緑の鉄道へようこそ。
まもなく出発します。
車内には世界の料理を揃えた食堂車が完備されていますので、アヒアコやゴルメサブジィーなんかを食べながら、おいしい緑の風景を味わってください。
その際、窓を開け放っておくといいでしょう。
若草色の風や妖精の吐息などが舞い込んできて、あなたの飲んでいるスープの風味がグッと増します。
緑の鉄道は、「光の鉄道」とも呼ばれます。
車両が光でできているからです。
光の車両が走ると、植物たちも大喜び。
光が通り過ぎた後は、光合成をして栄養たっぷり、元気いっぱい。
おや、鉄橋が見えてきましたよ。
キンコン、キーン・・・♪
鉄橋の枕木は木琴になっています。
この鉄橋を渡るとき、車両の下からスティックが出てきて、枕木を叩いていきます。
鉄橋の下には、妖精たちの学校があって、この「キンコン、キーン」という音が授業の始まりと終わりの合図になっているのです。
さて、列車はただいま「緑深い3丁目」に入ってきました。
ハシゴで屋根に上ってみるといいですよ。
この辺りは緑が濃いので、屋根の上にあるハンモックスペースで揺られながら森林浴をするのがおすすめ。
本を読みたければ、図書車両に行って、好きな本を借りてきていただいて結構です。
図書車両には、ベルベル賞作家のガブリエルじいさんがいます。
ガブリエルじいさんは、この車両にもう何十年も住んでいるのです。
ガブリエルじいさんは人間世界でいうところの「ファンタジー小説」、すなわち、この世界でのノンフィクションをたくさん書いています。
面白い新作を毎日出しているので、それを読むためだけに、この緑の鉄道に乗ってくるファンもいるらしいですよ。
だんだんと、花が増えてきましたね。
枕木っていうぐらいですから、花たちも枕木を枕にすると心地よいのでしょう。
わたちたち光の鉄道では、毎日1度、ちょうどこの時間に、車両から「おいしい水」を撒きながら走ります。
線路周辺には車両の下から。
遠くの植物へは、スプリンクラーで。
スプリンクラーで水を撒くと、虹ができます。
妖精たちは、毎日それを待ち構えていて、虹ができると即座に虹に飛び乗ってきます。
バランスをとりながら虹のサーフィンを楽しみますが、走る列車と共に虹は動くので、妖精たちは虹のサーフィンを楽しみながら、平行移動できるというおまけ付きなのです。
さて、また鉄橋が見えてきました。
あの鉄橋を越えたら、もうすぐ次の駅です。
今度の鉄橋はどんな音が鳴るのでしょう。
♪♪~
星のしずくの音がしましたね。
妖精の学校の授業の気配も感じました。
さあ、着きました。
「河童の緑町駅」です。
河童がたくさん住んでいる町ですよ。
列車は1時間ほど停まりますので、ゆっくり河童の緑町を散歩してきてください。
どんな町か楽しみですね。
残念ながら、今日の鉄道の旅はここで終わりますが、緑の鉄道にはいろんな駅が333駅もあるのです。
みなさんも、夢の中でこの緑の鉄道の駅を偶然見つけるかもしれません。
そのときは、迷わずに、光の車両に乗ってみてください。
チケットは要りません。
スルーパス読み取り式になります。
あなたの中に眠っている子ども心を光らせるだけでOKです。