除染への想い | marufeel

除染への想い

~はじめに~


原発事故のよる放射能汚染。
現在はセシウム134(Cs-134)、セシウム137(Cs-137)によるものがほとんどです。
ストロンチウムは年が経つにつれて地下深く4~5mまで潜り込んでしまうため除染は不可能となってきます。
一方でセシウムは表土10~15cm以内に留まり、その大半は数センチ以内にあります。
除染といっても「洗い流す」のではなく「セシウムを確実に取り除く」のです。

取り除き方は専門家によってシナリオが作成されつつありますが実態はどうなのでしょうか?
もし、あなたが「明日ココを除染してください」と言われたら本当にできますか。
喜んで除染する人は少ないでしょうが、今やらなくてはならないのも「除染」なのです。
除染に参加したくない人は無理にしなくていいと思います。
もし、ボランティア団体などがあなたの家に除染に伺ったとしたら手伝わないでください。
顔も見せずに除染風景を見物していた方が良いと思います。
除染は「東電がやること」、「国がやること」、「行政がやること」その通りです。
一般住民はただでさえ高い放射線量の真っ只中で今も生活をしています。
除染を行うということは、本来必要ない放射線を受けて被ばく量を増やすことになります。
そんなリスクがあっても「除染する人」は「除染しなくてはいけない理由」を明確に抱いています。
除染をする真の理由を知ったとき、はじめて本気で除染に向き合うことができると思います。

ここで書かれた除染内容は特に参考文献もなく、放射能の説明会で見聞きした少しばかりの知識。
そして、私が実際に除染活動を行ってきた経験に基づけて記載しているものです。
間違ったやり方もあろうと思います。1つの事例として参考にしていただければ幸いです。


【1】除染の心得


1.除染とは「掃除」や「クリーン作戦」と似ています。
  少しだけ「掃除の仕方」が違ったり、「ゴミ」の扱い方が違ったりします。
2.除染を行うにあたっては少しでもいいですから「自己目標」を持ちましょう。
  「ここの範囲をキレイにしよう!」という明確な気持ちを持つことが大切です。
  そして、その範囲が終わったら周り人を手伝いましょう。
3.掃除は「見た目」でゴミな無くなれば無事に完了です。
  除染は「見た目」では効果がわかりません。仮に放射線量が下がらなかったとしても除染の効果が思ったようにならなくても困惑しないてください。
  除染した場所は確実にキレイにはなっており、また次の手段を考えれば良いのです。


【2】除染すべき場所の種類と性質


除染と一言にいいましても対象範囲は広大です。
「地球」を丸ごと掃除するようなものですから終わりが見えません。
まずは自宅や学校、通学路など日常的に生活する場所を優先に進めましょう。


(ア)家

・屋根
屋根の種類にもよりますが「瓦」など水がそのまま流れてしまうところは地面の半分程度の線量が目安です。
例えば、土の地面(0~1cm)の放射線量率が3μSv/hであれば瓦屋根は1.5μSv/h程度ということになります。
無理に高い場所に上がって測定の必要はありません。

※2階窓から1階部分の屋根に手が届く場合は線量測定した方が望ましいです。
 ここでは線量測定をするために危険な場所に行く必要はありませんという意味です。

・雨どい
落ち葉やゴミが溜まっていなければ土の地面と同じか、やや低めです。
高い場所なので目視は困難です。
家の近く(半径30m程度)に花粉で有名な「スギ」のような常緑樹があれば注意が必要です。
前年までに落ちた枯葉などが「雨どい」(特に集水器付近)や「屋根の谷間」に溜まっています。
ここに放射性物質を含んだ雨/雪が3月15日前後には降り定着しています。
このような場所は地面に対し5~10倍程度の線量になっていることがあります。
(放射線量率の比較例)
土の地面 3.0μSv/h  1.0倍とする(基準値)
屋根 1.5μSv/h 0.5倍
雨どい   15~30μSv/h 5~10倍


・窓ガラス
ガラスの内側は水拭きしやすいですが、外側は場所によって手の届かないところがあります。
また2階のガラス外側も拭くことができません。
磁石のついたガラス拭きを(内側)と(外側)から挟むことにより掃除するものも市販されています。
ガラス表面は水を定着させずに流れる傾向にありますから、窓枠の下部分(レール)の拭き掃除が効果的です。


・網戸
汚れがつきやすいため、そこに放射性物質が付着していることも考えられます。
大量の水で洗い流したいところですが、少ない水で表面のゴミのみを取る程度にしましょう。
例えば、泡状になる霧吹きで網戸表面のゴミを取りやすくして、雑巾などで拭き取るようにします。
洗い流すということは、家の外壁に「放射性物質を移動させている」ことになります。
網戸はキレイになっても、外壁や地面を洗う手間が増えますので「網戸は網戸内で拭き取る」のが時間短縮です。


・外壁
家の外壁は素材によって放射性物質の付着量も異なってくるはずです。
通常の外壁は雨風、太陽の紫外線などで塗装の場合は10年を目安に劣化してきます。
タイルなどは目地に汚れは付着しやすいです。
高圧洗浄機によって洗い流す場合、たとえばケルヒャー製の場合は「テラスクリーナー」という付属品があります。
これは水が噴出す部分が覆われており周囲に水がはじくことを防いでくれます。
洗い流した水を少ない面積に留めることができるので効果的です。
一般的には緑色の「苔」(コケ)に付着しやすいものであり、コケを中心に除去すると効果的です。


・犬走り
コンクリートにより家の周囲に敷設されています。
屋根の下で雨で濡れにくい部分と、雨に濡れる部分では線量が異なります。
コンクリートは強度が高いために表面を削り取ることは容易ではありません。
「デッキブラシ」や「たわし」などで擦った場合、表面の汚れは落ちますが線量低下はしにくいです。


(イ)庭先

・土
表土は比較的容易に取れますが、除去した「土」が大変重く置き場にも困ります。
また大量に出ますし、除去した分だけ線量の低い土を入れる必要があります。
よって、思いのほか個人ではやりにくいものです。

・樹木
表皮を剥ぐことにより線量が7分の1程度まで低減したという実験結果もあります。
季節によっては樹木の成長に影響ある時期もありますので注意が必要です。

・コンクリート/アスファルト
ある程度は高圧洗浄機により除染もできますが効果は低いです。
また、周辺に家屋が多い場合は「放射能に汚染された水」が隣近所に移動することも予想されます。
地域として話し合いが必要ですし行政による対応を要望すべきです。


(ウ)道路

・路面
一般には雨水を効率よく流すために、側溝側または道路を側溝代わりに使用するために傾斜がついています。
雨水が流れてきた方向ほど線量が高くなります。
水溜りになるような場所は土の地面の2倍程度の線量になります。
除染する当日に多少の水を流しても「雨の日」のような水の流れは確認しにくいです。
事前に雨が降ったときの水の流れを確認し、左右どちらが多く流れているか見ておくと良いです。
また、雨上がりに周りの水は乾いていても「水溜り」になっている場所があれば除染すべき場所です。


・側溝
内部は放射性物質が最も溜まっているいる高線量の場所です。
外側の蓋付近も道路からの雨水が流れ込むようになっており高線量です。
側溝内において水が流れているところは地面程度の線量ですが、合流地点や汚泥が溜まったままのところは確実に高いです。
深さは様々ですし、コンクリートの蓋により容易に外せないこともあります。
また、高い線量の汚泥をゴミ袋(または土のう袋)に入れても処分に困ります。
最も行政からの指導に従って処理すべきものです。
そのために汚泥除去が直ぐにできず放置期間が長くなる傾向にあります。
歩行者が多いところや通学路においては近寄らないよう促す注意書きが必要です。
汚泥を取る際は周囲に飛び散らないよう注意しながら行う必要があり、3人ぐらいで作業するのが望ましいです。
側溝の蓋付近は路面の3倍程度あります。土や草を除去し最後にデッキブラシと高圧洗浄機で洗い流す必要があります。


・道路脇の草むら
道路の脇は草むらになっていることが多いです。
草の丈が高い場合は1日ですべてを除去するのは困難であり非効率です。
他の除染にも言えることですが、日を分けて行う必要があります。
1回目・・・丈の高い草刈りを行う。(草刈機の使用が中心となり、手作業と同時実施は望ましくない)
2回目・・・丈の低い草、および表土を削り取る。
表土を削り取ったものは大変重く大量発生します。
土の入ったゴミ袋は使用する場合は3分の1程度で運ばないと持ち運びもできなくなります。
発生するゴミの量をなるべく少なくできるよう道路から奥まったところは行わないなど、除去する範囲と深さを明確にするようにしましょう。


【3】除染で準備するもの


事前に除染に参加する人数、除染する場所を確認しておく必要があります。
一気に大勢の参加者がいても用具の不足があったり、何をしていいのかわからない人がいては効率的はありません。
除染用具は家庭から持ち寄ることが望ましいですが、土のう袋など行政に対して要望するものもあります。


<用具>


(草対応)
・一般的な草刈用具(柄の長いもの、短いもの両方)
・スコップ
・シャベル
・ちりとり(表土除去する際に、土をゴミ袋へ効率的に入れれます)
・熊手
・ゴミ袋(透明)
・土のう袋


(建物対応)
・デッキブラシ
・たわし
・研磨剤入スポンジ
・軽石
・バケツ
・じょうろ
・家庭用洗剤(弱酸性)
・高圧洗浄機(テラスクリーナー付属を推奨)
・スチームクリーナー(室内利用時)


(携行品)
・軍手
・ビニール手袋(薄手、厚手、使い捨てなど)
・花粉症用のマスク
・水(最低2時間につき500ml以上)
・塩アメ(塩分補給用)
・日よけ(帽子や長方形のタオルなど)
・長靴


【4】高圧洗浄機の利用について


大原則は「高いところから低い方へ」となりますが家の屋根は業者に依頼せざるを得ません。
例えば家一周に足場を組んだ場合、足場費用のみで20万円近くします。
これに業者への高圧洗浄機での費用を加算すると個人出費できる状況ではありません。


~実例~
私は家のメンテナンスも兼ねてこれら足場を組んで、業者が使用している高圧洗浄機を使用して除染しました。
実施当日に屋根や雨どいの落ち葉などゴミ袋3個分ありました。
これらの放射線量は約40μSv/hでした。(このゴミ袋は私有地内に埋めてあります)
除染によって家の中の線量は約0.2μSv/hの低減です。
私の枕元は0.85μSv/hでしたが除染後は0.65μSv/hです。
枕元から少しでも天井近く、壁際へ移動すると線量は上がります。壁際は今現在も1.2μSv/hです。


<手順>

1.大きなゴミや砂などは事前に「ほうき+ちりとり」で取っておいてください。
土や葉のような「物」を洗い流すのではなく、対象物の「表面」を洗う意識でいてください。
2.高圧洗浄機によって洗浄した部分からは必ず「放射性物質を含んだ水」が流れでるようになります。
この水の流れを注意しべきです。
なるべく狭い範囲に留まるようにあらかじめ土を盛っておけば水の流れをせき止めることも可能です。
または一定方向に流れるようにするなど土壌への拡散を最小限にした方がいいでしょう。
3.水の流れる方向または、せき止める場所ができる場合は「ゼオライト」を撒いておくのも良いでしょう。
ゼオライトはホームセンターなどで20Kg袋で1000円程度です。
4.ケルヒャー製のものであれば「テラスクリーナー」の付属品を付けることにより水の飛び散りを最小限にできます。
通常使用ですと水の跳ね返りもありますので、目の保護(ゴーグル)やマスクを使用してください。
5.洗い流された水は放射線量が高くなっています。もし除染前と変わらない線量であれば洗浄効果が低いということになります。


【5】除染効果


屋根の落ち葉や取ったり、側溝の汚泥を取るなど線量の高い「固形物」を除去した場合には効果は顕著です。
同じポイントを測定すれば10分の1程度まで下がることがほとんどです。
条件が悪くとも半分以下には下がります。

一方で固定物ではないコンクリート、アスファルトなど表面の汚染に対しては効果は期待できません。
経験上は0.1~0.2μSv/h程度の低減です。
業者による電気カンナやブラスト装置により表面を1~2mm削り取れば10分の1程度に下がります。
つまり、一般に行える除染は固形物の除去であって、行政経由で業者に依頼すべきものは「高所除染」と「コンクリート・アスファルト除染」です。