第二話 「革命児の片鱗その2」



やられた・・・



比美香は伊集院家のセキュリティーをこじ開けてハッキングされた事実を聞いた


まるは、昨日宣戦布告するとその日のうちに


伊集院家のPCに侵入してあらゆる情報を入手したのだ


当然黒子が動いたに違いない


先手を取られた


戦術合戦で、先手を取られると


間違いなく後手に回る


余程爪の甘い相手なら幾らでも逆転は可能だけれど


相手はまるである


戦う限り完膚なきまでに相手を叩き潰すまで


決して手を緩めることはしない


そんな相手に先手を取られるという事は


致命的と言える


本来なら比美香の顔色が変わる場面ではある


ところが


比美香の顔には笑みさえ浮かんでいた


伊集院家の極秘資料など何の役にも立たない


見当外れだとしか思えない


いやまて


黒子なら何の痕跡も残さず見事に情報だけをを盗むだろう


わざと痕跡を残したに違いない


一体それにはどんな狙いがあるのだろう


比美香は暫く扇子を振りながら目を夜空へ向けた


月明かりが窓の外の世界を照らしている


ふと何かを思いついたのか、


それとなく、伊集院家のゆかりの名家に


最近ネット犯罪が多発しているのでセキュリティを強化するように書面で知らせた


案の定それ以来、


伊集院家の交流のある名家のセキュリティーを破られる事件が続出した


次第にそれぞれの名家たちは独自の調査から


伊集院家を狙っての犯行であり、


自分達がその巻き添えを食ったと気がつき始めた


その理由は、セキュリティを壊した痕跡を残し荒らされた資料は


みんな伊集院家に関してのものばかりだったからだ


次第に伊集院家への親族をはじめ


交流のある名家からの風当たりが冷たくなり始める


まるの狙いは、伊集院家の孤立である事は明白となった


しかし、伊集院家を孤立させて一体何をしようとしているのだろう


一瞬比美香の脳裏に恐ろしい考えが過ぎった


まるは、伊集院自体を破滅させるつもりではないのだろうか?


伊集院家が破綻すれば


比美香のしがらみは無効化される


そもそも、絆を大切にする理由がなくなるから


心置きなく悠里を探すことが出来ると考えたとしても不思議ではない


「バカな考えですわ」


伊集院家が破綻すれば・・・


悠里が出て行った事まで台無しになってしまう


第一それは彼が一番大切にしたものを潰す事になる


彼が最も悲しむ行為を自分が出来るはずはないのだ


それに、名家というものは体面を重んじる


既に破綻してしまった家に関わる事は出来ないから


結局、意味のない行為に過ぎない


いや、まるはそんな意味のない事をするはずはない


だとしたら、考えられるのは


名家たちをそれぞれ潰したり、いがみ合わせて混乱させ


遂に全てを破滅させようとしているのではないのか?


比美香は愕然とした


まるは確かに言った


「あんたを潰す為に全力で動く」と


自分を潰すという事は、伊集院家のみならず


自分のパックボーンの全てを潰すという事であり


それはつまり西園寺家を破滅させる事と同義になりえる


伊集院家の破綻はその布石でしかない


比美香は、まるという少女の危うさに今更ながらに自覚した


この子は狂気と正気のギリギリの境目を歩いている


本人はその自覚はないだろうけれど


彼女の本質が革命児である以上


この世の常識は彼女には通用しない


つまり、彼女に正義感はない


目的を果たす為なら手段を選ばないのだ


そして


彼女の目的は、自分を縛り付けているあらゆるものから開放して


この世の中で一番愛おしい人と結ばれる道を作る事


涙が出るほど、切ない


家族が崩壊して、しかも親族も関わる名家も全て巻き添えに破綻した状態で


自分だけが幸せになれるほど、安っぽいプライドは持ち合わせていない


全てを捨てて彼だけを思える性格ならどんなに楽だろう


しかし、西園寺比美香という女子中学生は


女王様気質を持ってこの世に生まれてきてしまったのだ


自分のために、家族や親族が破滅させるわけにはいなかい


例えそれが、最愛の人との別離を生み出す道だとしても


まるの悪巧みは何としても阻止しなければならない


比美香は扇子をまるの写真へ向けた


「いつまでも先手を取らせてあげないわよ」


彼女の机には、奈津丸先生をはじめクラスメートの写真や


まると黒子と自分の三人で写っている写真が飾られていた



時系列を少し遡ってみよう


まるが比美香に宣戦布告をした次の日の夜の事である


黒子とまるは、黒子の部屋で悪巧みを実行していた


「いい加減プライドが傷つくんだけど、ハッカーとして痕跡を残すなんて」


「そう言うなよ、隠していたのがパレた訳ではないのだし、これがわざと残した痕跡にみんなが踊っていると思えばいいじゃん」


「しかしねぇ~、単に伊集院家を破綻させるだけなら、他にもやりようがあるんじゃない」


「そんなちっぽけなものは狙ってないよ」


「じゃあ~やはり、西園寺家と親族もろとも一網打尽にする算段か?」


黒子は怪しい笑みを見せた


「比美香の奴はそう思っているだろうなぁ~、それでいい」


こんな時黒子にも、まるの考えが見えてこない


「お前は時々正体不明になる、目的がそれではないなら、この一連のイタズラに一体どんな意味があるんだ?」


「意味なんてないさ」


「はあ?」


「意味なんて必要ない、これは比美香の女王様気質を利用する為の布石に過ぎない、比美香の奴め、私の本当の狙いに気がつけば、カンカンになって怒るだろうなあ~」


まるは大笑いした


意味の判らない黒子にはそれが不気味でならなかった


「あんた何者?」


「私はまる、女子中学生をしている」


そんな事は解っていると突っ込みたい所だが


黒子にはまるがそれを本気で言っているのも感じ取れるから


それ以上は突っ込んで聞けなくなってしまう


「しかし、比美香の奴が私の本当の狙いに気がつくのも、時間の問題だろうから急がないとな」


そういうと、フラッと現れてまだ10分も立たないというのに


さっきまで腕を組んでいたまるは、そのまま玄関のドアを開けた


「黒子、後の事は頼んだぞ」


「おう、任せろ」


まったくせわしない奴だと思いつつも


黒子はまるが何をしでかすか判らない所も気に入っていて


それを楽しんでいた


頭の良い彼女は物事の三分の一程度理解しただけで


大体の狙いを読み取ってしまう


ある種の勘を身につけていたが


それだけに、まるのような特異体質が先読みが出来ない行動をすると


新鮮な刺激を感じて、楽しくて仕方がないのだ


「比美香の言い草ではないが、まるは間違いなく革命児だな」


一見この世のものとも思えないほど美しい顔立ちに


雪のように白いもち肌の持ち主である彼女は


それでもその笑顔は不気味な雰囲気が漂っている



月明かりのなか、早足で歩きながら


深い闇の中へ誘われて行くかのように


まるは、暗闇の中に溶け込んで行った




つづく



第一話「革命児の片鱗その1」



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昨日は異常に早く目が覚めたので


小説の続きを書いてみました(≧▽≦)


途中で寝てしまいましたが・・・・


久々の二度寝をしてしまいましたΣ(@@;)


いつものように残りを休憩時間で完成させてみました(>▽<。。)ノ))


不定期で申し訳ありません・・・・


漫画のネームも平行して書いているので


どうやら、漫画と小説では


頭の使い方が全然違うようで∑ヾ( ̄0 ̄;ノ


同じように物語を作っていても


先ほどまで漫画のネームを描いていると


小説を書き始めて物凄く違和感というか


上手く言葉が繋がらなくなりますΣ(・ω・ノ)ノ!なんで?



まぁ~私が不器用なので、漫画と小説を平行して作る事が苦手のようです


そのため、申し訳ないのですが・・・・


漫画がひと段落してからでないと


書けないので、不定期にさせて頂いています(--。。


小説だけとか漫画だけなら


別の話を平行で作る事は可能なのですけどね(TωT)あせる



のんびり気長にお付き合いいただけると嬉しいです




まる☆