フェリーが支えた自衛隊の災害派遣 | 今、思うこと! 少しだけ深く考える

フェリーが支えた自衛隊の災害派遣

こんにちは、 やまぼうし です。


東日本大震災での自衛隊の災害派遣を、輸送力で支えたのはフェリーでした。


4月27日付の読売新聞によると、「震災後直ちに陸上自衛隊幕僚監部輸送室は、東北地方に増援部隊を投入する作業に取りかかったが、陸路や空路が使えない中、海上自衛隊に3隻ある大型輸送艦も修理中などで手配ができず、民間のフェリーで輸送するしかなかった」という、危うい状況を伝えています。


海上自衛隊は、3隻の大型輸送艦(基準排水量約8900トン)を保有していますが、3月11日当時、1隻は修理中で、1隻は災害訓練に参加するためインドネシア沖を航行中であり、そして最後の1隻は広島・呉基地で今回の震災に向かう準備の最中だったとのことです。


輸送室では、「海自艦は使えない」と判断し、11日夜、北海道と本州を結ぶ長距離フェリー5社に対し船舶の借り上げを頼みました。そして、震災から30時間後、部隊を乗せた第一便が被災地に向け出港し、以後2週間を費やし、チャーターと定期便延べ40隻以上で増援部隊を送り続けました。


今回の大震災では、自衛隊が海上輸送で部隊を集中させる「戦略機動」の危うさが浮き彫りになりました。


海上自衛隊の輸送力には限りがあり、緊急時には民間の輸送力に頼らざるを得ない状況が明らかになりました。しかし、高速道路無料化などの政策を受け、フェリー各社の経営は厳しく、運航はぎりぎりの状況となっています。


もし、防衛警備上最も緊要な南西諸島などの離島で深刻な事態が発生した場合、国家として救援の手が差し伸べられない事態になってしまいます。


今後、海自の輸送力を高めることが必要になってきますが、「フェリーは高速で多目的に優れ、緊急時に自衛隊を運ぶだけでなく、離島での災害では住民の避難船としても活用でき、何より海自艦に比べて安価である」と、記事は問題提起をしています。


日本長距離フェリー協会によると、2010年度のフェリーの輸送実績は04年度の7割以下にまで落ち込んでいます。


海上輸送の主力がフェリーであり、緊急時の”頼みの綱”である現状を考えるとき、民間のフェリーを緊急時の輸送手段とする、官民一体の安全保障対応が必要であると考えられます。