅30%、アーネストワン38%、タクトホーム25.7%、創建ホーム44.1%となります。

エコノミストは3月22日に発表された地価公示価格も、8月1日に発表された路線価格も共に上がっているのに、どうして株価が下がるのかと疑問を投げかけています。

その原因として次の2点をあげています。

1、首都圏人気エリアのマンション価格は3年前に比べ2~3割上昇しているが、主な顧客である1次取得層の所得は上昇していない。(総務省の調査によると、勤労者世帯の可処分所得は、2000年は月額47.3万円であったが2006年は44.1万円と7%減少している、としています。)

2、住宅ローンの金利上昇懸念。

確かにここ数年来東京を中心として、千葉、埼玉、神奈川においてかなりの土地が放出され、分譲マンション・分譲住宅の活況を生み出し、街の景観を変えるまでになってきましたが、ここにきて聞こえてくる街中のささやきは「売れ残り」の風説です。この4~5年の賃貸住宅から分譲マンション・分譲住宅への住み替えは、不動産の割安感・限りなくゼロに近い金利の低下・借りるよりも所有したい強い欲求、税制による国の後押しが手伝って、その勢いはすさまじいものがありました。しかしながら、ここにきての「売れ残り」の風説は何なのでしょう。踊り場的な不動産の調整局面なのでしょうか?

アメリカではどうなのでしょう?サブプライムローンの話題が消えないアメリカの不動産情勢ですが、アメリカでは2005年秋ごろから住宅市場の調整が続いているとのことです。GDP(国内総生産)ベースでの住宅投資は、今年4~6月期で7四半期連続の減少となっているそうです。これを物語るように、住宅の売れ残りが急増しているとのことです。住宅市場の調整は個人消費にも影響を与えるのではないかと心配してます。(上記エコノミスト)

日本ははたしてどうなのでしょう。アメリカの道をともに歩んでいくのでしょうか?


所得格差

8月3日、厚生労働省が2007年版労働白書を発表したと、それほど大きな記事ではありませんが、読売新聞1面に掲載されてました。

白書は「勤労者家計について、消費は全体として力強さを欠き、教育、住居などの支出項目で所得階層別の格差も拡大している」と指摘しているようです。その原因として、①賃金の低い非正規雇用の拡大②業績・成果主義的な賃金制度の導入で、正規雇用の中での賃金格差の拡大③裁量労働制の拡大などの労働時間制度の多様化で長時間労働と短時間労働への2極化などを上げているとのことです。特に非正規雇用の増大などの雇用形態の多様化は「今までの労使力学を崩し、成長の成果が労働者全体に行き渡らないという今日のゆがみをもたらした」と指摘しているようです。

かつて、共産主義経済圏が存在していた頃、資本主義経済圏の労働者は、共産主義・社会主義労働思想の影響を受けながら、少なからず大きな労働者としての権利を有していたと思われますが、ベルリンの壁が崩れ、共産主義経済圏が崩壊し、旧共産主義・社会主義諸国の資本主義経済圏への算入は、国家間の競争、国家を超えた企業間の競争、国家を超えた労働者間の競争を招くにいたり、ひいては、旧資本主義経済圏の、とりわけ先進諸国労働者の既得権益の喪失をももたらしてしまったようです。

日本においては1985年の労働者派遣法の制定は、メモリアルな分岐点ではなかったでしょうか。労働規制が緩和されることにより企業は①必要な人員を必要なときに迅速に確保でき②コストが割安で③一時的な業務量の増大に対応可能となったのです。なによりも企業にとっては従来の固定的な労働慣行・法制にとらわれずに人を雇えるというのは、自由裁量的な経営が出来るということですから、コスト調整にはもってこいの制度といえるでしょう。当初労働派遣法の対象業務は限定的なものでしたが、それ以降段階的に改正され、1999年には対象業務は、一部業種を除いて原則自由化、2004年製造業労働者派遣の解禁、2006年医師派遣解禁と進んできています。企業にとっては大変好都合なことですが、労働者にとっては、職は安定せず、収入も限定的なものとなってしまうことですから、大変です。

こうした雇用情勢はバブル崩壊以降、日本において劇的な変化を生み出すことになりました。大企業の新卒採用抑制、リストラ、正社員の減少、非正社員の大量発生となっていきました。非正社員の雇用はパート・アルバイトが中心で、派遣・請負社員は全体の数パーセントでしかないとのことですが、その就労人口は200万人を突破し、市場規模は10兆円規模に達すると言われようになりました。(週刊ダイヤモンド7月14日号)最近、新聞・雑誌・TV等でグッド・ウイルとかフルキャストとかの派遣会社の法令違反等が取り上げられ社会問題化していますが、法令違反はともかくとして、労働派遣法の存在そのものは、低賃金労働を生み出す法的なバックボーンとなっていることには変わりありません。こうした制度の存在が社会的に是認・許容される限り、高額所得者層と低額所得者層の拡大はますます開いていくものと思われます。

当社は賃貸住宅の斡旋を数多く行ってますが、最近の傾向として、派遣会社勤務の方の入居が大変増えてきているように思われます。以前は専門職に限定されていましたが、最近では大手製造業に派遣される工場労働者も目立ってきているように思われます。

所得の格差は、地域の格差にも繋がっていくのかもしれません。高額所得層しか住めない地域と低額所得層でも住める地域。高額所得層が居住する地域の地価・賃料は争うように値を上げていくのかもしれませんが、反対に、低額所得層が多く居住する地域は地価・賃料の横ばい、若しくは下落をもたらすのかもしれません。どちらの層の需要が強い地域なのか、地方自治体にとっては大きな問題かもしれません。




過剰流動性

2007年に入って世界的な株高が続いているといわれています。その背景には「過剰流動性」(金余り)があると指摘されています。なぜこのように金余りになったかというと、新興国の2ケタ経済成長、原油高による産油国の経常黒字増大等による余剰資金の積み上げが背景にあるといわれています。この余剰資金は、更なる利益を求めて、株・不動産・商品等に流れ込んで、世界的な株高、不動産の高騰、原油・穀物等の商品市況の高騰をもたらしているといわれています。

こうした余剰資金は、これまでですと利回りのよい米国国債購入に向かっていたのですが、2006年米連邦公開市場委員会が利上げ停止を行ったことにより、世界の余剰資金は債権から株式にシフト替えし、米国株上昇の原因となったといわれています。さらには、投資家のリスクの許容度が増大し、米国以外のリスク資産投資に向かい始めたとも言われています。

また、こうした動きに伴い、ヘッジファンドやプライベート・エクイテイ・ファンド(PE)の動きも活発になり、特に巨大化したPEはレバレッジ(テコ)の利く企業買収を手がけ高利回りを得られそうな買収可能企業を世界中で物色し始めているとも言われています。

こういったことと毎日無関係に忙しい思いをして生きていると、或いは、ワーキングプアの増大とか生活保護世帯の増大、自殺者の増大とかを毎日耳にしていると、ついつい視野が狭くなってきがちで、別世界のことと考えがちですが、世界の1方では余った金をさらにどう増やそうかという世界があるのだなということをつくづく思い知らされます。

驚いたことに、この金余りには、日本の金融政策、低金利政策も結果的に1枚かんでいるという指摘には驚きを禁じえません。この低金利政策により、海外ファンド勢が大挙して日本上陸を果たしているというのです。

LBO(レバレッジド・バイ・アウト)という言葉聞いたことあるでしょうか?企業買収の1つの方法です。少ない自己資金と買収企業の資産或いはキャッシュフローを担保にした借り入れ資金とにより、企業買収を行い、レバレッジ効果によりキャピタルゲインを狙うという企業買収の一つの手法です。世界的な過剰流動性の中で、運用難で行き場のなくなった巨額資金は内部収益率が30%を超える有力PEに投資し、PEはその期待に応えるべく日本に上陸し、日本国内の金利の安い巨額資金を調達することにより、企業買収を手がけているというのです。最近PEによる企業買収で新聞テレビ等で話題になることが多いですが、ファンドの企業買収に、金利の安い日本国内の資金が一役買っているとは本当に驚きです。(週刊東洋経済7月21日号参照)

過剰流動性の先には何があるのでしょう。上海の株式市況の加熱、不動産価格の上昇、ニューヨーク株式の高値更新、新興国富裕層の増大等が新聞TVで連日報道されていますが、この過剰流動性は既にバブルなのでしょうか?1説に北京オリンピックがターニングポイントではないかとささやかれていますが、実際はどうなのでしょう?この過剰流動性を生み出している日銀の低金利政策はいつまで継続することが出来るのでしょう?

いずれにしても過剰流動性(金余り)は、多くの一般庶民には無縁の話です。勝ち組に属する少数の国家、法人、機関投資家、富裕層の更なる利益追求の投資の問題なのです。反面、多くの一般庶民の生活は過少流動的です。過剰流動性の中で活躍されている方と、過少流動性の中で日々生活している方とでは大きな開きあることを感じないわけにはいきません。天と地ほどの隔たりでしょう。先般も、北九州市で、生活保護を受けられず、「おにぎりが食べたい」と書き残して死んでいった困窮者の報道がありましたが、過剰流動性とは無縁な話です。また、松戸市常盤平団地の年金生活者(毎月10万円ほどの年金受給)の孤独死の問題がテレビ朝日ニュースステーションで取り上げられてましたが、なくなった方の部屋は従来の家賃の半値で貸し出されるとのことで、生活困窮者にとっては、その半値の家賃も生きていくためには生活費を抑えるための貴重な家賃であると語られていました。・・・どうやら富の再分配は世界共通の問題といわざるを得ません。


身分証明証

子供の頃、アメリカやヨーロッパの映画を見て、ちょっとした感動を覚えたのは、警察とかFBIとかの公職にある人が一般市民に「身分証明証」の提示を求めるシーンでした。「パスポートを見せてください」「身分証明証を見せてください」このようなシーンに出くわすたびに、子供心にも日本とは違う「外国」を垣間見たような気になったもので、「外国ってすごいな」と思ったものでした。かつての日本では身分証明証はそれほど必要ではなかったように思われます。

身分を証明するものは運転免許証とか、パスポートとか、公的機関が証明する証明書等がありますが、最近、身分証明書の最たるものは運転免許証なのだなということが、やっと理解できるようになりました。運転免許証には、氏名、生年月日、現住所が必ず記載されていて、さらには本人の写真が掲載されています。よく、住民票とか保険証を提示する方がいますが、これらには写真が載っていません。やはり写真が載っていないといざというときには、本人確認が出来ないとして、公的手続きを拒否されることがあるようです。

先般、売買による不動産仲介で、売主さんは所有権手続き上の必要書類、権利証、印鑑証明書、実印、資格証明書、固定資産評価証明書とかすべてを司法書士さんに提示しましたが、最後に、売主さんが本人であるかどうかの確認をする段になって、運転免許証の提示を売主さんに求めています。幸い、売主さんは運転免許証の取得者でしたから、スムーズにことは運びましたが、もし、運転免許証を持ってない場合は、司法書士さんは、本人であることを確認するために、売主さんに、さまざまな身分証明証の提示を求めることになります。かつては、これほどではなかったのです。

最後に司法書士の先生と雑談になりましたが、運転免許証を持ってない人の場合の一番の身分証明証は、住基カードだとのことでした。私もまだ必要性を感じてないので、住基カードは持っていませんが、住基カードには2種類あるそうで、写真が掲載されているものと、写真が掲載されてないものとがあるそうです。不動産の所有権移転登記のような場合、間違いは絶対許されないことですから、氏名、住所、生年月日の確認だけでは駄目で、最後に、どうしても、写真確認が必要だとのことです。運転免許証を取得していない方、或いは必要がなくなって返納した方にとっては、この住基カードは、これからの時代、必要不可欠なものとなることは間違いのないことのようです。かつての日本では考えられないくらい、今の日本は本人確認を必要としています。それくらい、あぶない日本になってきたともいえるのでしょう。自分を守るために、公的な力を借りて、自分を証明しなければならなくなったのです。

住基ネットについては、個人情報漏洩の観点から反対論がくすぶっているようですが、今回の社会保険庁の管理のずさんさなどを考えますと、一元化されていないことの弊害が前面に出てきているように思われます。今一度「本人は自分しかいない」という確認の重要性と住基ネットの存在意義を、考える必要があるのではないでしょうか?


乱用的買収者

7月9日東京高裁はアメリカ系投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパンの訴えを退け、スティール・パートナーズ・ジャパンに対し企業価値を破壊する《乱用的買収者》と認定し、ブルドックソースの防衛策発動は適法であると断定しました。

読売新聞の解説は、この東京高裁の決定は、今後のM&Aの動向に大きな影響を与えるだろうとし、高裁の2つの判断に注目しています。

高裁は、『会社は誰のものか』ということですが、『専ら株主利益のみを考慮する考え方には限界があり採用できない』と指摘し、株主権利を過剰に振りかざす行動を戒めています。株式会社の所有者は法律上は株主ですが、従業員・取引先・消費者等(ステークホルダー)の支持がなければ経営は成り立たないのであるから『利害関係人(ステークホルダー)との不可分な関係を視野に入れ、企業価値を高めていくべき』だとしました。読売の解説はまずはこの点に注目してます。

もう1つは、投資ファンドがM&Aを行う場合のファンドの二律背反性の高裁の指摘に読売は注目してます。高裁は、投資ファンドを『組織の性格上、顧客利益優先の受託責任を負い、成功報酬の動機付けに支えられ、それを最優先にして行動する法人』と説明付けし、買収対象企業の経営より自らの利益を追求していると、スティール・パートナーズ・ジャパンを断定し、スティール・パートナーズ・ジャパンの過去のM&Aを分析した結果、『乱用的買収者』と高裁が結論つけた点に読売は注目しています。

最後に読売の解説は、投資ファンドすべてが『乱用的買収者』ではないとし、二律背反の指摘を受けないよう買収対象企業の経営をどうやったらよくすることが出来るのか、今後は投資ファンドの説明責任が問われてくることになるだろうと指摘してました。

12日付け、夕刊フジの記事は、『スティール・パートナーズ・ジャパンが投資している企業の株価下落が止まらない』と書いてました。今までですと、外資系ファンドが投資した株価は必ず上がるというような神話めいたものがあり、投資家も注目していたと思われますが、今回の高裁の判決は、今後株価にどう反応してくるのでしょう?

スティール・パートナーズ・ジャパンは、高裁判決を「財産権を侵害する」憲法違反だとして10日、最高裁に特別抗告を行ったようですが、最高裁の判断はどのようにでてくるのでしょうか?

今回の高裁の判決は、ファンドの『はげたか』性の部分を抽出し戒める役割を果たした形となったようです。相手方の立場を無視して、自分の利益ばかり追求するのは駄目だよという判決でした。

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