富士山に登る、、、 | しろグ

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まあ、そうおっしゃらないで、ゆっくりしていってください。

天候に非常にイヤな予感を抱きながら5合目に到着したのが8月23日午後9時59分。週末ということもあり、また富士登山のブームということもあり、我々が乗ったバスは満席で、5合目の駐車場には既に登山の格好を整えた人たちでいっぱいである。富士山の登山者数は世界一がずっと続いている。

都内でも充分に涼しかったので、富士山も寒いに違いないと思って始めから重装備。通気性のよい半袖シャツを2枚、長袖シャツを1枚、その上に 99 ショップで買った雨合羽、その上にバイク用のウインドブレーカー、足下はトレッキングシューズ、カーゴパンツの上にバイク用ウインドブレーカーのセットの下をはく。頭にはユニクロで仕入れた帽子にコールマンのヘッドランプをのせ、手にはT氏提供の作業用の手袋。雨が降れば 99 ショップで買った炊事用のゴム手袋を装着する。この組み合わせは手にフィット感があり細かい作業も出来ると、彼の実体験が言う。さすがプロである。



ここ5合目で既に標高2,305メートル。ゆっくりと身体を慣らして、神社にも参拝し、出発。雨は降ってなく、雲の隙間から星さえ見える夜空。風は殆どなく、引き続き身体を順応させながら歩いた。6合目までは登っているという感覚ではなくハイキングのようだが、6合目からはそうはいかない。だんだんと息苦しくなってくるが、さすが高地。とはいえ、最初の重装備のせいで熱がこもり、こちらのせいで身体が参りそうになる。途中の山小屋で何点か脱いで、ウインドブレーカーを腰に巻いて再出発だが、程よく吹き始めた風が気持ちいい。

ところが7合目辺りからそうも言っていられなくなった。突然ガスが出てきて、小雨が舞い始めたのである。あッと言う間にひどい話になりそうなので、直近の山小屋で再度重装備化。すると案の定、難所として知られる岩場の連続を過ぎた辺りから強く雨が降り始めた。九十九折りに上を目指す登山道にさしかかるあたりには風も勢いを増し、それに合わせて体感温度も一気に下がり、いよいよ悪天候が牙を剥いた。標高が3,300m を超えて普段何気なくやっているしゃがんだり立ち上がったりという動作一つ一つも億劫だが、8合目辺りからますます強烈になった嵐には閉口である。上からも下からも真横からも冷たい弾丸のような雨が風に巻かれて叩きつけてくる。

  

あわせて、昨今の富士山名物になっている「渋滞」に出くわす。7合目から上で断続的に起こるもので、特に8合目以上では顕著である。とはいえ、ジムをサボり続けたツケと高山での運動に疲労が激しさに苦しむ今回は、立ち止まっては進むというペースが非常にいい。だが、余りの荒天に、ガイド付のツアーの人たちが8合目半、9合目辺りでどんどん引き返して行く。その数、数十人単位。既に朝5時半で、更にこの先は渋滞が続き、また危険が増していることを考えたのだろう。

実は、我々も9合目半くらいの地点で断念! 朝6時。天候は更に悪化。どうやったらこれ以上悪化出来るんだ、というぐらいの荒れようで、下山を決定した。1時間くらいかけて辿り着いた8合目の山小屋で1時間ほど仮眠をとり、下山道を下る。よく言われることだが、下山は下山で厳しい。心肺機能は問題ないが、膝と足のツメ先に負担がかかる。足場は普段から悪いが、今日は極め付けらしい。延々と続く九十九折りの道路が下って行く山肌を見て驚く。火山灰と溶岩の荒れ果てた世界。ご来光どころか100m先も見えなかったが、ガスが少しずつ晴れてきて見えてきた世界の荒涼さときたら、別の惑星の姿を想像してしまう。

ガスは晴れたが、雨と風は少しも手を緩めてくれない。下山道は幅4メートルくらいの道だが、豪雨で溢れ出した雨水が小石と土を押し出し、泥濘の流れを作った。ほんの 30 分ほどで道の半分~2/3ほどの幅になって川をなし、九十九折りの下山道が見渡せる限りの遠くまで流れて行く。土石流の赤ん坊みたいなもので、後ろを振り返りつつ歩かないと足をすくわれたりして危険である。

5合目のスタート地点に戻ってきたのは8月24日の午前11時45分。
我々が登った河口湖口登山道は上り 7.5 km。下り 7.6 km。我々は9合目半くらいで引き返したのでそれぞれマイナス 1 km くらいかと思われる。5合目の駐車場も大雨。風がないだけマシだが、傘がない我々は難渋し、食事をした後は帰りのバスの停留所近くのお土産屋の喫茶店に引きこもった。



帰りは入浴施設『あかり亭』に寄った。お風呂はお風呂で嬉しいが、問題は着替である。着ている服は雨具を装着していたのに全て濡れている。リュックの中に入れていた風呂用の着替類も、リュックカバーをしっかりとつけていたにも関わらず濡れていた。結果的に、着ていたために若干乾いた服や下着を着直すことになり、更に濡れた靴下を泣きながら履き、水が溜まっているのさえ分かるトレッキングシューズに足を通す。風呂上がりに冷たい甲州ワインを飲み、トイレを済ませてバスに乗り込む。バスは中央道の渋滞で遅延。新宿に1時間ほど遅れて到着した。最後までかましてくれる。

リターンマッチ?
来年以降、顔を洗って出直すことにした。