また人が辞めるときいて

がくっと心が落ちる

なんのために頑張ればいいのか分からない


どんなに人を育てたって

心ない上司を嫌がって皆辞めていく


あぁ、なんて現実的でつまらない悩みだろう

こんなことを考えて生きていきたいわけじゃない


それでもこんな時でも自分の歌声はすごく前向きで

力強く、伸びやかで繊細

録音したそれを聴いていると

気持ちがひっぱられていくような気がする 


縮んで傷んだ胸のうちが緩んでいく


あぁ、ここがだめだ 息が足りてない

そんなことばかり考えて生きていきたい


いまはとにかく

自分の声に感謝
















君の瞼が

二重なのだと初めて気づいた

皮膚が薄く存在感のない

爬虫類みたいな湿り気と陰りを帯びた

うつくしいひめごとだと思った


隙間に潜むように身体を縮め

物言いたげにじっとこちらを見上げていた君が

いま目の前で

優しい雨みたいにわらうので

やっぱり泣いていたのは私だったと

驚いて 夢から覚めて


その眼差しばかりが失えないものに思えて

あぁ、そうじゃない ちがうと首を振れば

湖畔に鉱石がひとつ

藍と灰色が混ざった色調を見せては

波の上で転がっているのに気づく


もっと水底に沈んで欲しい

そうしずかに願えば

降りたばかりのホーム 伸びる線路の向こうに

ちょうど夕日が落ちかかって


切りたての髪が揺れて風が首筋を抜けていく

それが心地良くて伏せた目の窪みに

錆びた鉄のレールに反射する

日暮れのぬくもりが溜まっている









































どんなに日記を書いても満たされない のに

詩の形式でかけば それがどんなに短くても

表現しきれたと思える


例え失えない と思ってかいたものさえも

かいてしまえば

時が経てば

失っても仕方ないと思える


何年経っても

ここに確かにあると思える

そのことの幸福