~まえがき~


とても、暗くて醜悪な表現があります


気分が悪くなる場合はスルーして下さい(--。。


この外伝を読まなくても、全然本編に影響はありませんから・・・


暗い話なので、嫌いな方はどうかスルーして下さいね。。



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黒子の場合 外伝 「純粋なる悪・前編」




人は裏切る生き物だ


一番最初に私を裏切ったのは


私の母親だった


彼女はいろんな男と付き合っていて


私の父親が誰なのか解らなかった


しかし、関係した男の中で最もお金を持っている男を父親に仕立て上げ


まんまとお金を巻き上げた


それだけならまだ良い


その男には子がなく、跡継ぎ問題で苦しんでいた


遺言状が公開されて、5年以内に跡継ぎが出来なければ、


彼の所有している親の遺産は全て没収され、公共施設に寄付される事になっていた


彼の親の遺言なのだ


一人息子に過酷な試練を与えたという訳だが


実はその男には、子種が極めて少ない肉体的な欠陥があった


遺言状には、血の繋がらない養子は認められないとある


したがって不妊治療を繰り返しながら


結局、成功しなかった


一度は懐妊したのだが、生まれた子のDNA鑑定をした結果


自分の子供である可能性は20%を切っていた


男の妻はそのまま、他の男と一緒に屋敷を出て行った


もちろん、慰謝料無しに離婚は成立したが


男の未来はそのまま風前の灯になってしまった


そんな時、私の母は、その男に近づき


私がその男の子だと迫ったのだ


男にとっては一時の気の迷いの情事だったが


逆にチャンスだとも考え直した


そして、金で母から私を買ったのだ


母は二度と子供に会わないという誓約書を書いて


たった二千万円で私を売った


その日から私は豪邸に住むことになる


セレブとはいえ、金で売られた子供に居場所などあるはずは無い


もちろん、その男からは、ひとかけらの愛情も感じなかった


奴にとって私は遺産を手に入れる為の道具でしかなかったのだ


捏造されたDNA鑑定書を手に、彼は莫大な遺産を手に入れた


人間なんてものは、自分の事しか考えない生き物だと


物心ついた頃には感じていたから


今更それで傷つくはずも無い


ただ、そんな薄汚い人間に興味は無くなっていった


私は人間が大嫌いだ


いつか絶滅してしまえと願っている


男は初めから私が自分の子供ではないと高を括っていたので


DNA鑑定をしなかったのだが


スキャンダルを狙ったある記者が私に接近して


「あんたは本当の子ではない、そんな噂を聞いたのですよ」


その桐谷という男は陰湿に私に脅しをかけてきた


もちろん、そんな脅しには何の効力もなかったが


私はわざと動揺して見せた


私を引き取った男は愛情以外は私に何でも与えてくれた


恨みはないが、いつも監視されて何処に行くのも


その男の許可が必要だった


親の義務だと建前では言っているが本心は


私が実の子供ではない事を知られないかビクビクしているだけなのだ


私は記者の事を話すと、案の定動揺した顔をみせた


それからは、外出を禁じられたが


その事に不自由さは感じなかった


何故なら、私は人と関わるのが好きではないから


そんなある日


私は気がついてしまった


男が私を殺そうとしていることに


その日から私のハッキング技術は自分の命を守るライフラインになった


食事に毒物が混入されていたのだ


なるほどこれが自己保身の行き着くところなのだと理解した


私が病死すれば、私が実子ではないという偽証疑惑は闇に消える


しかし、私はこの男を恨む気にはなれなかった


人間なんてものは、自分の事しか考えない生き物なのだから


これは唯一母が私に教えてくれた事


彼のしている事は人間として当然の行為なのだ



だからと言って、黙って殺されてやるつもりはない



裏切りが人間の本性なら、裏切られる前に裏切るのは自然の摂理だ


私は、その桐谷という記者に会い


DNA鑑定を受ける事にした


しかし、このDNA鑑定は私にとっても、その記者にとっても


或いは、私を引き取ったその男にとっても、大きな誤算だった


私がその男の子供である確立は98%だったからだ


こんな皮肉な話があるだろうか、この事実を知った時笑いがこみ上げてきた


つまり私は実の母に、実の父へ金で売られて、


しかもその実の父に殺されかけているのだから


そして考えてみることにした


このまま、この事実をその男に教えた場合、


自分の命の危機は回避できる事になる


彼が私を殺す理由が消滅するのだから


しかし、それでは男を裏切ったことにはならない


このまま奴に殺されてやるのも悪くは無い


その上で、この事実が判明するように仕掛けを作れば


奴に少しでも人間の心が残っているのなら


自分の実の子を殺した自責の念を感じるかもしれない


私は命が惜しくて殺されないようにしていた訳ではないのだ


ただ理不尽に殺される事が嫌だった


命など最初から惜しいとは思っていない


しかし、同じ死を覚悟するにしても


人に強いられてする事だけは我慢がならない


私を殺した後で、実は私が実の娘であると知ったとしたら


その時の男の顔を想像しながら、そのためなら命も惜しくはない


そんな事を考えていると


まさかあの桐谷という記者によってDNAの秘密が漏洩するとは


これもまた誤算だった


桐谷によってその事実を知った男は、


私の前に跪いて泣きながら詫びた


この男は人間失格だと思った


「私が、自分の実の子だと解って、暗殺計画を取りやめた場合、私はあなたを生涯軽蔑する」


これが私の素直な気持ちだった


人間とは利己的であるべきなのだ


私の母がそうであるように、人間は時には気の迷いで


人の為になる行いをする事はあっても


その本質は悪である


その証拠は歴史で証明されている


犯罪の無い時代は存在しない、争いの無い時代があるだろうか?


徳川三百年戦争は無かったかもしれないが


犯罪は無かったとは記されてはいない


しかし、その男は泣きながら侘びて、


「これからの人生をお前の為に生きる」といった


こんな偽善があるだろうか虫唾が走る言葉だ


「あなたが私の暗殺計画を実行しない限り、私はあなたを実の父とは認めない」


私を殺せ、そうすれば私は父としてあなたを認め愛すると言ったが


その男にはその度胸は無かったようだ


私は呆れ果ててしまった、


自分の実の子ではなければ確実に殺そうとしたのだ


この男の本質はそんなものだ


ただ度胸が無いのだ、人間として最低だといわざるをえない


いや待て、或いはこれもまた人間の利己心の表れかもしれない


つまり、自分のDNAを残そうとする本能の一つの形だ


自分とは違うDNAなら簡単に殺そうとしたこの男が


その相手が自分のDNAを残せる唯一の存在だと知れば


自己中心の塊の人間は惜しくなるのは自然な事


これはつまり、人間の本質が純粋な悪である証明になるかもしれない


私は細胞は沸き立った


これは私の中の悪の目覚めた瞬間だったかもしれない


私もまた忌むべき悪の権化である人間なのだ


「あなたのDNAは今暫く、存続させてあげる」


私は気が変わった


実際自分の中にはその悪に対する好奇心が目覚めているのだ


初めてこの男に買われて来たとき


一台のノートパソコンを渡された


それから異常なまでにそれにのめり込み


遂にパソコンを分解したり、組み立てたりするまでになった


そのうちプログラミングに興味を持った


人間の言葉はあまり覚えていないけれど


PCの言葉は理解できる


まるで水を得た魚のように


私はその世界に入り込んで深くより深く探求して行く


何時しかハッカーとして名前が知られるようになる


それがハッキングだとも知らずしていたのだが


その世界でのネームを黒子の名をもじってブラックチルドレンと命名し


今やその世界でブラックチルドレンの名を知らないものは殆どいない


私は人間の悪に興味がある


純粋な悪に何時しか恋焦がれていった


このまま、この悪を極めたいという悪なる欲望が私を支配していた


悪の申し子として生まれた私もまた


この男と同じ、どこまでもエゴイズムに生きてみよう


もし私と対局する神という存在があるなら


この男諸共に、いつか断罪される日が来るだろう


死ぬのはその時でも遅くは無い


そしてこの男とある盟約を交わした


血の繋がった父親と親子のフリをする変わりに


20歳まで父親のフリを続けて責任を果たしてくれる事を


彼もそれを承諾した


面白い実に面白い、血の繋がった実の親子でありながら


一切の愛情も無く、互いに利己的な欲望を果たす為、利害的に共存している


こんな愉快な関係があるだろうか?


これこそが悪の権化である人間本来の姿に相応しい


私はこのまま何処までも、その悪を極めて生きよう


闇のサイトをいくつも運営し始めた


ハッキングも国を左右するものにも手を出していくと


ゴールドイーグルと呼ばれた政府公認のネット犯罪防衛組織が


ブラックチルドレンに目をつけ始めた


相手はその世界のプロフェショナルである


当時はまだ小学5年生の私が敵うはずはないと思っていた


ところが、思ったほどの相手ではなかった


次々にゴールドイーグルを翻弄してやると


ブラックチルドレンの悪名は一般にも知られるほどになる


それでもたった一人、私をギリギリまで追い詰めた相手がいた


私はゴールドイーグルにハッキングした時の事である


その場での攻防はほぼ互角


他の連中も参戦してきたので、やむなく撤退を余儀なくされた


こんな悔しい思いをした事は無い


それから半年は大人しくしていた


ゴールドイーグルによって大人しくさせられていたというのが


本当のところなのだが・・・


その間家庭教師によって、学業に没頭してみた



実は、私の母が私を保育園はおろか学校にすら通わせなかった為


ここに来て最初に強いられたのは


家庭教師によって、勉強させられることであったが


意外な事に勉強は嫌いではなかった為、まるでむさぼるようにいろんな事を学び


小6の年齢の時には中学三年間で学ぶ知識は習得していた


最近なったばかりの一人の家庭教師、真神歩(まかみあゆむ)という男が


「いつまで遊んでいるつもりなんだ?」


唐突にこんな事を言った


私は胸騒ぎを感じながら彼を見ると


「ブラックチルドレン」


間違いなく彼は、ゴールドイーグルの一人だ


あの撤退の時、見事に追跡されていたに違いない


こうなれば観念するしかない、相手は真実の神という名前だ


もちろん本名ではないだろうけれど


ついに神が私を審判に来たに違いないと思った


「悪を追求していた、何処までも深い純粋な悪に」


「それで、純粋な悪に辿り着いたのか?」


真神はとても落ち着いた低音な響きを私に投げかけてきた


私は首を横に振った


「残念ながら小学生でも、罰則対象から外れない、ネット犯罪はそれだけ深刻な問題なんだ」


「私をどうするの、逮捕するのか?」


「いや、考えていない、第一君の事は僕しか知らないからね」


ほう、どうやら真神は独断で私と接触しに来たらしい


「しかし、ハッキングは感心できない」


そういうと暫く考え込んでいる様子だったが


「君の才能を生かす仕事をしないか?、これは君にとっても悪い話ではない」


「もし断れば、私は逮捕されるということね」


「流石に頭が良い、これは政府ではなく僕個人と君個人の盟約となる」


「一体何を企んでいるの?」


「復讐を果たしたい、僕はね正義など信じてはいない、復讐を果たすのに有利だから、ゴールドイーグルにいるだけで、もしかすると限りなく君に近い存在かもしれない」


小学生に語りかける言葉ではなかった


この真神という男にも一般常識を超えた何かを感じる


「それで私は何をすればよいの?」


「君の才能を持ってある組織について調べて欲しいんだ、それからブラックチルドレンの罪を清算する為に、ゴールドイーグルの仕事も手伝う」


「ほう、徳川家康が盗賊を取り締まる為に、盗賊の頭を雇ったようにか?」


「そうだ、実のところ僕もその一人だけどね」


なんだろう、この男との距離感が心地よい


コイツは必要以上に私に干渉しようとはしない


「プログラミングの仕事も斡旋しよう、ただしその為には学校に通ってもらう必要がある」


「ブラックチルドレンを取り込むつもりか」


「取り込むというより、ユニットだ、君は君で独立した存在として存続できる、ただし犯罪者としてではなく、プログラマーとして」


これはもしかして悪なる盟約ということだろうか?


私の胸は高鳴った


しかし、人間が嫌いな私が学校に通うなんて出来るのだろうか?


「悪を極めるのなら、生身の人間と絡むのが一番早いと思う」


なるほど、来年の春には中学生になる


思春期の子供の中に悪を見出すことができれば


限りなく純粋な悪に近づけるかもしれない


私は彼と悪なる盟約を結んだ


こうして、中学生として学校に通うことになった



つづく



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とても暗い話です(--。。


黒子と言うキャラは、まだ私には見えない所があります


そこで、今回は黒子の視点で書いてみました


しかし、驚くことに字数制限にひっかかりましたΣ(@@;)


やむなく二つに分けますΣ(@@。。


まる☆